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レビュー

  • SONY「VPL-XW7000」「VPL-XW5000」 ソニー4Kレーザープロジェクター、高画質の秘密を開発陣に聞く
    新開発ネイティブ4K SXRD™パネルとレーザー光源
    画質比較レビュー。輝度・色域がさらにパワーアップ

    取材・執筆 / 折原一也
    2023年1月27日更新

    • VGP審査員
      折原一也

ホームシアターファン憧れのプロダクトといえば、昔も今も「プロジェクター」がその代表格。ソニーは「3管式」が主流のホームシアター黎明期から、ずっとシーンを牽引し続けているメーカーです。そんなソニーのハイクラス4Kプロジェクターが「VPL-XW7000」および「VPL-XW5000」として、2022年にリニューアルを果たしました。VGPアワード審査員を務める折原一也氏が、この2機種の魅力を改めて検証します。

新開発のネイティブ「4K SXRD」パネル採用

ソニーの新しい4K SXRDプロジェクター「VPL-XW7000」と「VPL-XW5000」を、開発拠点でもあるソニー大崎の試聴室で取材・体験してきました。

どちらのモデルも新開発のネイティブ「4K SXRD」パネルを採用した、レーザー光源の4Kプロジェクターです。

「VPL-XW7000」と「VPL-XW5000」、どちらもパネルは共通で、従来の0.74型から、新たに0.61型へとダウンサイジングを果たしつつ、ネイティブ4K(3840×2160)表示を実現しています。

左側が0.74型ネイティブ4K SXRDパネル、右側が0.61型ネイティブ4K SXRDパネル。パネルデバイスを小型化することで、レンズやヒートシンクなどもコンパクトにできるメリットがあります。結果、従来モデル「VPL-VW775」と比較して、「VPL-XW5000」は約30%の小型化、「VPL-XW7000」は約20%の小型化を実現しています。

パネルを小型化すると画質が落ちるのでは? と思う方も多いかもしれません。しかし、画質面ではプラス要因があると言います。

シニアエンジニアリングマネジャー・宮野京介氏によると、「”0.61型ネイティブ4K SXRDパネル”のセルのギャップサイズも小型化することで開口率90%をキープしながら、反射面の精度や材料を見直すことによって、反射率をさらに10%ほど向上させています。従来の0.74型のSXRDでも、「VPL-GTZ380」では、パネルの内部の液晶材料の光の耐光性を上げて、実は名称が同じでも、デバイスは少しずつ改良が行われていますが、それらの技術の蓄積も、新しい0.61型ネイティブ4K SXRDパネルに入っています」とのこと。ちなみに小型化は、コストダウンや軽量化だけでなく、光学ブロックの高精度化にも繋がっていて、画質性能のアップ(高輝度かつ高コントラスト)に貢献しているといいます。

パネル以外にも新たな高画質技術が結集

また、ブラビアで採用している、精細感やダイナミックレンジの拡大に効く高画質エンジン「X1 Ultimate」をプロジェクターに最適化した「X1 Ultimate for projector」を搭載しているのも共通の特長です。

輝度面では、光源に「Z-Phosphorレーザー」が導入されたことが効いています。明るさのスペックは「VPL-XW5000」は2000ルーメンに到達、上位モデルの「VPL-XW7000」では3200ルーメンと、高輝度性能を手に入れました。とりわけVPL-XW5000は、従来モデル「VPL-VW575」の光源が高圧水銀ランプでしたので、大きな変化が期待できそうです。広色域化技術「トリルミナス プロ」も導入されていて、DCI-P3 95%のスペックも実現しています。

カラーフィルターなしで、輝度や色域を上げることは、技術陣にとって大きなチャレンジだったそうです。

レンズは、「VPL-XW7000」では新開発の「アドバンストクリスプフォーカス」を搭載しています。特に「Φ70mm非球面フロントレンズ」、「フローティングフォーカスシステム」、「超低分散ガラス」を採用することで、画面全体での透明度を高め、画面の隅から隅まで高精細でクリアな映像を実現するといいます。

「VPL-XW5000」は新開発の「新4K標準レンズ」を採用しています。ガラスレンズではありませんが、解像度基準を上げることで、コストを抑えながら4Kらしい高画質を実現するといいます。外見上のレンズサイズも小型化していますが、これも0.61型ネイティブ4K SXRDパネルによる小型化の恩恵を受けた部分だそうです。レンズ収差と呼ばれる、四隅の歪みを低減できるからです。

そのほか「VPL-XW7000」にのみ、比較的明るい環境でも自然な色合いを実現できる「ライブカラーエンハンサー」が、新たに搭載されています。3200ルーメンの高輝度設計と併せて、<リビングシアターで最高画質>を目指すなら、「VPL-XW7000」は特に見逃せない存在になりそうです。

「VPL-XW7000」のみライブカラーエンハンサーの機能を搭載。「強/中/弱/切」の4パターンから効き味を選べます。

XW7000とXW5000、それぞれの画質の違いは?

実際に「VPL-XW5000」、「VPL-XW7000」の順に、画質を視聴してみました。従来モデルからの進化も検証しています。

まず、「VPL-XW5000」で映画『テネット』をチェックしました。ホームシアターに求められる「漆黒の再現性」と同時に、画面の「輝度感」、そして「精細感」まで、従来モデルから、すべてが高次元へと進化していました。暗室で映画を鑑賞する本格派のプロジェクターとして、ハイエンドの風格すら感じます。

ただし、同じシーンを「VPL-XW7000」で視聴すると、高輝度ゆえのパワーによる先鋭感、眩しさの再現は圧倒的でした。この2機種にはスペック以上に、価格相応の画質差があるので、ぜひ実際にチェックしてみてほしいです。レーザー光源の採用が進む映画館の業務用プロジェクターでも、映画を観た時の「鮮やかさ」、「キレ」というのは、高画質のひとつのトレンドとなっています。映画館の現状に詳しい方ほど、上位モデルの方に一目惚れすることは間違いないでしょう。

また、ビデオ系の映像を視聴した際に、想像以上に画質に影響を与えていると感じたのは、新たに搭載された「X1 Ultimate for projector」と「ライブカラーエンハンサー」の機能でした。すこし照明が残るような明るい環境でも、ライブカラーエンハンサーを調整することで、色抜けが少ない、自然かつ広色域の高画質を体感できました。ライブカラーエンハンサーの機能は、上位モデルであるVPL-XW7000を選ぶ、ひとつの理由になりそうです。

「VPL-XW5000」、「VPL-XW7000」を視聴して実感したのは、プロジェクターの画質が新たなフェーズに入ったということです。VPL-XW5000は暗室での利用にお薦め。VPL-XW7000は幅広い利用シーンやコンテンツにマッチする、現代的なホームシアターをカバーする存在として好印象でした。いま、家庭用ハイエンドプロジェクターの画質がどこまで進化しているのか…ホームシアターファンには必ずチェックしてほしいアイテムです。

実際に、従来モデルとXW7000とXW5000を横並びで比較視聴できる環境で、画質の違いを検証することができました。ちなみにいずれも前面吸気/背面排気方式です。
取材にご対応いただいたソニー株式会社 ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 シニアエンジニアリングマネジャーの宮野京介さん(左)、商品企画の吉江 直さん(中央)、プロジェクトリーダーの池浦一賢さん(右)。

SPEC

4Kプロジェクター
SONY
VPL-XW7000
¥OPEN(実勢価格¥1,870,000前後/税込)
2023年2月1日からの価格改定後の想定価格は¥1,980,000前後/税込
SPEC ●方式:LCOS ●パネル:0.61型 ネイティブ4K SXRD ●光源:Z-Phosphorレーザー ●画素数:3,840×2,160 ●明るさ:3200ルーメン  ●プロセッサー:X1 Ultimate for Projector ●投写距離:3.56〜7.77m(120インチ16:9) ●レンズシフト:V±85、H±36●騒音値:26dB ●外形寸法:460W×210H×517Dmm ●重量:14kg

4Kプロジェクター
SONY
VPL-XW5000
¥OPEN(実勢価格¥880,000前後/税込)
2023年2月1日からの価格改定後の想定価格は¥990,000前後/税込
SPEC ●方式:LCOS ●パネル:0.61型 ネイティブ4K SXRD ●光源:Z-Phosphorレーザー ●画素数:3,840×2,160 ●明るさ:2000ルーメン ●レンズ:新・標準(手動) ●プロセッサー:X1 Ultimate for Projector ●投写距離:3.61〜5.76m(120インチ16:9) ●レンズシフト:V±71、H±25 ●騒音値:24dB ●外形寸法:460W×200H×472Dmm ●重量:13kg

他社プロジェクターとの比較は、こちらの記事もご参照ください。
プロジェクター画質レビュー[2022]ハイエンドクラス(100万円以上)