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レビュー

  • KEF「LS60 Wireless」 KEF独創的アクティブスピーカー
    点音源の理想を追求した、傑作リビングオーディオ
    大画面テレビとの組み合わせにも最適

    取材・執筆 / 折原一也
    2023年1月20日更新

    • VGP審査員
      折原一也

大画面テレビと共存する、リビングオーディオの最高峰

英国KEF(ケーイーエフ)から、最先端のオーディオ技術を惜しみなく注ぎ込んだ、革命的なアクティブスピーカー「LS60 Wireless」が誕生しました。

KEFほど、新しいオーディオ像の実現に向かって、果敢に科学的アプローチで挑戦しているブランドはないでしょう。2022年5月にブランド創立60周年を記念して発表された「LS60 Wireless」は、フロア型でアクティブスピーカーという存在からすでに個性的です。しかし、目指すところはさらに新しく、独創的です。音響技術としてはペア300万円以上の価格を誇るハイエンドスピーカー「Blade」の系譜に連なるとなると、ピュアオーディオ愛好家としても注目の存在として浮上します。

LS60 Wirelessは「大画面テレビのまわりにスピーカーを導入したい。けれど、サラウンドをメインとしたホームシアターではなく、オーディオの観点から高音質化したい」というライフスタイル志向、そして同時にピュアオーディオ志向の方に強くお薦めしたいスピーカーです。テレビ放送、映画、サブスク動画配信と視聴するコンテンツが時代と共に変わっても、テレビはリビングの中心に置かれています。自宅のオーディオを高音質化するならまずはテレビまわりで、という発想は理にかなっています。

  • アクティブスピーカー
    KEF
    LS60 Wireless
    ¥880,000 (税込)
  • 折原氏のご自宅のリビングに「LS60 Wireless」を実際に持ち込んで、大画面テレビとの組み合わせで検証をおこないました。

LS60 Wirelessは、まずテレビとの接続性を高めるために、アクティブスピーカーとしては珍しく、HDMI端子(eARC対応)を搭載しています。サウンドバーやAVアンプのように、テレビのリモコンで音量操作できる外部スピーカーとしても動作させることができます。もっとも、本機にサラウンド機能はなく、ステレオ再生が基本です。

そしてLS60 Wirelessは、あくまでも音楽リスニング用のスピーカーです。入力端子はRCAアナログ音声端子、光・同軸デジタル音声端子により、CDやレコードといったオーディオプレーヤーとの接続性を確保しながら、Wi-Fi・有線LANによるネットワーク接続に対応。Airplay2、Google Chromecast、ROON Ready、さらに「KEF Connect」アプリを経由することで、Amazon Music、DEEZER、Spotify、TIDALなどのストリーミング音楽サービスも楽しめます。家庭内Upnpサーバー接続による、ネットワークオーディオ再生も利用できます。最大384kHz/24bitのPCM音源や、DSD、MQAフォーマットなど、ハイレゾ再生にも対応しています。さらにBluetooth機能もあるので、スマホやPCから手軽にワイヤレスで音楽再生することも可能です。総じていえるのは、今どきの音楽リスニングをすべて網羅するスピーカーであることです。

KEF独自技術を盛り込んで、点音源の理想を追求

LS60 WirelessにはこれまでにKEFがコンピュータ解析に基づく科学的なアプローチによって生み出してきた革新的な音響技術の数々が多数投入されています。

  • シングル・アペアレント・ソース・テクノロジー
    ミッドレンジとトゥイーターで同じ中心を共有する、Uni-Q同軸ドライバーの周辺に対称的に対向するペア、ウーファー4基を配置。 点音源の音響的理想を実現するための独創的なレイアウトです。
  • 「MAT」搭載第12世代Uni-Q
    トゥイーター背後に、音の濁りを除去する迷路のような音響構造をもつ「MAT(Metamaterial Absorption Technology)」を搭載。 よりピュアな再生音を実現しています。
  • 低音を最大化するUni-Coreを応用
    コンパクトな筐体にフォースキャンセリングドライバーを搭載することで、不要振動を抑えながら深い低音を生み出すUni-Coreシステム。 その仕組みが本機にも応用されています。

たとえば、「シングル・アペアレント・ソース・テクノロジー」。すべての帯域の音が1点から放射される、点音源の理想を実現するために開発したKEF独自の技術で、そのポイントとなるのは音響的な中心をUni-Q同軸ドライバー、そして左右をLFドライバー4基、2基×2基の対向配置とすることで、Uni-Qのメリットを活かす構成を採用していることにあります。一般的なマルチウェイ構成のスピーカーは、異なる周波数を発生させるドライバーが、別々の地点から音を放射します。ドライバー同士が相互作用することで干渉が発生します。これを削除することでクリアで正確なサウンドイメージを生み出そう、というのが狙いです。

フロントには、KEFを代表する4インチのスピーカーユニット、MAT搭載第12世代Uni-Qドライバーを搭載しています。MAT(Meta material Absorption Technology)とは複雑な迷路状の音響構造を持つパーツで、これをトゥイーターの裏に配置することで不要な音を99%吸収し、ピュアなサウンドを実現するもの。スピーカーの両サイドにはLFドライバー合計4基、2×2基で対向配置しています。これはKEFのサブウーファー「KC62」のUni-Core技術と共通するもので、対向配置により振動を打ち消しつつ出力を増強、キャビネットの不要共振を抑制するものです。なお、低周波の位相補正には独自のエンジン「Music Integrity Engine」によるチューニングも効いているといいます。

これだけ独自技術だらけの3WAYスピーカーですが、LS60 Wirelessはとてもスリムです。その幅は標準サイズのiPhone(約147mm)よりも狭い約130mmほど。アンプは左右に対して、高域にクラスABの100W、中域にクラスDの100W、低域にクラスDの500Wを搭載する1本あたり出力700Wと規格外にハイパワーです。そのためバックパネルと台座には、冷却機能が組み込まれていて、オーバーヒートを起こさないような工夫が盛り込まれています。

  • MAT搭載第12世代Uni-Qドライバー。同軸構成でミッドレンジは100mm、トゥイーターは19mm。素材はいずれもアルミニウムを採用しています。新たにMATを搭載したほか、タンジェリンウェーブガイド背面リブの強化やトゥイーターギャップダンパーの再設計、中域モーターシステムの改良などが行われた「最新バージョン」です。
  • キャビネットの側面には、背中合わせでマウントされた135mmウーファーが2組4基搭載されています。 ひとつのモーターシステムに2つのドライバーユニットを組み合わせるUni-Coreテクノロジーによって筐体の不要振動を抑えつつ、小さなスペースで深い低音を生み出します。
  • プライマリスピーカーの端子部。 テレビとの組み合わせに最適なeARC対応のHDMI出力を搭載するほか、デジタル/アナログ音声入力を装備。さまざまなオーディオシステムと接続できます。 なお、音源解像度はネットワークの場合は最大384kHz/24bit、 同軸デジタルおよびHDMIの場合は最大192kHz/24bit、光デジタルの場合は最大96kHz/24bit。 また、左右スピーカー間をワイヤレスで接続した場合は、すべてのソースが96kHz/24bitに変換されますが、有線で繋ぐとより高品位の192kHz/24bitに変換されます。
  • 片側700W、総合1400Wというハイパワーのアンプシステムを内蔵。そのため端子部と底部に冷却のための通気孔が設けられています。クラスABとクラスDを組み合わせた設計で、KEF独自のDSP「Music Integrity Engine」によってハイレベルで最適化され、駆動されます。

ハイエンドオーディオとテレビシアターの2つの魅力を発揮

実際に自宅のテレビ横にLS60Wirelessを設置、まずはAirPlay2で音楽を流してみると…すぐにハッとさせられました。2011年に初めて聴いた初代Bladeのサウンドにもよく似た、独特の定位感と、サウンドステージの広さ。改めて「KEF Connect」アプリからAmazon Musicを聴き始めると、その印象は確信へと変わりました。

  • ピュアオーディオとして、テレビシアターとしての二つの側面から音質をチェックしました。

ダイアナ・クラール 『夢のカリフォルニア」を聴き始めると、2本のスピーカーの間に巨大な空間ボリュームをともない、すっと歌声が浮かび上がります。エネルギー漲る歌声の情熱的な表現も魅力的ですが、その歌声そのものにリアリティ、奥行きが感じられます。これはまさに、Bladeの系譜といえるでしょう。ダイナミックレンジの表現も素晴らしいです。ベルリオーズの『断頭台への行進』を聴いても、小音量でも空間の奥から確かな存在感を放つ再現性と、急峻な立ち上がりへの追従性も見せます。

LS60 Wirelessの接続端子をHDMIに切り替えて、テレビ用スピーカーとして使い始めると、テレビ放送から様々な番組がよりリアルな高音質で流れてきます。たとえば、サッカーのハイライト番組。アナウンサーの声はクオリティが高く、質感を伴いつつ空間に浮かびます。スタジアムの歓声は精密と呼ぶほかない音の分離感で、まるでテレビを包囲するように広がります。 Netflixで配信中の『Hikaru Utada Live Sessions from AIR Studios』を視聴しても、音楽的でリッチな中低音がボリュームを満たす鳴りのよさと同時に、点音源ならではの空間に浮かび拡散するような伸びやかな歌声が独特で魅力的です。

最後にUltra HDブルーレイの映画コンテンツ『ボヘミアン・ラプソディ』を視聴してみました。ウェンブリー・スタジアムのライブのシーンでは、ステレオとは思えない周囲の歓声の自然な広がり感、そして純度の高いピアノとエレキギター、ボーカル、ベースやドラムが一体感を持ってステージ中心に浮かび、点音源ならではのメリットが活きます。とりわけ相性がよいシーンでした。映画の迫力、重低音をさらに求める向きには、コンパクトなサブウーファー、KC62と組み合わせるのもお薦め。サブウーファーは、最大2台まで追加できます。

KEFのLS60 Wirelessを実際に体験してみると、2つの魅力があるように思えました。ひとつは、完成されたハイエンドのオーディオ製品としての歓び、 そしてもうひとつはテレビシアターとしての遊び心です。リビングでこれらを1台で体験できるKEFのLS60 Wirelessは、リビングオーディオの究極の選択肢として考えるべき、アクティブスピーカーです。

SPEC

LS60 Wireless
●型式:3ウェイ ●ドライバー構成:MAT搭載第12世代Uni-Qドライバー (100mmミッドレンジ/19mmトゥイレーター) ×1、Uni-Coreフォースキャンセリングドライバー (135mmウーファー)×4 ●アンプ出力:700W (1本あたり) ●再生周波数特性:26~36,000Hz ※スピーカーの設定により異なる ●入出力端子:HDMI (eARC) デジタル音声入力 (光/同軸)、アナログ音声入力(RCA)、サブウーファー出力×2ほか ●外形寸法:130W×1042H×321Dmm(台座含まず)/212W×1090Hx394Dmm(台座込み) ●重量:62.4kg(1セット2本合計)

LS60 Wirelessとの組み合わせに最適、KEFのコンパクト高性能なサブウーファー「KC62」についてはこちらの記事で!