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  • キクチ科学研究所「SPB-UT」 超短焦点プロジェクター×耐外光スクリーンをリビングに! テレビ代わりの多目的シアター 人・時間・シーンに応じて使い分けられるリビングシアター

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2023年11月8日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

リビングシアターのあり方とは

スマートフォン、タブレットをひとり一台持つようになり、見聴きするソースはストリーミングという、パーソナルAVの時代になりました。それでもリビングで大画面を楽しむ意味はどこにあるのでしょう?

「ホームシアター」の発祥は、ハリウッド俳優が映写技師を自宅に呼んでおこなうホームパーティーだったといわれています。

これを現代に置き換えれば、飲食を共にしながら互いに好きなコンテンツを“共有”し合うことでしょう。「スマホで見つけたコレ、おもしろいからみんなで観てみよう!」という“お茶の間感覚”は「リビングシアター」のあり方そのものの気がします。

そこで思い出されるのは、「ななつ星in九州」など豪華観光列車を生み出したことで有名な工業デザイナー・水戸岡鋭治さんとお話ししたとき飛び出した「専用とは省略である」という言葉。ひとつの目的にしか使えないのは作り手に工夫が足りないんだ、という趣旨でした。その意味で、日常的な生活空間でありながら、共にする人や時間といったシーンに応じて使い方を変えてゆける「リビングシアター」は、そういった観点からは価値が高いと考えられます。

  • クルーズトレイン「ななつ星in九州」7号車のDXスイート701号室と1号車のラウンジカー金星の展望窓前にはスクリーンが降りて「シアター」になる仕組みがあります。映画を観るだけでなく、旅の最後にはスタッフが撮影していた道中の映像を上映し乗客全員が思い出を共有するそうです。

シーンに応じてON/OFFを明確に

超短焦点プロジェクターがまだ教室・オフィス用としてしか普及していなかった頃から、個人的には「ONとOFFを明確にできるホームシアター」のひとつのカタチとしてリビングシアターに活用できないか考えていました。北海道に取材に行く度に、当時ホームシアターインストーラーだったDEPT SAPPOROの佐々木剛さんや、匠龍木工社の松山勝仁さんと、プロジェクター、スクリーン、スピーカーなどAV機器一式を内蔵できるAVボードができないか模索していたものです。

  • 壁掛けテレビの前に置き、立ち上げスクリーンから3.1chスピーカーやAV機器まで全て収納できるAVボード「Jessica Neo」のラフスケッチ(2015、(C)匠龍木工社)。名前は佐々木さんの好きだったK-POPアイドルから取られました。

当時すでに有機ELパネルも登場していましたので、早晩テレビは巻き上げ式ないし立ち上げ式になるが、それまでの間、マンションなどに簡単にインストールできる商材を、と考えたものです。が、いまだに“巻物テレビ”は普及していません。

ようやくいま「超短焦点プロジェクター(Ultra Short Throw)」と「耐外光スクリーン(ALR/Ambient Light Rejection)」の登場によって、「ONとOFFを明確にできるホームシアター」の世界観が現実味を帯びてきました。

テレビ代わりにリビングと書斎へ導入!

拙宅では、ブラウン管テレビがいよいよ故障してからというもの、実はフラットテレビを使ったことがありません。書斎ではスチュワートのスクリーンとソニーのプロジェクター、リビングでも出窓に吊ったニチベイのシアター用ロールスクリーンに明るいエプソンのプロジェクターを投写するという組み合わせで長らく稼働してきました。

そして超短焦点プロジェクターが登場してからは、書斎はキクチ科学の耐外光スクリーンとLGの超短焦点プロジェクターに変更、リビングは歪み補正に優れるエプソンの超短焦点プロジェクターに入れ換えました。

  • 書斎はキクチ科学研究所の超短焦点プロジェクター専用耐外光スクリーン「SPB-UT120」とLG ELECTRONICSの超短焦点プロジェクター「HU-85LS」の組み合わせ
  • リビングではニチベイのシアター用ロールスクリーン「ソフィー」にエプソンの超短焦点プロジェクター「EH-LS800

超短焦点のメリットは間取り以外にも

「超短焦点プロジェクター」×「耐外光スクリーン」の組み合わせがいいのは、第一に、投写距離を取らなくてもいいため、部屋を横長に使えることです。生活空間として考えても、テレビの置き換えと同じようなイメージで家具の配置を考えることができます。

第二に、音もよくなること。同じ寸法比でも「横長配置は音がいい」と音響学者の石井伸一郎さんがおっしゃるとおり、拙宅でも実践してみて明らかに自然になりました。

そして「耐外光スクリーン」は文字通り照明などの影響を受けにくいので、生活空間として求められる多様なシーンチェンジの影響を受けにくいというメリットがあります。もちろんテレビでも画面に外光が反射して見づらいような場所に置くのは避けるべきですが、大画面テレビと遜色ない映像を得ることも可能です。

  • 超短焦点プロジェクター用スクリーン
    キクチ科学研究所
    SPB-UT
    120インチ16対9の場合、¥407,000(税込)
  • 「SPB-UT」は薄型15mmベゼルを採用。リビングにあっても圧迫感を与えにくい、スタイリッシュな見た目です

折しもエプソンが新しい超短焦点プロジェクター「EH-LS650」を発売しました。昨年発売された「EH-LS800」より投写距離を要する点に注意が必要ですが、価格は3分の2。テレビの置き換えとして80インチオーバーを考えている方は、ぜひ検討して欲しいと思います。

  • 4K超短焦点プロジェクター
    EPSON
    EH-LS650
    ¥OPEN(直販サイト価格¥330,000/税込)

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