ホームシアターの総合誌「ホームシアターファイルPLUS」でも執筆されている伊尾喜大祐さんが、夢の映画館「シン・イオキネマ」づくりを決意! 本連載では、映画館づくりを決意したきっかけから完成するまでの模様を完全密着ドキュメントでお送りします。どのタイミングでどんなことが進行するのか? 映画館づくりにどんな想いがあったのか? 読んだらホームシアターを作りたくなること間違いなし!
『スウィングガールズ』ソロの表現力をチェック
『スウィングガールズ』でチェックしたのは音楽祭のシーンで、ガールズが演奏する「シング・シング・シング」です。イントロのドラムソロ、トロンボーンからトランペット、アルトサックスへと繋がっていくソロの表現力をチェック。
まずはDALIがいきなりよい! 高音から低音までバランスよく、心地よく聴かせてくれるのです。上野樹里のサックスソロもなかなか艶っぽくてよい。…って、あれ? しばらく聴いていた僕は違和感を覚えました。当時のレコーディングにも立ち会いましたが、10代だった彼らの演奏はこんなに落ち着いた音ではなく、もっと元気で荒削りだったはずです。その違和感は、続いて再生したKEFの音で吹き飛びました。中高域が伸びやかでブラスの音がとにかくパワフル! ソロパートでもそれぞれの楽器のクセが生々しく再現され、ガールズらしい演奏を楽しめました。
◎判定/KEF
- KEF「R7」(¥528,000/税込/ペア、写真右)とDAL「I OPTICON8 Mk2」(¥495,000/税込/ペア、写真左)の2台を比較試聴。
- スピーカーセレクターにより、2台のスピーカーの切り替えを瞬時にできるようになっていました。
- いざ、実聴開始! まず『スウィングガールズ』から観はじめるが、上野樹里のサックスソロはOPTICON8 Mk2では艶っぽく、対するR7は生々しくパワフル。のっけからサウンドキャラクターの違いに驚かされます。
次回はこちら>>>第22回「いよいよ導入するスピーカーが決定」
前回はこちら>>>第20回「再生の軸となるメインスピーカー」
『ダンスウィズミー』歌声のニュアンスをチェック
続いては邦画では珍しいミュージカル。劇場用の音声マスターをそのまま使用したため、ホームシアター再生にはやや音圧が強く、ちょっと再生が難しいディスクです。まずDALIでトライすると、冒頭で宝田明が歌う「Tonight〜星の降る夜に」がバランスよく楽しめてびっくり! リズミカルに跳ねるベースと煌びやかなブラスの音圧にボーカルが負けていない上に、宝田の声に色気まで漂うほどで、その現役感に隣で編集のT氏も感激していたほどでした。続けて再生したKEFは、バランス感のDALIに対してヌケのよさで勝負。特にヒロイン役の三吉彩花が歌う「HAPPY Valley」の透明感豊かなボーカルが好みでした。
◎判定/DALI
『SP 野望篇』音像の移動感をチェック
日本映画のアクション演出に革命を起こした『SP 野望篇』。その音響は『スター・ウォーズ』を手掛けたスカイウォーカーサウンドで仕上げられました。僕もブルーレイ制作スタッフとしてその場におり、ダビングルームに轟く圧倒的な音響が10年経った今でも耳から離れません。チェックしたのは冒頭の主人公SPとテロリストの追跡劇。六本木ヒルズの爆破、トラックの横転と衝突、走行するトラックの荷台での格闘、その風切り音や対向車の通過音、地下鉄駅構内のアナウンスなど、無数の効果音が重層的にサラウンドするシーンです。
DALIもKEFも効果音を量感たっぷりに描き出しました。音像の移動にスピーディに追随する様に感心しながらも、ここで疑問が。新シアターではセンタースピーカーをスクリーン下部のラックに収める予定だが、L→C→Rと音像が移動する際、Cだけ音像が低くならないか。センターなしのファントム配置にする方がよいのでは…。
◎判定/互角
- 続いて、『ダンスウィズミー』、『SP 野望篇』、『GODZILLA 怪獣惑星』を試聴。特に『GODZILLA』での凄まじい重低音に試聴室内に戦慄が走ります。音楽性に優れたOPTICON8 Mk2、パワフルな駆動力を備えたR7。それぞれのよさを目の当たりにし、悩みはますます深まるばかりです。
『GODZILLA 怪獣惑星』咆哮の凄まじい重低音をチェック
初号試写では劇場のサブウーファーさえ悲鳴を上げていた、終盤のゴジラ出現シーンをチェック。全高300mの巨体を震わせるゴジラの咆哮が、凄まじい重低音がホームシアターを揺るがす! 音響面では間違いなく、シリーズでもトップクラスの迫力です。
まずはDALIですが、ウーファー部がえげつないほどに激しく振動する光景に不安になってしまいました。これまでの試聴で実感したが、DALIはゴジラの咆哮さえも優しく奏でようとしてくれます。そんな優しい子にこんな刺激物を食べさせちゃいけないのです。ところがKEFにチェンジすると、やはり心臓に悪いほどにウーファーが震えるものの、それでもセリフや音楽が埋没せず描写される! KEFの余裕ぶりに僕は大興奮です。これでサブウーファーに超低域を任せてしまえば、パワフルかつ高解像度サウンドを楽しめるはず…!
◎判定/KEF
- 2時間にわたる試聴後、KEFR7を選ぶことに決定。エンクロージャーとドライバーユニットの色がワントーンで統一されたデザインにも惚れ込んだようです。