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  • 人気国産パーソナルチェアの製造に密着!カリモク家具「THE FIRST」はこうして生まれる 手間暇かけて造るから、長く愛される家具に

    取材・執筆 / 遠藤義人
    2024年5月15日更新

    • ホームシアター・コンシェルジュ
      遠藤義人

独自の“座り心地研究”の集大成として2012年に発売され、出荷台数10万台を突破したカリモク家具のパーソナルチェア「THE FIRST(ザ・ファースト)」。前回のショールーム訪問に続き、今回は愛知県東浦町でソファやチェアを中心に製造している、東浦カリモクに潜入しました。

カリモク家具「THE FIRST」についてくわしく知りたい

  • 全6サイズをラインアップするカリモク家具「THE FIRST」。発売当初より、いまだにベストセラーなのが「RU72」(Sサイズ¥257,400円税込~/オットマン別売)
  • 東浦カリモク外観(公式HPより引用)

木工・大型機械を使いつつ仕上げは人の手で

東浦カリモクは、1979年4月設立。180名の社員が働いており、ソファ(木肘椅子)・機能椅子を生産する木工工場です。

腕の立つ職人が手がけた製品の展示される食堂を抜けた裏側に、巨大で綺麗な工場棟が現れます。大きなダクトは集塵用で、集めた木くずを燃料にするなどして再利用するそうです。

まずご案内いただいたのは、アームや脚部等の加工工程。15台ほどあるNCルーターで加工したものを、職人がひとつひとつサンドペーパーがけします。どの工程も同様ですが、できるだけ機械にやってもらい、重要なところを人の手で丁寧に仕上げていきます。

  • まずNCルーターで加工。ちなみにNCルーターとは、木材、樹脂等の素材を切断、彫刻、段付き加工する加工機のこと
  • 続いて職人の手で、目の粗いサンドペーパーから細かいペーパーに変えながら、徐々に仕上げていきます。投光器で曲線が上手く出ているかも確認
  • 積層した板をプレス機で湾曲に仕上げているところ

「機械にできるところはなるべく任せる」のは、生産効率を上げることでユーザーに安く提供するためでもありますが、実はそれ以上に、作業する社員をケガから守ることも大きな理由です。これにより、従来は危険なため入れなかった現場に女性も入れるようになり、活躍の場が広がったのです。

  • 専用台座も注文に応じてサイズ別、塗装色別に製造しています
  • 大型NCルーター
  • 強度を補強するためのこんな小さな部材づくりでも、工作に危険がともなう場合は、躊躇なくこういった別注の大型工作機械を導入。職人の身の安全を図る施策の好例です

研磨・ロボットアームが交換をおねだり

さきほども少し出てきましたが、改めて研磨の工程を見ていきましょう。ロボットアームが、台座をロクロのように回しながら部材を研磨しています。

第1段階の粗取りのあと、ロボットが勝手に徐々に目の細かいペーパーに持ち替え、アラを取っていきます。ちなみに、サンドペーパーが交換時期になると自動的に察知し、ロボットアームが手のひらを返し、人に向けて「交換してくれ」と頼むそうです。なんだか可愛いですね。

  • かわいいロボットアーム

研磨の工程は、女性が8割を担っているとのこと。こういった繊細な作業は、女性の方が得意だといいます。

  • オットマンの加工と研磨の工程でも女性が活躍
  • 研磨見本。塗装をムラなく均一に載せるためにも、研磨は大切です。カリモク家具では、塗膜を何層も重ねて艶を出しつつ、木目が綺麗に出る塗装を心がけているそう。そのため、淡色用と濃色用でも研磨の具合を変えています

組み立ては迅速かつ正確に!

組み立ても案外女性の姿が多い印象です。個人ごとに作業工程表が与えられ、目標の時間内に短時間で仕上げられるようになると、評価が上がるそうです。

  • ひとつの製品を責任持ってひとりで組み上げます
  • 右の数字がカウントダウン秒数。スキル評価に繋がるそう
  • 最強の接着剤エポキシの調合・攪拌工程。すぐ固まってしまうので、都度作り直さないといけません。適宜テストし、強度が保たれているかを確認

塗装は半日掛けてリフトでブラブラ

木工の部材が組み上がると、次はリフトにぶら下げて、塗装のルートを周回します。このリフトは一周1500mにも及び、朝イチに出発したものが夕方になってようやく戻ってきます。

  • 順番待ちする家具たち
  • 塗装ルート

最初に全体の60%を塗装。続いて下塗り、中塗りを経て、最後に上塗りなど工程を重ね、計5回塗装します。またその間に、2度の研磨を挟むのだそう。

塗膜を重ねた方がもちろん耐久性も向上します。とはいえ、木目も美しく出すのがカリモク家具のポリシーです。美しい木目を出すには技量が必要で、手間暇をかけずにはなしえないのです。

  • 5回の塗装を経ることで、耐久性を向上させています

張り工程&最終組立・10万台出荷の経験が生きる

ここはシートのファブリック部分を造る工程です。張り地の中にウレタンなどの中綿を入れていきます。同じ製品でも、シワなくピッタリ綺麗に張るには、技量がものをいうそうです。

  • 縫製部品に綿をタイトに入れていくのは力仕事

すべてのパーツが揃うと、ここで「ザ・ファースト」が一気に組み上げられます。これも基本的には1台1台の手作業です。

  • 1台ずつ手作業で組み上げます

かつてはベテランでも1台を組み立てるのに3時間かかったそうですが、いまは治具などの発達もあり、22〜23分で組み上げることができるそうです。

  • 金具を装着し、ワイヤーでつり上げて台座にマウントします
  • 革同士が擦れる音などが出ないか「異音検査室」でチェック。合格すると出荷へ

メンテナンス・家具は世代を超えて思い出を紡ぐ

最後にサービス体制について触れておきます。簡単な修理であれば全国の営業所などで対応できますが、工場でなければ対応できないものはこうして本社に回ってきます。

  • 修理や交換が必要な家具たち

チェアやソファなどは張り地が傷むことが多く、とっくに廃版になっているものも。修理を待つもののなかには、「ザ・ファースト」が登場する前のパーソナルチェア「Rポジション」の姿もありました。

  • 現在は廃盤となった「Rポジション」

もちろん、新しい「ザ・ファースト」の方が優れているので買い換えをオススメしたいところですし、製品によっては買い替えた方が安上がりのものもあります。

しかし、家具には家で過ごした色々な思い出が詰まっているもの。オーディオ機器も同じですが、手間暇かけて造られたイイものを、長く使いたいですね。

  • 傷はあえて残してください、という注文もあるそう

創業80年を越える国内最大規模の家具メーカー

カリモク家具は、加藤正平が愛知県刈谷市に1940年に設立した木工所に始まり、1960年代には自社ブランドとして家具を製造。扱う商品は10ブランド、45万品番、年商230億円にも及びます。近年は国産の小径木を使った環境型ビジネスも積極的に推進しています。

お問い合わせ先

カリモク家具株式会社
0562-83-1111(代)

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