VGP phileweb

レビュー

  • サエクの電源ケーブルで映像&音響をクオリティアップ! メガネ型の3モデルを比較 ホームシアターで “素材の味を引き出す” サエクの3モデルを比較

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2024年11月8日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

ホームシアターグレードアップの基本の1つに、電源ケーブルがあります。拙宅でも “お作法” としてすべての機器で価格帯に見合ったものを組み合わせています。困るのはメガネ型コネクタを電源端子として採用しているもの。最近Apple TVやゲーム機などでふたたび目立つようになりました。もっとも、各社から多くのメガネ型コネクタつき電源ケーブルが発売されています。そこで今回、3種類ラインナップするSAEC(サエク)の全モデルを比べてみました。

【12/1まで】抽選でAmazonギフトカードがもらえる読者アンケート実施中

マランツ「MODEL M1」のケーブルを換装

メガネ型コネクタケーブルといえば、わたしもかつてDVDプレーヤーに(旧い!)AudioQuestやオヤイデなどを使っていましたことがありました。最近の拙宅にはブルーレイレコーダーぐらいしか使い道がない上、録画用HDDのカタカタ音が苦手なプレーヤー派なのでシアタールームには置いていません。

けれどこのたび、マランツのネットワークプレーヤー/アンプ「MODEL M1」をお預かりする機会があり、これでサウンドの差を探ってみることにしました。実はこのモデル、自宅で試聴させていただくのは2回目。もともと「MODEL M1」は拙宅のフロントスピーカーKEF「Reference 5」のようなトールボーイ型よりも、リアに使っているブックシェルフ型「R3」のように、小型のスピーカーをパワフルに鳴らせるよう仕立ててある印象でした。それが、ケーブル換装によってどう変化するかも楽しみです。スピーカーはKEF「Reference 5」に繋ぎ、宅内NASの音源をネットワーク再生します。

  • ネットワークオーディオプレーヤー/プリメインアンプ
    MARANTZ「MODEL M1
    ¥154,000(税込)
  • 「MODEL M1」の設定画面。デジタルフィルターは「フィルター1」、クオリティは「高品質」に設定

エントリーモデル「PL-3800MM」をチェック

「PLー3800MM」は、同社のエントリーモデルである2P電源ケーブル「PL-3800」のコネクタ側をフルテックのメガネ型コネクタ「FI8.1N」に換装したモデル。そのため「PL-3800」(¥18,150税込/1.5m/17年10月発売)よりやや高価になっています。

  • 電源ケーブル
    SAEC「PLー3800MM
    ¥20,900(1.5m/税込)2023年7月発売
  • 「MODEL M1」の電源ケーブルを換装

まず一聴して、SNが向上し、静か。ストレスなくなめらかに押し出されるようになるのも、同社スピーカーケーブルと同方向で予想通りです。「Reference 5」との組み合わせでも中低域の誇張感はありません。

また以前、付属の電源ケーブルのまま「MODEL M1」を聴いたときは「デジタルフィルター1」にすると、スピード感があってアクション映画などでは爽快感を得られるものの、音源によってはやや硬質に感じるところもありました。ところが「PL-3800MM」に換装して聴くと、SNが向上して雑味が減ったからか、素直で耳あたりがよく、グンと品位が向上しました。

Charlie Haden & Pat Metheny『New Cinema paradise』のような曲が、俄然艶めかしく聴けました。BUMP OF CHICKEN『Sleep Walking Orchestra』や上原ひろみ『MOVE』は、ハットのアタック感と引き換えに時折耳に付くところが抑えられ、なるほどこれが本来の「MODEL M1」の実力だったのかと再認識しました。

ミドルモデル「PL-4400MM」をチェック

次は、ちょっと背伸びした価格の「PL-4400MM」。PC Triple Cを使った2.0SQ(スケア/断面積のサイズ)の導体径は「PL-3800MM」と同じですが、導体絶縁材の周りに糸を配置して円形にしている点が異なるとのこと。そこに「PL-3800MM」と同じフルテックのメガネ型コネクタ「FI8.1N」と、3P差し込みプラグ「FI-11M-N1」を装着したモデルです。

  • 電源ケーブル
    SAEC「PL-4400MM
    ¥42,900(1.5m/税込)2023年7月発売
  • 「PL-4400MM」電源プラグ側(左)/アンプに接続するコネクタ側(右)

これはものすごくクリアな方向に鮮度がアップ。「MODEL M1」の「デジタルフィルター1」の特長をそのまま伸ばしてあげた印象で、さらにパワフルかつタイトな印象になりました。スピード感がありマッシブなイメージが好きな方は、ぜひこのワンアイテムでブーストを。

ハイエンドモデル「PL-5900M」をチェック

最後にハイエンドの「PL-5900M」。フルテックのメガネ型コネクタ「FI-8N(G)」と3P差し込みプラグ「FI-11M-N1(G)」を装着したモデルを試します。価格はノーマルのコネクタ「FI-11-N1(G)」を使ったSAECの電源ケーブル「PL-5900」と同じ。網タイツも履いています。このモデルだけ、コネクタが前2モデルの「FI8.1N」よりも大ぶりの「FI-8N(G)」です。導体に3.5SQの「AC-6000」を使用し、だいぶ太くなりました。

  • 電源ケーブル
    SAEC「PL-5900M
    ¥57,200(1.5m/税込)2020年10月発売
  • 「PL-5900M」電源プラグ側(左)/アンプに接続するコネクタ側(右)
  • 「PL-5900M」を「MODEL M1」に接続。エントリーモデルと比べるとコネクタ部分がやや大ぶりに

ここまでくるとオーバースペックで手に余るのかと思っていましたが、意外にも3本の中でいちばんウェルバランス。BUMP OF CHICKEN『Sleep Walking Orchestra』でも高音域にキツいところがまったくなく、ピラミッド型の中低域も含めて刺々しさがありません。

それでいて、アルベルト・ギノバルトのピアノソロ&オーケストラでは「MODEL M1」の神経質なほど位相にシビアな面も掘り起こしながら、拙宅の「Reference 5」のフラットでちょっとウォームな感じにもよく馴染んでいます。ここまで来ると、誰もこの小さなお弁当箱サイズ「MODEL M1」で鳴らしているとは思わないでしょう。

Apple TVで配信コンテンツも視聴してみる

最後にApple TVに繋いでみます。KEF「Reference 5」を中心とした4.1.2構成のスピーカーを独Accustic Artsプリメインアンプ「POWER 1 MK3」(シアターパススルー)とLINNパワーアンプ「C6100」、ヤマハのAVアンプ「CX-A5200」で鳴らします。プロジェクターはLGエレクトロニクスの超短焦点モデル「HU915QE」。

先ほどハイレゾPCMファイルでも聴いたBUMP OF CHICKEN『Sleep Walking Orchestra』がApple Musicではドルビーアトモス音声で用意されています。

ENHYPEN『XO』、LE SSERAFIM『CRAZY』、ILLIT『Magnetic』、aespa『Supernova』、LISA『Rockstar』、BABYMONSTER『FOREVER』、TZUYU『Run Away』、MEOVV『MEOW』といった、つくり込みの効いたK-POPのドルビーアトモス音声をクリアに聴かせられるか。映画『ナポレオン:ディレクターズ・カット』の冒頭、イギリスからトゥーロンの砦を奪還する戦闘シーンや、逆光たくましい室内のシーンなどを見比べます。

  • K-POPなど、つくり込まれたデジタル音楽もチェックしてみます

まず「PL-3800MM」にすると、映像は朝焼けが美しくてSNはいいものの、サウンドが次の「PL-4400MM」よりスリリングさで一歩後退。もっとも、付属ケーブルに比べて、あきらかに細かい麻縄の擦れる音や、蝋燭の炎が焼ける音までつまびらかに聴こえてきます。

「PL-4400MM」になると、映像は輝度が全体的にアップ。オリジナルを知っていると、シャープでSNはいいものの、ピーク輝度が強調される印象です。ハイライトが出て昼間の明るさや貴族の肌が殊更に白く見えます。サウンドは切れ味の面で3本の中でもっとも鋭く、大砲の切れ味が抜群で、地響きもシャープ。導線の太さ自体は「PL-3800MM」と同じなのに、巻いている糸とプラグで方向性がずいぶん違うのに驚きました。

「PL-5900M」は、どっしりとした安定感のあるさすがの画。暗闇はビシッと締まり、怪しく闇に光る金属のテカリや、アイキャッチが生々しく映ります。ブルーの空はあざとくない程度に濃厚かつシャープに見通せ、黄昏の色味も美しい。白も「PL-4400MM」のようにぱあっと飛ぶことなく、なだらかなコントラスト感で自然です。サウンドも段違いに向上。大砲の音はずっしりと重く、飛ぶ球も「ひゅーっ」と明瞭にあとを引きます。静かなシーンでの会話も艶やかで、ほかの2本ほど神経質でないのも魅力です。

  • Apple TVに「PL-5900M」を繋ぐと、もはや本体が浮き上がってしまうのが玉に瑕

ひととおり観てから、もういちどオリジナルケーブルに戻すと、違いがよくわかります。映像はとくにコントラストに違いが出る印象で、映像のクリアさや奥行き感は電源ケーブルの換装によって向上できました。サウンドは低音域はアタック感は好印象ですが、深みや安定感は換装後のほうが増しています。とくにアイキャッチがキラリと光るところや、暗闇に大砲の浮かぶ不気味なシーンでその違いが際立ちました。さきほどまでよく聴こえた繊細なつまびらかさが丸まっている分、物足りなくも感じられます。

  • 「MODEL M1」の標準電源ケーブル

配信だからこんなものだろうと思っていたのですが、これが大間違い。Apple TVのポテンシャルを思い知りました。ケーブルは “味変” じゃなく “素材の味を引き出す” ことも。3本の中では「PL-5900M」の圧勝という感じですが、もはやノーマルには戻れません。最低でも「PL-3800MM」にしないともったいなく、キレ味やパンチを付加したいなら「PL-4400MM」という選択肢もあるかも。

そのほかの記事>>賃貸でもケーブルを「工事・穴開けなしで」スッキリ配線する3アイテム