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実例

  • 専用室シアターCASE44
    デジタルと和が呼応する防音室シアター
    8K映像&アトモスを美観を損ねず導入

    取材・執筆 / 井田有一(ホームシアターファイル編集部)
    2024年1月23日更新

独創的な和モダンシアター

日本の暮らしは明治以降、欧米化が進んでいますが、変わらずどこか通奏低音のように我々の心の底にある「和」。そんな心和ぐ気持ちを感じるジャパニーズモダンの専用室です。

この空間を印象的なものにしているのは「木」です。囲炉裏の煙で燻されたかのようなヴィンテージ感を備える書棚やテレビボード。そして視聴位置後方にレイアウトされたワークデスク。どれも一点物のオリジナル設計です。材質には硬く堅牢な特性から家具にも使われる高級木材「タモ」を使い、塗装を施すことで経年変化を楽しめる質感を獲得しました。

  • 120インチに8K投写。さらにサウンドは遮音壁の重ね張りでクオリティを追求しています。
  • スクリーンを上げるとテレビも設置されています。このテレビスタンドも関本氏がデザインしたもので、ルンバが通れるように11cmの隙間を作ったこだわりの品です。
  • 視聴位置後方の様子。ソファの背面にはMさんが仕事で使う書籍などをまとめておけるよう書棚付きのワークデスクがあります。こうしたホームシアタールームの設計はすべて関本氏が担当。「私に代わり、ハウスメーカーの一条工務店と細部まで打ち合わせてくれたので安心でした。すべて任せられたことも高い完成度に繋がっていますね」(Mさん)。

調音から内装までトータルプロデュース

そんなオーナーの美学を感じる部屋を内装工事も含めてトータルプロデュースしたのが、新潟の名店「For Music Company」です。代表の関本祥一朗氏は、年若くして自身のホームシアターショップを開店。20年近くも前から和モダンの空間提案を行っています。本誌の前身雑誌でも過去、事例を取材したことがあったが、その記事をMさんがご覧になり、新潟と東京という距離を越えてインストールを依頼することになったといいます。

「これまでのマンションだと本を読む場所もなく、新築するなら書斎兼ホームシアタールームがほしかったのです。大きな投資になるので、インストーラーさんの哲学は重要だと考えました」(Mさん)。

  • 躯体は一条工務店が行いましたが、シアタールームは下地だけ残した状態からFor Music Companyが担当。遮音・調音工事から内装デザインまで行っています。フロートデザインを採用した棚、一枚板を使った上質なデスクなど、使う人の心地よさを考慮した和モダンな空間です。

8K映像&ドルビーアトモス環境を構築

依頼を受けた関本氏はMさんが所有していた機材は流用しつつ、希望であった空間オーディオを楽しめるドルビーアトモス環境を構築するため、システムプランニングとルームチューニングを検討。スクリーンは電動120インチとし、ビクター「DLA-V80R」による8K投写を実現しました。サラウンドはB&W700シリーズを7.1chぶん耳の高さに揃え、4本のスピーカーを天井に埋め込んだ7.1.4ch構成としました。

  • 写真右/最近はアコースティックソースを聴く機会が多いというオーディオファイルのMさんが選んだB&W「702 S2」。以前のマンション住まいからお持ちで、リビングシアターのメインスピーカーとして使っていたもの。
    写真左上/プロジェクターはビクター「DLA-V80R」ですが、その設置方法がユニーク。取り付け金具は特注品で、スチールに焼き付け処理を施し、マットブラックの質感を生み出しています。
    写真左下/ MさんはHIPHOPの低音を感じたいとサブウーファーは検討中。取材時はB&W「DB4S」を使用していました!
  • 写真右/アンプやプレーヤーは、オーディオラックのQUADRASPIRE「Q4D VENT」に収納。
    写真左/スクリーンも和風のボックスをつくり隠しています。

遮音壁の重ね張りで心地よい再生音

室内は高い遮音性能を持つ防音仕様ですが、さらにオトテンなどを用い、残響音を適度に吸音・拡散しています。自然な響きが残るレベルで何とも快いです。長時間利用も見据え、目に見えない居心地まで考慮した音響調整が施されています。こうした点にもプロの技が凝縮しています。

  • 天井にはダイケンの調音材「オトテン」を使い、吸音・拡散しています。さらに埋め込みスピーカーのサランネットも黒く塗装することで目立たないようにしています。
  • 窓枠の白い部分は外壁を含む遮音層。元々かなり高い防音性能を持ちますが、窓枠の茶色の部分に硬い遮音壁を重ね張りし、低音再生の向上を狙っています。
  • こけら落としで上映したのは『天気の子』。『トップガン マーヴェリック』はMさんがドルビーアトモスに感動した作品だ。
  • For Music Companyのインストーラー、関本祥一郎氏

写真/水谷綾子

M邸ホームシアター概要

ROOM DATA
●住宅形態:戸建/新築 ●家族構成:夫婦+子ども2人 ●ホームシアターの広さ:約12畳 ●画面サイズ:120インチ+55インチ ●サラウンド:7.1.4ch ●インストール内容:機器設置、システムプランニング、内装デザイン、造作家具提案、ルームチューニング ほか

SYSTEM LIST
●プロジェクター:ビクター DLA-V80R ●スクリーン:キクチ SE-120HDCW ●液晶テレビ:TVS REGZA 55X930 ●UltraHDブルーレイレコーダー:ソニー BDZ-FT3000 ●AVアンプ:デノン AVC-X8500H ●モノラルパワーアンプ:TRIGON DWARF×2 ●フロントスピーカー:B&W 702 S2 ●センタースピーカー:B&W HTM6 ●サラウンドスピーカー:B&W 705 S2 ●サラウンドバックスピーカー:B&W 705 S2 ●トップフロントスピーカー:B&W CCM663RD ●トップリアスピーカー:B&W CCM663RD ●サブウーファー:B&W DB4S

INSTALL SHOP
For Music Company
新潟県新潟市中央区白山浦1-363
TEL:025-265-6301
https://www.formusic.jp/

ARCHITECT
For Music Company
https://www.formusic.jp/

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