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レビュー

  • いまこそテレビでホームシアターを!
    新作サウンドバー比較テストPART1
    5万円未満(スタンダードクラス)

    VGP 取材・執筆 / 高橋敦
    2020年10月22日更新

    • VGP審査員
      高橋 敦

5万円未満のサウンドバーを徹底テスト!

特集「いまこそテレビでホームシアターを!」。今回のテーマは「サウンドバー」です。
大画面テレビの前にポンと置くだけで、たちまちホームシアターが完成! その手軽さから、ステイホームが続く昨今、おうち時間を豊かにするアイテムとして再び人気を集めているのが「サウンドバー」です。

特集PART1では、VGPアワードで審査員を務める高橋敦氏による「5万円未満(スタンダードクラス)」の新作サウンドバー5機種の横並びレビューをお届けします。

5万円未満の価格でも、ドルビーアトモスによる立体的なサラウンドを楽しめるモデルが多数揃っています。ズンズン重低音を響かせる、ワイヤレスサブウーファーがセットになったモデルも、この価格で手に入ります。

  • せっかくの大画面テレビ、もっといい音で楽しんでみませんか? テレビが薄型化したことで、スピーカーに割り当てられる面積や容積が失われ、結果として音質が損なわれているケースも少なくありません。しかしサウンドバーを付け足せば、映画だけでなく、スポーツやライブなど、いつも観ているコンテンツが臨場感たっぷりの音で楽しめます。さらにテレビを見ないときも、スマホと組み合わせるワイヤレススピーカーとして大活躍!

テストは音元出版の試聴室で行いました。視聴作品は、映画は『フォードvsフェラーリ』のレースシーン(CH24)、ライブは『ボヘミアン・ラプソディー』ライブ・エイド(CH20)での演奏シーン、音楽は星野源『POP VIRUS』(44.1kHz/16bit音源)を使用しました。

  • 音元出版の視聴室に新作サウンドバーを持ち込んで、横並びでテスト! 50インチ液晶テレビとパナソニックのブルーレイレコーダーで映画のUltra HDブルーレイを再生。ARC対応のHDMI端子を搭載したサウンドバーに関しては、18Gbpsの高速伝送やARCに対応するエレコム製のPremium HDMIケーブル「DHHDP14EBKシリーズ」で、テレビと接続しました。なお、HDMI非対応のモデルは光デジタル音声ケーブルで接続してテストを行いました。

PART2はこちら>>>いまこそテレビでホームシアターを!新作サウンドバー比較テストPART2

ANKER「Soundcore Infini」〜シンプルに高音質 ミニマム派におすすめ

  • ANKER
    「Soundcore Infini」
    ¥OPEN(実勢価格¥10,999前後)

サウンドバーとして必要最小限のスペックに絞り込まれていますが、その代わりにスリムなボディと圧倒的なお手頃価格を実現していることが最大の魅力です。合計100W構成で2基のトゥイーターとベースポートを搭載していて、壁掛けにも対応します。テレビとの接続は光/同軸デジタル、もしくはアナログ。その部分が音質面での致命的なボトルネックになることはありませんが、使い勝手の面での不利があることには要注意。テレビ側のリモコンでのサウンドバーの音量操作などHDMI連動による機能は使えませんので、日常的な音量操作などにもサウンドバーのリモコンが必須となります。

音質面は、数万円クラスの製品にはさすがに及ばないものの、サウンドバーを追加した意義はしっかりと実感させてくれます。使いこなし次第では、十分に満足できるでしょう。とりわけ「MUSIC」モードの完成度が高く、音楽はもちろん映画でも、もっとも使用頻度が高くなるはず。コンテンツによっては、「MOVIE」モードにして、低音とサラウンド感を足した派手な表現もありかも? ぜひ、試してみてください。

  • 「Soundcore Infini」の音質傾向
  • Wi-Fi -
    Bluetooth ○
    HDMI -
    音声操作 -
    ドルビーアトモス -
    DTS:X -

DENON「DHT-S216」〜オーディオの王道を行く骨太なサウンドバー

  • DENON
    「DHT-S216」
    ¥OPEN(実勢価格¥25,500前後)

デノン伝統のHi-Fiオーディオを手がける音質マイスターが監修した硬派なサウンドバー。「DTS Virtual:X」で高さまで仮想的に再現するバーチャルサラウンド機能も搭載していますが、そういった処理の一切をバイパスする「Pureモード」の存在こそが、このモデルの本質を示しています。演出を加えてよい音にするのではなく、コンテンツの音を忠実に増幅して再生することで、そのコンテンツ本来の魅力をストレートに届けようという、オーディオとしての王道。3万円未満という入門クラスのサウンドバーとしては、異例なほどに骨太な設計思想!

良質なスピーカーを良質なアンプで駆動するという土台の確かさのおかげか、音をこちらに飛ばしてくる力が強い印象。やや硬質でクリアな音調は、映画の効果音の迫力、セリフの明瞭さ、音楽のリズムのキレなどの表現で力を特に発揮してくれます。本機の強みを存分に感じられるのは、やはりPureモード。他のサウンドモードはここぞの切り札的にピンポイント活用するのがおすすめです。

  • 「DHT-S216」の音質傾向
  • Wi-Fi -
    Bluetooth ○
    HDMI ○
    音声操作 -
    ドルビーアトモス -
    DTS:X - (DTS Virtual:Xに対応)

POLK AUDIO「Signa S3」〜サイズを超えた迫力 現代的なサウンド

  • POLK AUDIO
    「Signa S3」
    ¥OPEN(実勢価格¥31,900前後)

エントリークラスの価格帯ながら、サウンドバーとは別筐体で、サブウーファーを採用していることが注目ポイント。低域側の再生能力の向上が実現されることは当然ながら、低域再生をサブウーファーに任せられることの恩恵を生かして、サウンドバー側はよりスリムでコンパクトなサイズにまとめられています。しかもサブウーファーの接続はワイヤレス。サブウーファーが必要と聞くと、設置性が低いイメージがあるかもしれませんが、このモデルは逆。セッティングの自由度は高いです。

北米でベストセラーとなっているだけあって、そのサウンドは本格的です。高域側ではカッチリとした精密感、低域側ではガツンと手応えのある迫力が持ち味。たとえば映画では、レーサーのシフトチェンジに伴うメカニカルな効果音や高速の負荷で鉄が軋む音、音楽ではベースやバスドラムの締りあるプッシュ感が際立つ。クラブ系サウンドのぐっと沈み込むベースも普通にちゃんと再生してくれるのは、サブウーファーが別筐体だからこその魅力です。現代的なサウンド、最新ヒットチャートの音楽などを好む方にもおすすめできます。

  • 「Signa S3」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI ○
    音声操作 ○
    ドルビーアトモス -
    DTS:X -

BOSE「Bose TV Speaker」〜わずか5.6センチの高さ!声が聞きとりやすい

  • BOSE
    「Bose TV Speaker」
    ¥33,000(税込)

一目でわかるコンパクト設計が特長です。高さはわずか5.6センチ。設置の自由度が高く、幅広いテレビとの組み合わせをカバーできます。たとえばPCモニターをテレビとして活用している方などにもチェックしてほしいアイテム。もちろん、50インチクラスの大画面テレビと組み合わせても、音のスケール感が不足する感じもありません。深夜の視聴時などで役立つ、小音量にしても人の声が聞き取りやすいダイアログモードを搭載しています。リモコンのBASSボタンから低域の量を調整できるのも便利です。

音調はややソフト傾向なので、映画の金属的でメカニカルな効果音等のキレはすこし鈍く感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、全体に聴き疲れのない心地よさがあります。また、映画の台詞でも音楽の歌声でも、人の声の感触のよさは特筆できるレベルにあります。テレビドラマやニュース、アニメ、バラエティなど、日常に多く視聴するであろう、人の声が中心となるコンテンツとの相性のよさが期待できます。

  • 「Bose TV Speaker」の音質傾向
  • Wi-Fi -
    Bluetooth ○
    HDMI ○
    音声操作 -
    ドルビーアトモス -
    DTS:X -

LG ELECTRONICS「SN7CY」〜メリディアンが音を監修 臨場感ある3Dサラウンド

  • LG ELECTRONICS
    「SN7CY」
    ¥OPEN(実勢価格¥42,800前後)

5万円を切る価格帯ながら、ドルビーアトモスやDTS:Xといった、高さ方向の表現も実現するイマーシブサウンドに本格対応した意欲作です。上向き設置のハイトスピーカーを搭載という見た目にもわかりやすい手法で対応。高級オーディオで知られるメリディアン社監修のサウンドチューニングというのも興味深いトピックです。さらに視聴中の映像ジャンルをAI分析して、それに合わせてサウンドを最適化するという「AIサウンドプロ」という世界的な大手メーカーらしい先進技術の採用もユニークです。

調整はAIサウンドプロにお任せしておけば基本それだけでOK。低域から高域までフラットなバランスに、少しクールでクリアな音調を付け足した、綺麗に整えられたサウンドを聴かせてくれます。ワンボディのシンプルな構成ながら、映画での左右の奥行き、そして上下の広がりも十分に体感できます。パッシブラジエーターを採用した効果で低域も迫力十分。臨場感のあるサラウンドを目当てでサウンドバー導入を考えている方も大満足できるはず。ステレオ再生も素直で違和感がありません。

  • 「SN7CY」の音質傾向
  • Wi-Fi -
    Bluetooth ○
    HDMI ○
    音声操作 -
    ドルビーアトモス ○
    DTS:X ○

高橋敦が選んだベストバイは?

PART1「5万円未満(スタンダードクラス)」では機能が充実しながらも、手が届きやすくコスパの高い“5万円未満”の価格帯から全5モデルをレビューしました。

1〜3万円クラスの製品でも、テレビの内蔵スピーカーの音を上位互換的に強化でき、着実な進化を体感できました。また、Bluetooth接続でスマホともつながりますので、テレビを見ていない時間でも大活躍してくれます。製品選びの際には音質のほか、アプリ経由でのApple MusicやSpotifyなどのサブスク音楽配信への対応、Wi-Fi経由でのスマホ連携や音声操作などの付加的機能もチェックしていくといいでしょう。

実際にテストしてみると、今回のラインアップでは「テレビの音をそのまま強化」の方向性ではデノン「DHT- S216」が出色の出来栄え、「別次元のサウンド体験」の方向性では設置性やコスパを重視するならLG ELECTRONICS「SN7CY」や、低価格ながらサブウーファー付きのPOLK AUDIO「Signa S3」が好印象でした。

・いまこそテレビでホームシアターを! 新作サウンドバー比較テスト PART1 5万円未満(スタンダードクラス)

・いまこそテレビでホームシアターを! 新作サウンドバー比較テスト PART2 5万円以上(ミドルクラス)

SPEC

ANKER「Soundcore Infini
●定格出力:100W ●スピーカー構成:2.1ch ●接続端子:光デジタル音声入力×1、同軸デジタル音声入力×1、アナログ音声入力×1 ●外径寸法:880W×56H×90Dmm

DENON「DHT-S216
●定格出力:非公開 ●スピーカー構成:2.2ch ●接続端子:HDMI出力(ARC)×1、HDMI入力×1、光デジタル音声入力×1、アナログ音声入力×1、サブウーファー出力×1ほか ●外径寸法:890W×66H×120Dmm ●質量:3.5kg

POLK AUDIO「Signa S3
<総合>●定格出力:非公開 ●スピーカー構成:2.1ch
<サウンドバー>●接続端子:HDMI出力(ARC)×1、光デジタル音声入力×1、アナログ音声×1 ●外径寸法:900Wx55Hx84Dmm ●質量:1.8kg
<サブウーファー>●外径寸法:171W×342H×312Dmm ●質量:5.2kg

BOSE「Bose TV Speaker
●定格出力:非公開 ●スピーカー構成:2.0ch ●接続端子:HDMI出力(ARC)×1、光デジタル音声入力×1、アナログ音声×1、サブウーファー出力 ●外径寸法:594W×56H×102Dmm ●質量:2.0kg

LG ELECTRONICS「SN7CY
●定格出力:160W ●スピーカー構成:3.0.2ch ●接続端子:HDMI出力(ARC)×1、HDMI入力×1、光デジタル音声入力×1ほか ●外径寸法:890W×65H×119Dmm ●質量:3.74kg