VGP phileweb

ガイド

  • 鴻池賢三のホームシアターTips 「タダ」でできる調音テクニック〈遮音編〉音の漏出と侵入を対策しよう 遮音性を高めてシアターの自由度をアップ

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2024年4月10日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

本連載では、ホームシアターのサウンド体験向上を目標に、一般的なご家庭でも取り組みやすく、さらに「なるべくダダ」でできるアイデアを中心にご紹介しています。遮音は「よいホームシアター」の基本。この機会に「遮音」に注目し、対策にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

実技編1「音の反響対策」はこちらから

シアターお悩みあるある「音漏れ」

今回は遮音編。遮音性が高く外への音漏れが少ないと、同居する家族や隣人に迷惑を掛ける心配が少なくなり、心置きなく映画や音楽に没入できるはずです。さらに遮音が完璧になれば、深夜も含めいつでも好きな時間帯に、好きな音量で楽しむことができ、自由度が増します。

逆に外から内、たとえば、同居家族の生活騒音や近隣交通からの騒音が遮断できると、ホームシアター内では微小な音も聞き取りやすくなり、コンテンツの体験レベルがアップします。

音の伝わり方によって対応も異なる

遮音したい騒音も「音」。騒音の原因や仕組みを知ると、効率的に遮音効果を高めることができます。まずは基本のおさらい。音の伝わり方には「空気伝搬音」と「固体伝搬音」があり、異なる性質を持っています。この点に留意するだけでも一歩前進です。

「空気伝搬音」は、文字通り空気を伝わって届く音で、言い換えれば空気を遮断するだけで音も小さくなります。たとえば自宅の近隣に道路がある場合、エンジンの音、タイヤや道路を摩擦する音、クラクションの音などが騒音といえます。これらの音は、窓を閉めれば聞こえ方が小さくなることをご想像いただけるでしょう。

つまり窓やドアを閉める、通気口を塞ぐといった心がけだけでも、遮音効果を得られるのです。また、賃貸住宅で住み替えが可能であれば、道路から遠く静かな地域を選ぶ、木造よりも遮音性の高いコンクリート造で、ペアガラスや二重サッシが装備された物件を選ぶ、道路から距離が取れる高層階を選ぶ、といったことも対策といえます。

  • 空気伝搬音は「密閉」で遮音

「固体伝搬音」は、音が地面や建物の構造(床・壁・天井・柱・配管)といった固体を揺らし、再び音に変わることで聞こえる音です。空気伝搬音よりも遠くに届き、そのため原因が究明できず、対策も難しい傾向があります。

ホームシアターで注意すべきは「サブウーファー」。サブウーファーから放出された重低音が壁を振動させたり、筐体の振動が床に伝わり、それが固体伝搬音となって思わぬ遠くへ届くことがあります。マンションなどの集合住宅では、隣家より遠く離れたお宅に音が届いてしまうケースは多々報告があり、気を付けたいものです。

  • 固体伝搬音の対策はシアタールームの場所、そしてお家全体の間取りによってケース・バイ・ケースですが、なるべくなら床からの伝搬の影響を受けにくい1階(最下階)にシアタールームをつくるのがベター

空気伝搬音に“なるべくタダ”で対策

重複しますが、空気伝搬音は「密閉」で遮音が可能です。また、音は距離が遠くなると減衰して小さくなるので、距離を取るのも有効な対策です。シアタールームと静けさが必要な寝室や勉強部屋の配置をなるべく離すのは、タダでできる遮音対策といえます。間取りに余裕があったり、新築を計画中ならぜひご参考にしてください。

また、部屋が廊下を挟んで向かい同士になる間取りなら、音漏れが起こりやすいドアの位置をズラして、空気伝搬経路を長くするのも有効なアイデアです。少し費用を掛けられるなら、窓にフタをするように取り付ける「防音ボード」のような製品にもご注目を。窓などの開口部の遮音性を高めるなら、密閉性と遮音性に優れた内窓の追加も有効です。

  • ピアリビング
    窓用ワンタッチ防音ボード
    窓用ワンタッチ防音ボードは工事不要なので賃貸住宅でも簡単に遮音対策ができます。窓のサイズに合わせたオーダーメイドにも対応
  • AGC旭硝子
    まどまど
    まどまどは耐久性と気密性に優れ、インテリア性も追求したアルミと樹脂の複合断熱構造サッシ。既存窓はそのままで内側にもう一つ高機能な内窓を取り付けられます

固体伝搬音はケース・バイ・ケース

固体伝搬の騒音を遮断するのは非常に難しく、タダでできるアイデアもかぎられますが、配置の工夫でいくらか軽減できる可能性はあります。

たとえば戸建て住宅なら、ホームシアターは1階が有利です。2階の床に設置したサブウーファーの振動は階下に伝わりやすいですが、その逆は少ないものです。集合住宅の場合も、賃貸などで部屋が選べる状態であれば、階下に人が居ない物件はねらい目です。ただし先述の通り、固体伝搬音は想像もしない遠くにまで届く可能性があり、節度ある音量、時間の長さ、時間帯を充分に配慮したいものです。

ほか、テレビやスピーカーを壁掛けする際は、隣家との間の壁は避けるのがベター。それほど大きくない音量でも、固体伝搬が生じると、音が空気伝搬よりもたやすくお隣に伝わってしまうためです。

もっとも大切なのは、騒音の原因や仕組みを「知っていること」。心配していたより音漏れしていない、また想定より音漏れしたため後から対策した、なんて話は“ホームシアターあるある”です。自分に合った効果的な方法を模索することで、よりよいホームシアターライフを手に入れましょう。

調音テクニック〈吸音編〉を読む!

調音テクニック〈拡散編〉を読む!