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レビュー

  • Q ACOUSTICS/FYNE AUDIO/MONITOR AUDIO/WHARFEDALE/POLK AUDIO テレビに組み合わせたい“推し”スピーカー
    フロア型を徹底レビュー PART1
    エントリークラス(ペア25万円未満)をチェック[2021]

    VGP 取材・執筆 / 岩井 喬
    2021年11月24日更新

    • VGP審査員
      岩井 喬

ハイコストパフォーマンスモデルが揃う

テレビ周りのサウンド強化において設置性と音質のバランスで考慮すると、“フロアスタンディング型”のスピーカーは理にかなった存在です。設置するスペースは必要ですが、テレビラックの空きスペースやスピーカースタンドを必要とせず、そのままセッティングできます。また昨今はインテリアにマッチしたデザイン性やフォルムを持つモデル、テレビの横に置きやすいスリムなキャビネットを採用したスピーカーも多くなってきています。もちろん、デザイン面を考慮しながらも、ピュアオーディオとしての実力を兼ね備えています。

そこで本稿では、ぜひテレビと組み合わせてほしい“推し”のフロア型スピーカーをご紹介。初めて本格的なスピーカーを導入してみたい方にお薦めの入門機から、ペア50万円を超える高級モデルまで集めてクオリティチェックを実施しています。

PART1は、エントリークラスとしてペア25万円未満のモデルを5機種選定。しっかりとした音質を備えながらも、手の出しやすい価格に抑えられた、各社のハイコストパフォーマンスモデルが揃っています。上位モデルの技術がうまくダウンサイジングされた構成になっており、キャビネットも比較的にスリムなモデルが多く、設置しやすいのも特長です。

  • スピーカーの試聴取材では、UHD BDプレーヤーのパナソニック「DP-UB9000」からプリメインアンプのブルーサウンド「POWERNODE 2i」までHDMIケーブルで接続し、プレーヤーからの音を再生。テレビからの音を試聴する際は、テレビからPOWERNODE 2i(ARC対応)までHDMIケーブルで接続しています。
    <試聴コンテンツ>
    音楽ライブ:BD『ONLINE LIVE 2020 -Arena Travelers-/Official髭男dism』(『Universe』付属BD)
    映画アクション:4K Ultra HDブルーレイ『エクスペンダブズ3』
    映画ドラマ:4K Ultra HDブルーレイ『君の名は。』

Q ACOUSTICS「3050i」

  • Q ACOUSTICS
    「3050i」
    ¥95,370(税込/ペア)
    マルチch展開:○
    イネーブルド:×
    サブウーファー:○

徹底的なキャビネットの作り込み

上位モデルに採用された、キャビネットの補強が必要な箇所にブレーシングを追加することで強度を高めて振動を軽減させる「P2P」技術や、内部圧力を速度に変換して共振を抑える「HPE」テクノロジーを導入した、Q Acousticsの主力である3000iシリーズのフロア型モデルの「3050i」。ウーファーからの振動伝達を抑えるため、バッフルから独立して設置された22mmトゥイーターを、2基の165mmペーパーコーン・ウーファーで挟み込んだ、仮想同軸配置の2ウェイ・3スピーカー構成を採用します。3000iシリーズは、ブックシェルフ型をはじめ、センタースピーカーとサブウーファーも揃っており、マルチチャンネルへの展開も可能です。

  • トゥイーターは、ウーファーからの振動による干渉を低減するため、バッフルから独立させたコンプライアント・サスペンションシステムを採用。ウーファーは仮想同軸配置を導入し、コート紙の採用で剛性と高いダンピング性能を実現しています。
  • スピーカーターミナルは、シングルワイヤリング、バナナプラグに対応。ソケットを深くし、突起部分を短くすることで、壁に近い場所に設置してもスピーカーターミナルが壁に当たらない設計になっています。

ローエンドの響きが豊かで逞しい

中低域の密度が濃く、ローエンドの響きも豊かで、リズム隊のアタックは太く逞しいです。アクション系はBGMの重厚さが印象的。SEの分解能は高く、銃声やヘリの音は軽快に浮き立ち、セリフは低域の響きを厚めに表現します。音楽系もベースが太くどっしりとしており、ボーカルのボディは厚めで落ち着いたトーンです。口元の輪郭はやや甘目で、ホーンセクションや弦楽器の際立ちはシャープで軽快さも感じられます。ドラマ系においては声の重みが効果的に働き、女性の声の艶もよく、息遣いも艶めかしい。口元は大きめで存在感があるが、全体的に安定したセリフのやりとりを実感できます。

  • 55インチ・テレビの隣に設置
  • 音質傾向表1
    6軸で評価、MAX10点、0.5刻み
  • 音質傾向表2
    ☆で評価、MAX5点、0.5刻み

FYNE AUDIO「F303」

新進ブランドの戦略的な入門機

元タンノイの技術者らが中心となり設立された、スコットランド発の新進ブランドです。上位のF500シリーズなどの開発で得られたノウハウを用いながら、価格をぐっと抑えた戦略的なエントリーモデルがF300シリーズだ。シリーズ最上位のF303は、特殊な溝を刻んだ複雑な曲面形状のエッジにより共鳴振動を抑え込む「FyneFlute」テクノロジーを取り入れた2基の150mmマルチファイバーコーン・ウーファーと25mmポリエステル・ドーム・トゥイーターによる、仮想同軸構成の2ウェイ・3スピーカーシステム。MDF製キャビネット内部は強固にブレーシングが施されています。

  • ユニットの淵に特殊な溝を刻んで複雑な曲面形状にする「FyneFlute」テクノロジーを採用したウーファーは、振動板からのエネルギーを緩衝させて色付けのない音を追求。トゥイーターは、フェーズ・コンペンセーターを装備し、滑らかな高域再生を実現しました。
  • 300シリーズのスピーカーターミナルは、基本的に金メッキ仕様のシングルワイヤリングの設計だが、F303のみバイワイヤリング接続に対応しています。スピーカーターミナルの付近に、バスレスポートも備えています。

解像感が高く空間性も豊かに描く

程よい低域の厚みと高域にかけての穏やかなハリ感がバランス良く融合し、解像度も高く空間性豊かなサウンドです。オーケストラの管弦楽器は上品な艶を持ちます。アクション系ではSEの粒が細かく、銃声もキレ良くスピード感があります。BGMは弦楽器の太さがあり、重心の低い落ち着きのあるトーンで表現。セリフは締まり良く、音場の見通しは深い。ドラマ系は声の爽やかな描写や焚き木の音が軽やかでヌケよく、聴き取りやすいです。キレ良く余韻もスッキリとしており、口元の艶も良質。音楽系では低域の締まりがよく、ボーカルはハリよく伸びやかに表現。音像の密度も十分であり、ホーンセクションは躍動的です。

  • 55インチ・テレビの隣に設置
  • 音質傾向表1
    6軸で評価、MAX10点、0.5刻み
  • 音質傾向表2
    ☆で評価、MAX5点、0.5刻み

MONITOR AUDIO「Bronze 200-6G」

  • MONITOR AUDIO
    「Bronze 200-6G」
    ¥154,000(税込/ペア)
    マルチch展開:○
    イネーブルド:○
    サブウーファー:○

トップクラスの人気を誇る入門機

同社のなかで高い人気を誇る「Bronzeシリーズ」が第6世代へと進化。本機は均一な放射特性と位相・指向性を向上させる「UDウェーブガイド」を新規採用した25mm C-CAMゴールドドーム・トゥイーターと、コーンとエッジの接合面形状を最適化した「DCM」テクノロジーを取り入れた2基の140mm C-CAM・ウーファーを搭載しました。「HiVe IIポート」はリア側に設け、フロント側をよりスマートに仕上げました。リア側からテンションロッド1本でユニットを固定する手法も継承しており、強靭なMDFを用いたキャビネットはブレーシングも徹底しています。デザイン性に富んだドルビーイネーブルスピーカーもラインアップすることも特長です。

  • C-CAMゴールド・ドームを採用したトゥイーターは、「UDウェーブガイド」を搭載したことで、均一な放射特性、タイム・アライメントの改善、指向性の向上を実現。ウーファーは、直線部をもった円錐状に加工した振動板によって優れた減衰特性を確保しています。
  • スピーカーターミナルは、バイワイヤリング、バナナプラグの接続に対応し、高品質金メッキを施しています。バスレフポートは上位機種で培ってきた技術「HiVe IIポート」を採用しており、ポートノイズの減少に寄与しています。

伸びやかな低域と高解像感を兼備

ずしんとした低域の豊かな伸びに対し、中高域にかけてはやや硬質でハキハキとした解像度指向の描写性を見せます。アクション系ではSEの金属音が際立つ傾向で、列車のレール音や銃声、破裂音も素早いアタック音を鮮明に表現。BGMは重厚に低域を響かせつつ、適度に引き締めて弾力がよいです。セリフは口元のニュアンスをくっきりと描き出します。ドラマ系でも細やかなSEやセリフの動きを粒立ちよくスッキリと描く傾向で、虫の音も鮮明に引き立ちます。特に女性の声は余韻の艶感が良いです。音楽系は中低域の厚みをタイトにまとめ、ホーンセクションやボーカルをキレよく鮮やかに描きます。

  • 55インチ・テレビの隣に設置
  • 音質傾向表1
    6軸で評価、MAX10点、0.5刻み
  • 音質傾向表2
    ☆で評価、MAX5点、0.5刻み

WHARFEDALE「DIAMOND 12.3」

  • WHARFEDALE
    「DIAMOND 12.3」
    ¥173,800(税込/ペア)
    マルチch展開:○
    イネーブルド:×
    サブウーファー:×

老舗ブランドのハイC/Pモデル

ワーフェデールは1932年に英国で創業した老舗ブランド。人気の高い「DIAMONDシリーズ」の最新世代機で、著名なスピーカーデザイナーであるカールハインツ・フィンク氏が中心になって開発されました。本機は「DIAMOND12シリーズ」の2基の130mmウーファーはポリプロピレンとマイカのハイブリッド構成となる「Klarityコーン」を採用。またボイスコイルには、電磁誘導の影響を抑えるグラスエポキシ製ボビンを取り入れています。25mm・ソフトドーム・トゥイーターの振動板はポリエステル織フォルムで表面処理。ウーファー口径の異なるブックシェルフ型を3種類、センタースピーカーも用意します。

  • ポリプロピレンとマイカをハイブリッドさせた「Klarityコーン」をウーファーに採用したことで、高剛性ながら軽量にすることで優れたレスポンスを可能にし、スピード感のある低域再現を実現しています。ボイスコイルは、グラスファイバー製ボビンを採用しました。
  • スピーカーターミナルは、プラグに角度が付いていてケーブル接続しやすい仕様が特徴的で、バイワイヤリング、バナナプラグの接続に対応します。バスレフポートは、スピーカーの背面上段部に設けています。

クリアでナチュラルな空間表現

高解像度でナチュラルな空間表現を持つハイC/Pモデル。緻密で制動性の良い中低域の再現性も見事で、高域の倍音表現も適度な潤いと煌きを兼ね備えます。アクション系は太く逞しいBGMを適切に引き締め、音場のクリアさを演出。SEも微細にトレースし、銃声の乾いた音もリアルです。セリフは軽やかにまとめ、ボディを絞ったフォーカスよい傾向です。ドラマ系は女性の声の凛とした艶ハリが美しく、分離のよい溌溂とした質感で描きます。音楽系はベースがぶんぶんと力強く響くが滲みなくまとめ、キックドラムのアタックも明瞭です。ギターワークも鮮明で、ボーカルはスマートで潤いよいです。

  • 55インチ・テレビの隣に設置
  • 音質傾向表1
    6軸で評価、MAX10点、0.5刻み
  • 音質傾向表2
    ☆で評価、MAX5点、0.5刻み

POLK AUDIO「Polk Reserve R600」

  • POLK AUDIO
    「Polk Reserve R600」
    ¥103,400(税込/1本)
    マルチch展開:○
    イネーブルド:○
    サブウーファー:×

高い技術力が際立つ北米ブランド

同社は1972年にマット・ポーク氏らが創業した、北米有数の高い技術力を持つスピーカーブランドです。40kHzまでの広帯域再生と、拡散性に優れたウェーブガイドを組み合わせた25mmの「ピナクル・リングラジエーター」トゥイーターを取り入れた他、独自形状により剛性と内部損失を高めた2基の165mmタービンコーン・ウーファーを搭載しました。ポートを通過する空気の乱流を抑制し、低歪な低域再生を実現する特許技術「Power Port」を進化させた「Power Port 2.0」を採用。不要な共振に特化して調整されたクローズドパイプ・アブソーバー「X-Port」を組み合わせています。ハイトモジュールを揃えており、立体音響に対応します。

  • 上位機の「Legendシリーズ」で採用された、フォームコアとタービン形状を組み合わせた振動板を採用した、165mm タービンコーン・ウーファーを2基搭載。トゥイーターには、幅広いスイートスポットを実現した「ピクナル・リングラジエーター」を採用しています。
  • スピーカーターミナルは、シングルワイヤリング、バナナプラグの接続に対応し、堅牢な素材が使用されています。バスレフポートは、新開発の「Power Port 2.0」を搭載しており、底面部に設置されています。

フォーカス感と艶やかさが優秀

高域のハリ艶良い滑らかな描写と、低域の制動性もありながら豊かに響く存在感のあるサウンドが特長です。女性の声の艶もよくウェットでボディ感も自然に表現。アクション系はSEやBGMのローエンドをどっしりと豊かに聴かせ、管弦楽器の旋律は太く逞しいです。ヘリのローター音も派手に響きますが、銃声やセリフのトーンは落ち着きよい傾向。ドラマ系のセリフは艶のある輪郭表現となり、子音も明瞭で音離れがよく、ボディも絞り、口元のフォーカスのよさが際立ちます。音楽系はリズム隊の堂々とした響きとギターの太く豊かなリフが印象的で、ボーカルはキレよくくっきりと浮き立ちます。

  • 55インチ・テレビの隣に設置
  • 音質傾向表1
    6軸で評価、MAX10点、0.5刻み
  • 音質傾向表2
    ☆で評価、MAX5点、0.5刻み

PART2はこちら>>>テレビに組み合わせたい“推し”スピーカー フロア型を徹底レビュー PART2

SPEC

Q ACOUSTICS「3050i
●形式:2ウェイ・バスレフ型 ●ユニット:22mmトゥイーター×1、165 mmウーファー×2 ●再生周波数帯域:44~30,000Hz ●クロスオーバー周波数:2,500Hz ●感度:91dB ●インピーダンス:6Ω ●外形寸法:310W×1020H×310Dmm ●質量:17.8kg

FYNE AUDIO「F303
●形式:2ウェイ・バスレフ型 ●ユニット:25mmポリエステル・ドーム・トゥイーター×1、150mmマルチファイバー・ベース/ミッド・ドライバー×2 ●再生周波数帯域:32~28,000Hz ●クロスオーバー周波数:3,200Hz ●感度:91dB ●インピーダンス:8Ω ●外形寸法:233W×962H×308Dmm ●質量:14.6kg

MONITOR AUDIO「Bronze 200-6G
●形式:2.5ウェイ・バスレフ型 ●ユニット:25mm Gold dome C-CAM トゥイーター×1、140mm C-CAM Bass/Mid ドライバー×2 ●再生周波数帯域:35~30,000Hz ●クロスオーバー周波数:700Hz/2,400Hz ●感度:88dB ●インピーダンス:8Ω ●外形寸法:229W×909H×304Dmm ●質量:12.8kg

WHARFEDALE「DIAMOND 12.3
●形式:2.5ウェイ・バスレフ型 ●ユニット:25mmソフトドーム・トゥイーター×1、130mm Klarity・ウーファー×2 ●再生周波数帯域:45~20,000Hz ●クロスオーバー周波数:2,200Hz ●感度:87.5dB ●インピーダンス:8Ω ●外形寸法:180W×975H×348Dmm ●質量:19.5kg

POLK AUDIO「Polk Reserve R600
●形式:2ウェイ・バスレフ型 ●ユニット:25mmピナクル・リングラジエーター・トゥイーター、165mmタービンコーン・ミッド/ウーファー×2 ●再生周波数帯域:35~50,000Hz ●クロスオーバー周波数:2,700Hz ●感度:87.5dB ●インピーダンス:4Ω ●外形寸法:281W×1064H×382Dmm ●質量:21.5kg

REFERENCE

  • プリメインアンプ
    BLUESOUND
    POWERNODE 2i
    ¥OPEN(実勢価格120,000円前後)
  • UHD BDプレーヤー
    PANASONIC
    DP-UB9000
    ¥OPEN(実勢価格210,000円前後)
  • 4K有機ELテレビ
    PANASONIC
    TH-55JZ1000
    ¥OPEN(実勢価格310,000円前後)