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  • 鴻池賢三のホームシアターTips ホームシアターの“壁紙”選び方ガイド。高画質を引き出すテクニック ちょっとしたコツで画質をアップ!

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2023年10月27日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

憧れのシアタールーム。計画に際しては、自身の好きな色を採り入れたりなど、インテリアに思いを巡らせるのも楽しい時間でしょう。しかしここで注意したいのは、映像クオリティとの兼ね合い。特に面積が広い「壁紙の色」は、映像の見え方に影響を及ぼすことがあり、注意が必要なのです。この記事では、壁紙の色と映像の見え方の関係を解説し、オーナーの好みや個性を尊重しつつも、画質面でも満足な「壁紙の色」の選び方をご紹介します。

明るい「緑色」や「赤色」は非推奨!

明るく色鮮やかな緑色や赤色は個性的で「非日常」や「エンターテイメント」感を求める方に好まれることがありますが、映像との相性はよくありません。明るい部屋でテレビを観る場合、視覚が壁紙の色に順応すると、映像を正しい色味で観ることができなくなってしまったり、極端には部分的に「残像」が生じて気になるケースも起こり得ます。

簡単な実験をしてみましょう。以下の図の中心にある黒点を20秒ほど凝視した後、画面の白い部分や白い壁に目を移してみましょう。ピンク色の残像が見えるはずです。これは色順応の一種で、緑を退色する方向に補正された結果、補色の関係にある赤色系に見えてしまうという理屈です。

  • 20秒ほど凝視した後、画面の白い部分や白い壁に目を移してみましょう。画像をタップで大きく表示できます

また、暗室に近いスクリーンシアターであっても、明るい「緑」や「赤」の壁紙は好ましくありません。プロジェクターからスクリーンに投写される映像光は、壁面を反射してスクリーンに戻る「迷光」現象を伴います。この反射光に壁紙の色が乗ると、映像の本来の色味が変化して見えてしまうというわけです。

マット調のダークトーンがおすすめ

映像の品位だけを考えると、壁紙の色は黒色で、迷光も抑えられるマット調が理想的といえます。

しかし壁紙が全て「黒」だと、息苦しさや圧迫感を覚える方も多く、生活空間として適さないもの。制作作業室や映画館のように映像を観るだけの部屋ではないかぎり「全面真っ黒」は避けた方が無難でしょう。

  • スクリーン周辺の反射光が強い箇所に、部分的に黒い壁紙を利用するのは一案です

「黒」を除くと、グレー系は映像と好相性です。グレーは無彩色と呼ばれ、つまり「色の無い色」。迷光が生じても、赤や緑といった色味が乗らず、映像の見え方に影響が少ないものです。迷光を抑えて映像のコントラスト比を高めるなら、マット調のダークグレーがより有利です。

たとえばプロジェクター用壁紙でも有名なサンゲツは、同社の製法を駆使して光を抑えたマット調で、グレーから黒の製品をラインアップしています。信頼できるメーカーの製品を有効活用するとよいでしょう。

  • 壁紙
    サンゲツ
    RE53033

シアタールームに個性や好みを出すなら

とはいえ、黒やグレーはエンターテイメント空間として味気ないもの事実。色付きの壁紙を使用したい場合は「ダークブルー」や「ダークレッド」が推奨され、映画劇場でも通常はそのような選択をしています。ヒトの視覚は緑色に対する感度が高いので、ダークトーンでもグリーン系のカラーは推奨されません。

  • 全面真っ黒ではない劇場の内装の一例。2023年6月旧渋谷TOEI跡地にオープンした「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」では、色のある部分にはダークレッド色が使われています。

映像の品位だけを考えると、壁紙の究極の理想の色は「マット調の黒」です。しかしホームシアターは生活の場でもあり、オーナーの個性や好みを活かすのも当然アリです。今回の記事が、より高品位な、満足のいくホームシアターづくりの参考になれば幸いです。

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