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  • 鴻池賢三のホームシアターTips テレビの画質機能を使って映像体験アップに挑戦! いますぐ試したくなるかんたんカスタム 「色温度」調整でリアリティをアップ

    取材・執筆 / 鴻池賢三
    2024年5月22日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

テレビに代表される家庭用の映像装置には、各種の画質を調整する機能が搭載されており、少し気を付けるだけで映像体験が大きく変わります。もちろん無料なので、試してみる価値は大! この「かんたん画質調整シリーズ」では、視聴時にありがちなシチュエーションを想定して、ついつい試したくなる使いこなしをお届け。フォーカスを絞りつつ、基礎が身について応用もできるよう、周辺情報もあわせてご紹介します。

色温度の調整で“映画らしさ”アップに挑戦

第1回目のテーマは、映像調整の基本中の基本といえる「色温度」に着目。“映画らしさのアップ”にチャレンジします。

“映画らしさ”という観点では、映像モードで「映画」や「シネマ」を選ぶのがもっとも簡単です。しかし、このモードの意図や意味を知れば、自身の環境や好みに合わせて、さらに最適化できるでしょう。

映像モードの「映画」や「シネマ」を構成する要素は、「色温度」「ガンマ」「フレーム補間」「シャープネス」などの調整項目が考えられ、今回は、その筆頭と言える「色温度」についてふれます。

  • PANASONICの4K有機ELテレビ「TH-55MZ2500」調整画面の例

映像装置の画質調整項目には、ほぼ例外なく「色温度」が含まれています。もし見当たらないとすれば、その映像装置は、映画などのコンテンツを高品位に楽しむのには適していないといってもよいでしょう。

制作基準の「D65」を目指して調整してみよう

まず簡単に色温度の説明をすると、主に白色の色味の調整と考えればよいでしょう。一口に“白”といっても、青白い白、赤味を帯びた白、などさまざま。4K/HDRコンテンツの制作基準は、規格で「D65(6504K)」と決まっています。日本では地上波放送も含めて、長らく「D93(9300K)」が基準とされてきましたが、これに比べてD65は色温度が低く、見た目の印象として暖色、黄味あるいは赤味がかった白と感じます。

  • 色温度が9300Kのイメージ。全体的に青味を帯び、屋外シーンの場合は早朝の印象を受けます
  • 色温度が6500Kのイメージ。白が純白で、屋外シーンは撮影時間および撮影者の意図通り、正午過ぎの印象を受けます

日本で出荷される映像装置は、D65よりも高い寒色寄りに設定されていることが多く、購入後にユーザーが映像調整をまったくおこなわずに映像を見ると、基準よりも青味がかった映像を見ることになります。

見た目の印象としては、明るく爽やかで“キレイ”に感じるとされていますが、制作者の意図した色調ではないことをご想像いただけるでしょう。映画やドラマで、スタジオ撮影がバレバレで興ざめすることがあるとすれば、それは色温度が高過ぎるせいかもしれません。

そんな時は、映像装置の色温度を標準のD65に近づけるだけで、色味が落ち着き、リアリティが増しますので、ぜひお試しを。

<調整スタート>

では実際に調整してみましょう。映像装置の種類やメーカーによって、色温度関連の表現が異なるので、少し注意が必要です。

テレビ製品の場合は、映像調整項目として「色温度」が用意されていることがほとんどですが、メーカーや製品によって、「9300K」や「6500K」、「D65」などと数値が明示される場合と、「高」「中」「低」のように抽象的な場合があります。

  • PANASONIC製テレビの一例

数値で選択が可能な場合は6500Kを選びましょう。「高」「中」「低」などから選択する場合は、おおむね「低」が6500Kに相当するケースが多いです。

ちなみに、PANASONICの上位モデルは「高2」「高1」「中」「低1」「低2」「低3」と多段階。「低2」が6500Kに相当します。不明な場合は、映像モードを一旦「映画」や「シネマ」に変更し、その際の色温度設定を参照するとよいでしょう。

  • 画像左が「シネマ」モード、右がデフォルトの「オートAI」モード。一般的に「映画」や「シネマ」モードは、色温度が6500Kに近い設定になっています

6500Kに切り替えると、慣れないうちは少し黄味を帯びたように不鮮明に感じるかもしれません。しかし、慣れてくるとその落ち着きが心地よく、セット撮影の違和感も激減しているはずです。違和感の少ない映像は、ストーリーへの没入感も増すものです。

自宅なら暗い環境での映画鑑賞がおすすめ

白の色味の感じ方は、視聴環境によって相対的に変化する「色順応」として知られています。

たとえば日中の太陽光や青白い照明の下では、D65の映像は相対的に黄ばんだように感じるので、映像装置側の色温度は高く調整すべきという訳です。テレビ製品の出荷設定が、規格基準のD65よりも高く設定されているケースが多いのもそのためです。

  • ほか身近な例としては、iOSデバイスで当然のように実装されている「True Tone」機能。これは、周囲の光環境に応じて、画面が正しい色味に感じるよう自動補正するもので、多くのユーザーが知らず知らずのうちに利用しているはずです

話を自宅での映像鑑賞に戻すと、周辺の光で視覚の色順応が働かないよう、部屋はなるべく暗く保つのがおすすめです。照明が必要な場合は「暖色(電球色)」に整えると、D65の“白”が純白に近く感じられます。

暗い部屋の手元あかりにおすすめなシステム照明・アルテミデ「Ixa」

さて、「色温度」の設定とその効果について、ご理解いただけましたでしょうか? 映像調整は方法さえ知っていれば簡単で、しかも無料! さっそく調整して、映像体験の没入感アップに挑戦してみてはいかがでしょうか。

次回は「ガンマ」の解説をしますのでお楽しみに!