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レビュー

  • EPSON「EH-LS650」/「EH-LS800」 エプソン「EH-LS650」は先輩LS800とくらべてお得? 自宅リビングでチェックしてみた 超短焦点プロジェクターの大本命2機種を比較

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2024年4月8日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

投写面の数十センチ手前に置いても、テレビでは実現困難な大画面を実現できる超短焦点プロジェクター。当連載でもその革命的意義を紹介させてもらいましたが、その後23年10月にはエプソンから「EH-LS650」が発売されました。拙宅では22年10月に発売された「EH-LS800」をリビングで使っていますが、このたびエプソンよりEH-LS650をお借りして比較してみました。

  • 4K超短焦点プロジェクター
    EPSON
    EH-LS800B/W
  • 4K超短焦点プロジェクター
    EPSON
    EH-LS650

超短焦点プロジェクターをリビングで使うメリットとは?

検証1 仕様比較・10万円ほどの価格差

価格はいずれもオープンですが、エプソンダイレクト価格でEH-LS800が383,500円(税込、2月時点特価表示。発売時451,000円)、EH-LS650が313,500円(税込、2月時点。発売時330,000円)。縮まってきたとはいえ、なお10万円程の価格差があります。

  • EH-LS650の背面にある接続端子。HDMI ARCのほか、光デジタル出力も活用してサウンドを充実させたいところ
  • リモコンはGoogleアシスタントによるレタリングの違いのみ。左がEH-LS800、右がEH-LS650

色はホワイトとブラックの2色展開で変わらず。ただし、サイズや重さは結構異なり、部屋に置いたときの存在感もずいぶん違います。EH-LS800は横長に大きくW695×D341mmで、重さも12.3kgあります。EH-LS650は真四角に近づきW467×D400mmと従来のプロジェクター然としています。重量も7.4kgと片手で抱えられるほどのサイズと軽さです。

  • 上がEH-LS800、下がEH-LS650

大きな違いの原因はEH-LS800が極端に投写距離を短くするためにプリズム型のレンズブロックを採用しているのに対して、EH-LS650が魚眼レンズを採用しているあたりにありそう。20年ほど前の「アナモフィックレンズ」にもこのような2つの流儀がありました。

  • EH-LS800の投写窓
  • EH-LS650の投写窓

検証2 設置性・サイズと焦点距離の違い

投写面に至近で置けるのは、プリズムレンズのEH-LS800。比べるとEH-LS650は案外距離が必要です。その差は100インチ、120インチと投写サイズを大きくするにつれて広がるので、EH-LS650を床置きする場合には足元が邪魔になるかもしれません。

  • EH-LS800では「本体端」と投写面の距離が16:9の80インチで約2.3センチ、100インチで9.8センチ、120インチでも17.3センチ。一方EH-LS650では、80インチで約15センチ、100インチで27.4センチ、120インチで40.2センチが必要になります。本体をラック等に載せるなら、棚の奥行きはこれにプラス40センチ必要になります

投写距離を取ることは悪いことばかりではありません。若干ですが投写面に歪みがあっても目立ちにくくなるからです。もっとも、いずれのモデルにも、スマホで撮影した画像を送れば歪みを自動補正してくれる機能「Epson Setting Assistant」がついていますので、実使用上はあまり問題にならないでしょう。

  • 「Epson Setting Assistant」は本当に優れもので、もっと知られていい機能。1分ほどですぐに歪み補正ができ、画質劣化も気になりません

検証3 画質・1年を経て新機能が盛り込まれた

基本的な画づくりは大きな違いは感じませんでした。どちらも「シネマ」の初期設定で何ら不満のない仕上がり。動画として見るかぎり「4Kはネイティブじゃなきゃ」とこだわることもないと思います。

HDR10に対応したソフトを観ていくと、超短焦点にもかかわらず、中心と端部で明るさの違いはさほど感じられず、ユニフォーミティ(画面全体の均一性)は良好。ただしEH-LS800に比べると、魚眼レンズだからか周辺部はややピントが甘いようにも見受けられます。

  • 視聴時の画質設定

明部もしっかり表現できており、夜景も夜景らしく漆黒の中に高層ビルの細かい窓から漏れる照明が破綻することなく描かれます。マクロ映像でも、Eシフトだからといった弱点は感じないほど細密です。クロマエラーも見受けられませんし、ジャギー(斜めの直線がギザギザに見える現象)もごくわずか。

ただし、後発のEH-LS650にはEH-LS800にはなかった画質項目「ダイナミックトーンマッピング」が追加されていました。かつてランプ光源のとき、黒浮きを抑えるためにアイリスを自動的に絞る機能がありましたが、レーザー光源の本機で同様のことを実現しているのでしょう。

もっとも、明暗の切り替えが激しいシーンでは、本来明暗のトーンが一定に維持されなければならないのにちょっと迷い、グラデーション部分が1秒ほどかけてスーッと変化することも。気になる場面ではこれをオフにして「HDR」のパラメーターを固定するとよいと思います。

  • HDRの固定パラメータは16まで

組み合わせたスクリーンは、キクチ科学「SPB-UT120」。据え置き型超短焦点プロジェクター専用の耐外光スクリーンの120インチ(16:9)で、比較的明るい部屋でもテレビのように明るい大画面を楽しめます。薄型フレームになりさらにスタイリッシュになりました。

  • 超短焦点プロジェクター用スクリーン
    キクチ科学研究所
    SPB-UT

個人的には、価格とサイズではEH-LS650、設置性と画質ではなおEH-LS800に一日の長があると感じました。実売価格が下がっているいま、EH-LS800がむしろチャンスかも!?