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  • 続・ネット通販の格安プロジェクターのスペック表記が怪しい件 プロジェクターの明るさ問題、解決に向けた動き

    VGP 取材・執筆 / 鴻池賢三
    2021年4月30日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

格安プロジェクターの明るさ問題

前回、ホームシアターCHANNELで報じた「格安プロジェクターのスペック表記が怪しい件」

実際に、感性評価と測定の両面から格安プロジェクターの実力を検証したところ、とくに明るさに関して、記載されているスペックとの乖離が大きいという結果になりました。この記事に対して、さまざまなご意見をいただきました。そこで、この格安プロジェクターの明るさ問題の実情、もう少し突っ込んで取材してみました。(編集部)

  • 写真は執筆時点(3月末)、Amazonで¥6,999(税込)で販売されていた格安プロジェクター「HOMPOW T20」

ルーメンにも種類がある!?

現在、ECサイトで格安プロジェクターが多数見つかるようになりました。消費者として選択肢が増えることは喜ばしい限りですが、反面、落とし穴も存在するので注意も必要です。

その最たる例が、プロジェクター選びで重要な映像の「明るさ」についてです。大手専業メーカーと同等のルーメン値を記載した格安製品が、20分の1程度の価格で販売されていることもあります。多くの方は極端に安価な製品は「怪しい」と疑う反面、「もし本当なら」と気になるのではないでしょうか?

製品紹介ページにはスペック欄があり、様々な数値が記載されています。購入検討時に比較に用いる方も多いことでしょう。

実際にECサイトで、「4,000ルーメン」と謳っている格安製品を購入し、同一スペックを持つ大手専業メーカー製品と比較投写したところ、映像の明るさは全く別物でした。筆者の測定では、1/30以下という結果になりました。

同じ「ルーメン」なのに、いったい何故このような違いが起るのでしょうか? 格安メーカーは嘘の表示をしているのでしょうか?

取材の結果、これは測定方法の違いによるものだと分かりました。

プロジェクター業界では長年、標準的に「ANSIルーメン」が使われてきました。つまり、一定のルール、一定の測定方法に基づいた公平な方法といえます。

しかし、実際に購入して測定した格安プロジェクターは、光源であるLEDを直接測定したルーメン値を記載しているようなのです。「ANSIルーメン」とも記載していないので、「嘘」とも言い切れませんが、消費者にとって非常に紛らわしいと言わざるを得ません。

大手メーカーも動き出した!

こうしたプロジェクター市場の混乱を正すべく、大手メーカーも動き始めています。

2021年3月2日に「プロジェクター市場で誤解を招く明るさ仕様の表示を排除し、市場を正常化するという継続的な取り組みを明確にしたうえで、フィリップスおよびScreeneo Innovationとの間で、Screeneoが設計、製造、販売する今後のすべてのPhilips NeoPixプロジェクターが業界標準仕様の明るさ表示(ISO 21118:2020)を使用することで合意に達したと発表しました。この合意は、業界標準の仕様を使用していない詐欺的な広告を排除するための積極的なキャンペーンの結果です」という旨を含むプレスリリースが、エプソンアメリカから発行されています。

誤解を招く明るさ表記をしている各社と協議による合意、訴訟を起こしての和解、一部で損害賠償の獲得を引き出すなどの活動を続けているそうで、こうしたメーカーの垣根を越えた動きは、日本でも広まっていくかもしれません。

ちなみにISO 21118:2020では、プロジェクターのスペック表記について、表記すべき内容、表記方法、測定方法、計算方法を詳細に規定しています。「映像の明るさ」もその中に含まれていて、測定方法は以下の通りだそうです。

◇光束は、暗室にて照度計を使用してスクリーン上を測定し、数値を得る
◇スクリーン上に全白画面を投写し、縦横それぞれ3分割した、9分割区画の中心点の照度(ルクス)の平均値を算出する
◇スクリーンの縦横長さから、その面積(m2)を計算する
◇光束(ルーメン)は9点の照度(ルクス)の平均値にスクリーン面積をかけて計算する

つまり、明るさの測定方法については、従前の「ANSIルーメン」と同等のようです。

正しく比較できる、業界統一の明るさ表記を!

ネットを通じて製品を入手する機会が増えている今こそ、スペックを正しく比較できる公平な基準を作ることは、消費者保護の観点からも、とても大切です。

現在、日本では、ECサイトで販売されている格安プロジェクター製品の多くが、ISO 21118:2020に基づいた表記がされていないようです。後悔しない買い物をするには、今はユーザーが気をつけるしかありませんが、北米を発端とする世界的な流れから、今後改善されるよう期待したいと思います。