本連載では、“ホームシアターで画と音を満喫したい”、“ファミリーで観られる作品が知りたい”、そんなホームシアターファンにこそ観てほしいアニメ作品のクオリティレビューをお届け。オーディオビジュアルの評論家である岩井 喬氏が自信を持ってお薦めする“はなまるアニメ”をご紹介します。
小さな幸せに彩られたコマ撮りアニメ
- 『リラックマとカオルさん』
2019年/1シーズン13エピソード(エピソード1:8分)
●監督:小林雅仁 ●声の出演:多部未華子 ●制作:ドワーフ ●映像:4K/HDR10、ドルビービジョン ●音声:日本語ドルビーデジタルプラス 5.1ch
Netflixにて独占配信中
記念すべき第1回目は、Netflixオリジナル作品『リラックマとカオルさん』を取り上げます。本作はストップモーションアニメーションで、いわゆる“コマ撮り”の手法で制作された作品です。2年の月日が制作に掛けられたといい、一日あたり10秒程度しか収録できないという極めて根気のいる作業の積み重ねによって生まれました。制作スタジオは『どーもくん』『こまねこ』といったストップモーションアニメ作品を数多く手掛けるドワーフ。監督は小林雅仁氏です。
本作では、初めてリラックマたちと一緒に暮らしているOLのカオルさんがビジュアル化されており、大きな話題になりました。カオルさんの日常を通し、リラックマやコリラックマ、キイロイトリたちと過ごす何気ない、しかし小さな幸せに彩られた営みが描かれます。リラックマは子供にも人気のキャラクターですが、カオルさんの存在が大人のリアルを反映しており、共感が得られるつくりも特長です。
- Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』
Netflixにて独占配信中
©2022 San-X Co., Ltd. All Rights Reserved.
- Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』
Netflixにて独占配信中
©2022 San-X Co., Ltd. All Rights Reserved.
輝度の高い光の演出と丁寧な音の作り込み
本作は4K/HDR、ドルビービジョン、音声は5.1chで配信。HDRを前提とした輝度の高い光の演出を多く取り入れており、カオルさんやリラックマたちが暮らすアパートや、散歩している土手の風景など、街中の描写も時間帯に合わせた自然光を意識して演出されています。部屋に差し込む眩い朝日に照らされる室内の様子も非常にリアル。基本的に人形やジオラマを撮影していく実写作品であるので、アニメという側面での評価軸には収まらない空間性豊かな映像といえます。
セリフや効果音、サラウンド効果もリアル志向。飾らないBGMも耳当たり良く丁寧に作り込まれています。クオリティ的に面白いのは第5話『お盆』。冒頭のホラー映画を見ているシーンの効果音や、雷鳴の響きは、サラウンドを十二分に活用した臨場感ある空間性を作り出しています。HDR環境やサラウンドシステムで、作り物とは思えない、リアルなリラックマの世界への没入感をより一層味わってほしいです。
- 『リラックマとカオルさん』画質/音質傾向表
- カオルさんは多部未華子が演じるなど、人間側のキャラクターは普通に会話するが、リラックマたちはうめいたり泣いたりしているような声しか発せない。それでも動きで感情をカバーする豊かな表現方法で心情が伝わってきます。
Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』
Netflixにて独占配信中
© 2022 San-X Co., Ltd. All Rights Reserved.
- リラックマやコリラックマ、キイロイトリのディテールは柔らかそうなフェルト調の素材感をリアルに表現。人形の衣装についても繊維の目や毛羽立ち感もダイレクトに捉えており、自然な動き方と相まって、作り物とは思えない立体的な本物らしさも垣間見せてくれます。
Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』
Netflixにて独占配信中
© 2022 San-X Co., Ltd. All Rights Reserved.
- 絵作り面では、細やかに再現している部屋の中の調度品に毎回驚かされます。
Netflixオリジナルシリーズ『リラックマとカオルさん』
Netflixにて独占配信中
© 2022 San-X Co., Ltd. All Rights Reserved.
SPEC
●監督: 小林雅仁 ●脚本: 荻上直子 ●声の出演:多部未華子、松本惣己、山田孝之 ●音楽:岸田繁 ●主題歌:くるり「SAMPO」 ●クリエイティブアドバイザー:コンドウアキ ●製作著作: サンエックス ●制作会社: ドワーフ ●シーズン:シーズン1(エピソード1~13) ●主な映像フォーマット:4K/HDR10、ドルビービジョン ●主な音声フォーマット:ドルビーデジタルプラス 5.1ch ●主な字幕言語:日本語、英語、簡体字中国語
REFERENCE
- 4Kチューナー内蔵ビデオレコーダー
PANASONIC
「DMR-ZR1」
¥OPEN(実勢価格¥360,000前後)
- 4K有機ELテレビ
PANASONIC
「TH-55JZ2000」
¥OPEN(実勢価格¥390,000前後)
- AVアンプ
DENON
「AVC-X8500HA」
¥550,000(税込)
- スピーカーシステム
MONITOR AUDIO
「Silver 7G series」
使用モデル→「Silver 300-7G」 ¥396,000(税込/ペア)/「Silver 200-7G」 ¥308,000(税込/ペア)/「Silver 100-7G」 ¥198,000(税込/ペア)/「Silver C250-7G」 ¥154,000(税込/1本)/「Silver AMS-7G」 ¥170,500(税込/ペア)/「Silver W12」 ¥264,000(税込/1本 ※第6世代)