VGP phileweb

ガイド

  • 鴻池賢三のホームシアターTips 「タダ」でできる調音テクニック〈拡散編〉 フラッターエコーやスピーカーの鏡像現象を対策!

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2024年1月19日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

本連載では、ホームシアターのサウンド体験向上を目標に、一般的なご家庭でも取り組みやすく、さらに「なるべくダダ」でできるアイデアをご紹介しています。

「遮音と調音の違いを知ってサウンド体験をステップアップ!」を読む!

「『タダ』でできる調音テクニック〈吸音編〉」を読む!

今回は、「調音」の要素の一つである「拡散」について、その必要性と、対策が必要な場合に、「なるべくタダ」でできるアイデアをご紹介します。

調音における「拡散」とは?その必要性は?

前回の「吸音」編では、一般的な住宅の部屋をホームシアターとして利用する場合、低域を中心に残響時間が過多になりがちで、「吸音」が必要なケースが多いと述べ、以下のグラフを指標としてご紹介しました。しかし、このグラフでは、吸音のし過ぎも好ましくないことを示しています。吸音は重要ですが、音を吸収して残響時間が短い部屋を「デッド」と呼ぶように、極端に響きを無くしてしまうと、音に活力が無くなり、艶も失われて、無味乾燥になりがちです。特に物理特性上、低域よりも高域音は吸収され易いという性質があり、闇雲な吸音対策によって、「低域音の残響時間が長いまま、高域音の残響時間が短い」とうアンバランスな状態を招くのは避けたいものです。

推奨残響時間例
出典: http://hoteiswebsite.c.ooco.jp/room/chpt01/002.htm

前置きが長くなりましたが、シアタールームで起こりがちな「フラッターエコー」や「スピーカーの鏡像現象」といった音響障害の対策を行う際、「吸音」だけに頼ると過度な「デッド」に陥ります。そこで活用すべき対策が「拡散」です。「拡散」は、一定方向に偏りがちな反射音を多方向に散らすことで、音響障害を回避するテクニック。光に例えると、直線的で眩しい光を、摺りガラスなどで拡散して柔らかくするイメージ。音を吸収しなければ、残響時間も短くならないという訳です。

 【解説】

「フラッターエコー」とは?

鳴き龍現象とも呼ばれる。平行する壁面間を音が何度も反射を繰り返すことで、音が重複して異音に感じる現象。

「スピーカーの鏡像現象」とは?

壁面を鏡と見立てると、設置した本物のスピーカー以外にも、無数のスピーカーが鏡像(虚像)として現れるように、音響的には複数スピーカーが存在するようにふるまい、周波数特性や位相乱れる現象。

「なるべくタダ」でできる拡散テクニック

「フラッターエコー」や「スピーカーの鏡像現象」の効果的な対策については、また別の機会に詳しくご紹介しますが、部屋の壁面を鏡と仮定して、視聴ポイントからスピーカーが見える位置が、中高域の「拡散」に効果的です。「拡散」するためには、壁面が露出しないようにするのがポイント。家具などを設置すると「タダ」で済みます。より効果的に拡散させるには、本の詰まった本棚などが理想的で、本の背表紙が面一よりも、凹凸がある方がランダムな拡散が期待できて有利と考えられます。

  • 実際に鏡を使ってみましょう。視聴ポイントからユニットが見える位置が「拡散」に効果的な位置になります。

品位重視なら専用品の活用を!

本棚が無い、狙いの場所に本棚を置けない、あるいは音の品位や見た目も重視するなら、「拡散」を目的として専用設計されたアイテムの利用をお勧めします。こうしたアイテムは、音の周波数や反射の特性を考慮して、繊細な凹凸や材質が吟味されているので、本棚よりも確実かつ安定した効果が期待できます。

  • 音響調整パネル(天井取付型)
    太陽インターナショナル
    Skyline
    ¥106,700(税込/2個一組)

さいごに

本シリーズ記事では、調音の必要性と、その中に「吸音」と「拡散」があり、両者のバランスが重要であることを感じて頂けたと思います。今後、「フラッターエコー」や「スピーカーの鏡像現象」といった音響障害に焦点を当て、それぞれにより具体的で効果的な対策も詳細に解説したいと思いますのでお楽しみに!