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レビュー

  • フロントスピーカー特集
    まるでオブジェ!独自のコンセプトを持つ個性派モデル6選

    取材・執筆 / 大橋伸太郎
    2023年12月1日更新

    • VGP審査委員長
      大橋 伸太郎

他の人と被りにくい?! 個性派ブランドを6つご紹介

ホームシアターの「顔」、フロントスピーカー特集。後編は、「ホームシアターCHANNEL」の実例で、フロントスピーカーとして採用された事例がそれほど多くないものの、オブジェのように主張のあるデザインと高音質を併せ持った、ユニークな顔ぶれのスピーカーを6つラインアップしました。

まず、いずれも見た目が特徴的です。ずんぐりとした太い体躯のモデルや球体のもの。一般的なトールボーイ型でも、エンクロージャーのデザインや素材が、ほかと一線を画します。音質についてもまた然りで、定番ブランドとはまた違った個性の強い音色を奏でます。デザインも音質も個性的なスピーカーをつくるブランドたちは、それぞれどんな”哲学”を持っているのでしょうか。

今回も、評論家の大橋伸太郎氏がそれぞれのスピーカーを比較試聴。音質傾向をチャート付きで解説。また前編同様、人に自慢したくなるようなブランドの歴史や”哲学”についてもご紹介いただきました。ぜひ、お楽しみください。

個性派モデルを6つ並べて比較視聴してみると、それぞれ独自のコンセプトを持つスピーカーだけに、長所がそれぞれに異なることがわかりました。ご自分の視聴スタイルや求める音をしっかりイメージし、それに合うものを見極めるのがおすすめです。そうすれば、長く、深く愛し続けることができる相棒が見つかるかもしれません。ほかとは被らないフロントスピーカーを選んで、自分らしいホームシアターを構築してみませんか?(編集部)

  • 試聴取材では、音楽ソフトにレコードとCD、映画ソフトに4K Ultra HDブルーレイを用意。再生機にはパナソニック「DP-UB9000」、レコードの再生にLUXMAN「PD-171A」、プリメインアンプにテクニクス「SU-GX70」をレファレンス機器として使用しました。

前編「おうちに置きたい、伝統ある実力派!定番ブランド5選」はこちら

Sonus faber「Sonetto Ⅲ」

  • Sonus faber
    Sonetto III
    ¥660,000(税込)/ペア

Sonus faber〜イタリア出身、美しい筐体と深みのある音色が特長

1983年にイタリア・ベネト州に創立されたソナス・ファベールのスピーカーは1980年代終わりに日本に紹介され、カルチャーショックを呼び起こしました。豊富に産出した木材を組細工のように使った美しいエンクロージャー、ロッシーニオペラのヒロインたちの歌声を思わせる、陰影豊かで深みのある音色。楽器型スピーカーの極致とも言うべきソナス・ファベールは世界中に熱烈なファンを生み出しました。それから30余年。幅広いラインを擁するソナス・ファベールですが、Sonetto(ソネット)は、ホームシアターへの発展性を考慮していることが特長。今回はフロア型三機種の中から比較的小型のSonettoⅢを試聴しました。

  • Sonus faberの創設者、フランコ・セルブリン氏。「陸のヴェネツィア」と呼ばれる北イタリアの町ヴィチェンツィアで同社を設立しました。Sonus faberという社名はラテン語で「音の工房」という意味です。
  • 高級感のあるデザインはSonus faberスピーカーの魅力の一つ。木材や皮革、金属などの素材を用いて組み上げられる筐体は、一台一台職人の手作業によって丹念に製造されています。

オペラからポップスまで、歌声の表現が見事

歌声の表現は相変わらず見事。ジャズ(CD)は、ヴォーカルが大口にならず前方に突出せず、やや奥まった定位でオケを従えて優美にスウィングします。スレンダーな立ち姿が眼に浮かぶようです。オペラからポピュラーまで歌を聴きたい方に好適。ブラームス(CD)は、奥から届くピアノ弱音の美しさ、クレッシェンドしていく時のなめらかな高潮、木管の明るく質朴な響きにエレクタ・アマトールを初めて聴いた感動が甦りました。ビートルズ(LP)は、タイトに引き締まりギターのオブリガートにメタリックな切れ味があります。エリナー・リグビーの弦楽八重奏の倍音やふくらみに同社らしい艶やかさが隠せません。

センタースピーカーまで用意するSonetto。映画はどうでしょうか。「ウエスト・サイド・ストーリー」(BD)はセリフに聴き手を引き込む声の魅力があります。「東京物語」(BD)は、小レベルのSEを自然に音場に配置します。ナロウレンジで歪みを感じさせる劇伴を聴き辛くしない品格とデリカシーがあります。旧作映画に好相性のスピーカーかもしれません。

  • 65インチテレビの両脇に設置した様子。
  • スピーカーターミナルはバイワイヤリング、バナナプラグに対応。
  • Sonus faber「Sonetto III」の音質傾向

PIEGA「Ace50」

  • PIEGA
    Ace50
    シルバー:¥418,000(税込)/ペア
    アルマイトブラック:¥440,000(税込/受注発注)/ペア
    ホワイト:¥440,000(税込/受注発注)/ペア

PIEGA〜アルミ筐体とリボントゥイーターがシンボル、スイスを代表するブランド

スイスを代表するスピーカーメーカーがピエガ。豊富に産出するボーキサイトを使いアルミニウムの塊をプレスして成形されるエンクロージャーは高剛性、高精度が特長。振動によるエネルギーの損失、共鳴による音色の変化を封じています。リボントゥイーターの採用はピエガのもう一つの特長。軽量の振動板と強力な磁気回路が広帯域再生と高精度の点音源を実現します。現在のラインナップ中、スキニーなシルエットのライフスタイル寄りのシリーズが「Ace 50」。センタースピーカーやブックシェルフも用意されていて、ホームシアターへの発展性も考慮されていますが、アルミキャビネット、AMT-1リボントゥイーターといった、ピエガらしさが惜しみなく盛り込まれています。

  • PIEGA本社は、スイスのチューリッヒ湖のほとりに建てられています。1986年にレオ・グライナー氏とクルト・ショイヒ氏によって創設されました。
  • PIEGAのスピーカーを象徴する技術の一つであるリボンユニット。広帯域再生と高精度の点音源を実現するこのユニットは、職人が丁寧に時間をかけて組み上げています。

広い部屋におすすめ! 外向的な音作り

ジャズ(CD)は、ビッグバンドの構成楽器をそれぞれクローズアップ、金管が前面に出て、色彩感豊かに華麗に歌います。広くライブな音響の部屋でこの外向的な音色が開花しそうです。ヴォーカルも量感豊かにスウィング。低音表現の重視と設計上の工夫がうかがえます。ブラームス(CD)はピアノ独奏にきらめく透明感と硬質な美を発散。アルミ筐体の響きをうまく活かしている印象。オケの弦はきめ細やかな質感がすがすがしく、リボントゥイーターの解像力の高さを印象付けます。

アナログレコード再生はどうでしょうか。オールドロックより現代の優秀録音が得意なようで、「春の祭典」(LP)は、オケ木管、金管の鋭く野性的な音色、ティンパニの音圧と量感が鮮烈で、デッドな和室よりエアボリュームがあって適度に響きのある部屋が好相性。「ウエスト・サイド・ストーリー」(BD)は劇伴の低音が厚く豊かに鳴り、歌声に艶と色彩が乗り音楽を美麗に楽しく表現します。いい意味ではっきりと音作りのあるスピーカー。

  • 65インチテレビの両脇に設置した様子。
  • スピーカーターミナルはシングルワイヤリング、バナナプラグに対応。
  • PIEGA「Ace 50」の音質傾向

JBL「L100 Classic MKⅡ」

JBL〜米西海岸の巨人、1971年の傑作をリブート

「音楽を聴くための手段は美しくなければならない。」JBLの創立者ジェームス・バロウ・ランシングの言葉です。1971年登場のベストセラーL100 CenturyをリブートしたのがL100 Classic。その第二世代が本機です。三色展開のQuadrexフォームグリルをまとった外観はオリジナル通りですが、構成技術はまごうことなき21世紀のそれ。ミッドレンジとトゥイーターに周波数レスポンスが向上した新ユニットを採用。スピーカーターミナルはバイワイヤリング対応に変わりました。

  • JBLは劇場用のみならず、プロ用モニタースピーカーの領域でも活躍しました。プロ用モニタースピーカーのクオリティを持つ家庭用スピーカーシステムとして設計されたモデルがL100 Centuryでした。
  • ブラック、オレンジ、ダークブルーの三色展開のQuadrexフォームグリルは、初代L100 Centuryを踏襲した仕様です。

劇場育ちスピーカー、クラシックと映画で本領を発揮

大口径ウーファーの威力はいうまでもありません。ベースの音圧が2倍になったくらいに鳴り、ドラムスが太いビートを着実に刻みます。トランペットソロは明るくのびのびと開放的に歌い、ボーカルもバックから二歩前に進み出て気合い一杯に歌います。

JBLで聴くクラシックは素敵です。オケ低弦楽器の深く厚い響き、独奏ピアノの明快な音の輪郭、演奏を目の当たりにする実在感が魅力。演奏が他より近く音場の奥行きは物足りなくとも、クレッシェンドの雄大さは他に勝ります。ビートルズ(LP)は、ギターソロがぐっと前に出て火傷しそうなエッジの聴いたソロを聴かせます。ロックンロールで欠かせない音の重量感があり、音が籠らず衒いなく前に出ます。アナログレコード再生という点で時代を超越した定番スピーカー。

そして映画です。「ウエスト・サイド・ストーリー」(BD)はセリフが画面の俳優の口元に貼り付かずびゅんびゅん飛んできます。デュエットシーンで二人の声が際立ちくっきりした対比が生まれます。「影武者」は、録音の微細なノイズまで耳に付かせる解像度。セリフも演技なのです。力の込め方、緩急、高低変化が鮮明に耳に届き、劇場で芝居を目視しているかのようです。劇場育ちの「伝えるスピーカー」の本領がここに。

  • 65インチテレビの両脇に設置した様子。
  • スピーカーターミナルはバイワイヤリング、バナナプラグに対応。
  • JBL「L100 Classic MKII」の音質傾向

KLIPSCH「Heresy Ⅳ」

  • KLIPSCH
    Heresy IV
    ¥638,000(税込)/ペア

KLIPSCH〜全米映画館でシェアNo.1を誇る、米中部の雄

1946年にポール・クリプシュが米アーカンソー州に創業。現在はインディアナポリスに本拠を構える米中部の雄。爽快な音質のホーンスピーカーが熱烈な支持者を生みました。1980年代にハードロックカフェに採用されてから業務用への進出が加速、劇場(映画館)用スピーカーの分野で現在全米第一位。日本でも多くのシネコンがクリプシュを採用しています。アーカンソーの自社工場で作られる、ミッドセンチュリー家具調のウッドキャビネットをまとったHERITAGEシリーズの下位がHeresy Ⅳ。30cmウーファー、トゥイーターとミッドレンジにはコンプレッションドライバー+ホーンを使用します。

  • 創設者のポール・クリプシュ氏。彼が1946年に設計したホーンスピーカー「Klipschhorn」(クリプシュホーン)は、オーディオ・ファンの間で広く知られる名機になりました。
  • Heresy IVを擁するHERITAGEシリーズはアーカンソー州ホープにある自社工場で製作。クリプシュ氏の情熱を受け継いだ熟練の職人によって、厳選された素材を使用して組み上げられています

からりと明るい痛快な音色、レコードとの相性◎

痛快な音色のスピーカーです。からりと明るい湿り気のない音質で、衒いなく音が前に出ます。ジャズ(CD)はステージかぶりつきで聴いているかのよう。エンクロージャーが箱鳴りを活かした昔風の作りなので、声にライブ会場のような響きが付いて劇場体験。どっしりビートを刻むベースとドラムス、ブラスのくぐもった艶も生々しい。もちろんレコードと好相性。ビートルズ(LP)は、シンバルの散乱と持続に溜飲が下がり、ポールのベースが野太くえげつなく上下します。一方中高域にエネルギーが密集してやや煩く感じられることもあります。

傾斜した純正のスタンドにセットすると低域は自然と厚くなり、ポップス(LP)のドラムロールがスピーカー背後まで転がり、ナロウレンジですが濃い音楽を聴かせます。「春の祭典」(LP)のティンパニに試聴室の空気を震わせるパワーがあります。演奏が高潮していってもへたれないリニアなダイナミックレンジは見事、細かい情報の表出は後回しでも描き出す世界の大きさ、濃さを楽しむスピーカー。

  • 65インチテレビの両脇に設置した様子。
  • スピーカーターミナルはバイワイヤリング、バナナプラグに対応。
  • KLIPSCH「Heresy IV」の音質傾向

ECLIPSE「TD510ZMK2」

  • ECLIPSE
    TD510ZMK2
    ¥550,000(税込)/ペア

ECLIPSE〜日本発。世界で賞賛されるタイムドメインスピーカー

タイムドメイン理論に立脚し、周波数特性重視からインパルス応答重視にパラダイムシフト、世界的な評価を得た日本発のユニークなスピーカーです。タイムアライメントと時間軸特性に注目したスピーカーは過去にもありましたが、これほど徹底した例はありません。内部定在波が発生しない卵型のエンクロージャーにオリジナルのフルレンジユニットを搭載。位相回転が原理的に発生しません。色付きを排した原音への忠実度が注目されて、音楽のプロの間で絶大な支持を集めています。シリーズ上位の「TD510ZMK2」は最新の技術が盛り込まれ、スタンド一体化構造を採用。イクリプスの理想へまた一歩近づきました。

  • 卵形の筐体は、剛性が高く、同一半径面が存在しないため、内部定在波や回析効果を抑制でき、音の波形をより正確に再生できるといいます。
  • ECLIPSEのスピーカーは世界の名だたるミュージシャンやレコーディングエンジニアに愛用されています。数々のグラミー賞作品も手掛けたレコーディングエンジニア、ジム・アンダーソン氏もその一人。

実は映画にピッタリ!”ありのまま”を伝えるスピーカー

10cm口径フルレンジのコンパクトスピーカーにしてベースの低音の脈動に驚きます。倍音主体に聴いているのですが、音程が正確に聴き取れます。フルレンジの強みは明らかで、ボーカルのまっすぐな歌声に人間らしさがあります。ブラームス(CD)の導入部の弦楽の自然で質朴な質感に引き込まれます。収録会場の奥行きと空気を伝えます。スピーカー内部のノイズが存在しないので音にまとわりつく妨害要素がなく、弱音が美しくひたひたと水音のように寄せてきます。「春の祭典」(LP)は、帯域とDレンジの制約で生々しい臨場感とまではいきませんが、フラットレスポンスと色付きのない音質が、演奏のありのままを眺望しているリアリズム。演奏会場を再現するのでなく、演奏会場へ連れて行かれる魔法の扉のようなスピーカー。

イクリプスは、実は映画向きのスピーカーでもあります。「ウエスト・サイド・ストーリー」(BD)の劇伴の自然で清々しい響き、マリアの絹糸を引くような細く可憐な歌声、無音部分の静寂の美しさ…作為強調のない本機にはありのままの映画の声があります。中級者向きのプレイバックリファレンス、シンプルイズビューティフルの極致。

  • 65インチテレビの両脇に設置した様子。
  • スピーカーターミナルはシングルワイヤリング、バナナプラグに対応。
  • ECLIPSE「TD510ZMK2」の音質傾向

GALLO ACOUSTICS「MICRO」

  • GALLO ACOUSTICS
    MICRO
    ¥79,200(税込)/ペア
    ¥94,600(税込)/ペア
    カラーによってどちらか
    ※スタンド別売

GALLO ACOUSTICS〜設置性に優れた、コンパクトな球体スピーカー

アンソニー・ギャロが製作した初期のスピーカーはマルチユニットの大型システムでした。トレードマークのコンパクトな球体スピーカーは、2001年のブレークスルーで生まれた音質追求の帰結です。全製品に採用される看板技術が「S2テクノロジー」。低域周波数特性を2オクターブ下げ、もっと大きな容積のスピーカーと同等の効果を生み出します。3インチドライバー搭載のベーシックがMICRO。床置きスタンド、壁に掛けたり天井に取付けたり、設置の柔軟性が魅力です。

  • アンソニー・ギャロ氏が初期に設計したスピーカーは、1本130kgもある、かなり大型のものでした。その後、写真にあるような独特のデザインのスピーカー「Reference 3」を製作。オーディオ・ファンの注目を集めました。
  • 2001年に手頃な価格で超コンパクトなスピーカーを製造しはじめてから20年、GALLO ACOUSTICSは球型スピーカーの代名詞となっており、四角いスピーカーは作っていません。

点音源で真っ直ぐ音を飛ばす、軽快な音場感が魅力

球体ですが、音が拡散せず、真っ直ぐ飛んできます。点音源を宙空に置くことで生まれる、重厚長大の対極の束縛のない軽快な音場感が魅力です。ジャズ(CD)は、ボーカルがセンターにぴたり定位、力強く前に出て虚空で伸び伸びと歌います。トランペットソロも明るく元気で痛快。ドラムのタイトなスティック捌きが小気味よく、サイズを疑わせる表現力があります。率直な音質で直線的に前に飛んでくるので、音圧を上げなくても小音量で音楽を受け止めやすいことも特長。生活シーンへの溶け込みやすさは、パッケージだけでないのです。一方小径フルレンジの限界はあり「春の祭典」(LP)のような音色表現主体の音楽は、一定の帯域に楽音が密集してワンパターンな再生になるきらいがあり、好みが分かれるところかもしれません。

今回65インチ有機ELテレビと組み合わせましたが、音源の高さが画面縦中央に一致、持ち前の定位のよさで、音声と映像が理想的に一致。点音源のよさでセリフがシャープに定位、聴き手に真っ直ぐ飛んできます。ミュージックシーンは帯域的にも問題なく、明るく力強い歌声が楽しめます。サウンドバーで味わえない、活き活きとした自由闊達さや臨場感は魅力。低音がほしければ、別売のサブウーファーを追加する手があります。

  • 65インチテレビの両脇に設置した様子。
  • スピーカーターミナルはシングルワイヤリング、バナナプラグに対応。スタンドは中が空洞で、ケーブルを通すことができます。
  • GALLO ACOUSTICS「MICRO」の音質傾向

映画再生はどれも一流! 選び方のカギは音楽ソースにあり

独自のコンセプトとデザインの個性を競う後半の6機種。個性派のフロントスピーカーは、何を基準に選べばよいのでしょうか。一つは、何を中心に聴くのか、という音楽ソースとのマッチング。JBLとクリプシュは、アナログレコード再生で、水を得た魚のように躍動します。一方、イクリプスは現代のデジタル優秀録音で、持ち前のフォーカス感が冴えます。ソナス・ファベールやピエガは音色主体の音楽で本領を発揮します。このように、正直、得手不得手があります。しかし、そうした個性の多様さがスピーカーの奥深さなのです。

今回の収穫は、ホームシアターにお薦めできるアイテムとして、どのスピーカーも映画の音の世界を味わわせることでは、どれも一歩も譲らなかったことです。映画音響の圧倒的中心はセリフ。スピーカーの原点が人の声を伝えることです。個性派ぞろいといっても一流のスピーカーだけあってその点ぬかりがありません。

ホームシアターのスピーカーというと、サラウンドへの発展性やセッティングのしやすさが欠かせないように思われますが、もっと重要なことは、音色やデザインが好みにぴたりマッチし、生活の善き伴侶となることです。センタースピーカーやサラウンドがなくても映画は楽しめるのです。ウィスキーのCFではありませんが、「ずっと愛して、長く愛して」そんなスピーカー選びの一助になれば幸いです。

SPEC

Sonus faber「Sonetto Ⅲ」

●価格:¥660,000(税込)/ペア ●型式:3ウェイバスレフ型 ●ユニット構成:(29mmアローポイント DADシルク・ソフトドームトゥイーター×1、150mmナチュラルファイバー・ダイアフラム・コーンミッドレンジ×1、150mmアルミニウム・ダイアフラム・コーンウーファー×2 ●再生周波数帯域:42Hz~25,000Hz ●クロスオーバー周波数:220Hz/3,250Hz ●感度:89dB ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法:H1010mm×W290mm×D316mm ●質量:18kg

PIEGA「Ace 50」

●価格:シルバー・¥418,000(税込)/ペア、アルマイトブラック、ホワイト・¥440,000(税込/受注発注)/ペア ●型式:3ウェイバスレフ型 ●ユニット構成:AMT-1 リボントゥイーター×1、120mmMDSウーファー×1、120mmMDS-Bウーファー×2 ●再生周波数帯域:45Hz〜40,000Hz ●クロスオーバー周波数:200Hz/4,000Hz ●感度:90dB ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法:H1,040mm×W140mm×D160mm ●質量:12kg

JBL「L100 Classic MkII」

※スタンド別売
●価格:本体・¥704,000(税込)/ペア ●型式:3ウェイバスレフ型 ●ユニット構成:25mmピュアチタン・ドームトゥイーター×1、125mmポリマーコーティング・ピュアパルプコーンミッドレンジ×1、300mmピュアパルプコーンウーファー×1 ●再生周波数帯域:40Hz~40,000Hz ●クロスオーバー周波数:450Hz/3,500kHz ●感度:90dB ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法H643mm×W390mm×D365mm(グリル含む) ●質量:28.6kg(グリル含む)

KLIPSCH「Heresy Ⅳ」

●価格:¥638,000(税込)/ペア ●型式:3ウェイバスレフ型 ●ユニット構成:トゥイーター(25.4mmチタンダイアフラムコンプレッションドライバー)×1、ミドルレンジ(44.5mm ポリイミド振動板コンプレッションドライバー)×1、ウーファー(304.8mm 繊維複合材料コーンウーファー)×1 ●再生周波数帯域:48Hz〜20,000Hz ●クロスオーバー周波数:850Hz/4,500Hz ●感度:99dB ●インピーダンス:8Ω ●外形寸法:H630mm×W394mm×D337mm ●質量:23.1kg

ECLIPSE「TD510ZMK2」

●価格:¥550,000(税込)/ペア ●型式:フルレンジバスレフ型 ●ユニット構成:100mmグラスファイバー製コーン型フルレンジ×1 ●再生周波数帯域:42Hz~22,000Hz ●クロスオーバー周波数:なし ●感度:84dB ●インピーダンス:6Ω ●外形寸法:H978mm×W384mm×D393mm(スタンド含む) ●質量:約19.5kg

GALLO Acoustics「MICRO」

※スタンド別売
●価格:¥79,200(税込)/ペア、¥94,600(税込)/ペア(カラーによってどちらか) ●型式:フルレンジ密閉型 ●ユニット構成:3インチMicalポリプロピレン・コンパウンドコーンフルレンジ×1 ●再生周波数帯域:100Hz〜18,000Hz ●クロスオーバー周波数:なし ●感度:89dB ●インピーダンス:8Ω
●H101.5mm×W101.5mm×D109.5mm(本体のみ)、183φ×H920mm(専用スタンド) ●質量:795g(本体のみ)

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