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  • 画質と音質で選ぶ! 4K Ultra HDブルーレイ
    4Kリマスター・タイトルBest5
    大橋伸太郎が推薦する屈指のハイクオリティソフト[2021-2022]

    取材・執筆 / 大橋伸太郎
    2022年4月15日更新

    • VGP審査委員長
      大橋 伸太郎

4Kリマスターで作品の真価を

パンデミックによる劇場公開の停滞は、VODの普及を加速させました。“映画はまず映画館で観るもの”でなくなり、劇場公開とVODの同時スタートや、VODが先行して公開される作品も登場しました。そのためもあってか、4Kリマスターによる旧作の4K UHD BD化は善戦の印象を受けます。今回、配信用シリーズとは一線を画した映画らしい醍醐味の5タイトルを選びました。

  • 4K Ultra HDブルーレイは、4KやHDRの高画質フォーマット、ドルビーアトモスやDTS:Xなどイマーシブサウンドによって、DVDやBDでは体感できなかった映像情報を味わうことができます。

『マイ・フェア・レディ』は、ハリウッドの美術、衣装、照明、カラー撮影技術のピークが記録された映画です。『時計じかけのオレンジ』は、ディストピア映画の先駆作。『ショーシャンクの空に』は、サスペンス、肌の色を越えた友情、アメリカ社会のクロニクルと映画の魅力を詰め込んだ一篇です。『遊星からの物体X』『フィフス・エレメント』に、今回選から漏れましたが『キングコング対ゴジラ』(1963年東宝)を加えれば、着ぐるみ特撮→アナログVFX→CGへ移行するSF映画を跡づけることができます。

VOD時代、パッケージメディアは「パブリックドメイン」と考えてはどうでしょうか。VHSやLDの価値が…というトラウマはありますが、それらはあくまでは過渡期のメディアでした。原画の品位そのままを伝えるにいたった4K UHD BDは、映画のレガシーを真に私たちのものにしてくれるでしょう。

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『ショーシャンクの空に』

  • 『ショーシャンクの空に』
    ¥6,980(税込)
    ワーナー・ブラザーズ
    1000806458
    ●制作:1994年/米 ●本編映像:142分、ビスタ、HDR10 ●本編音声:英語DTS-HD MA 5.1ch、日本語DD 2.0ch

フィルム撮影のコントラストと力強い映像が4K/HDRで露わに

北米の映画ファンサイトで『ゴッドファーザー PARTII』と並んで不動の人気を集める名作です。何度もビデオグラム化を繰り返しましたが、冒頭の刑務所の雄大だが哀切さを滲ませた空撮で4K UHD BD=決定版の登場ということを実感させます。1990年代に完成の域に達したフィルム撮影の豊かなコントラストと情報量が多く力強い映像が、4K/HDRで全貌を現したのです。音声はDTS-HDマスターオーディオ5.1chを収録、DTS Neural:Xでイマーシブサウンドにアップサンプリングして聴いていましたが、中盤のアンディが「フィガロの結婚」の伯爵夫人とスザンナの二重唱を刑務所中に響き渡らせる名シーンは、サラウンドよりも3Dサウンドのほうが、シーンが引き立ちます。

  • © 1994 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
  • 『ショーシャンクの空に』画質/音質傾向

『時計じかけのオレンジ』

  • 『時計じかけのオレンジ』
    ¥6,980(税込)
    ワーナー・ブラザーズ
    1000806457
    ●制作:1971年/英 ●本編映像:137分、ビスタ、HDR10 ●本編音声:英語DTS-HD MA 5.1ch

透き通るような瞳の表現HDRで説得力に富んだ映像

本作を見返して思うのは、スタンリー・キューブリックは死刑廃止論者だったであろうということです。それは安っぽい人道主義でなく、その反対であります。人間というものへの冷静な諦観があり、だからこそ映画という表現手段で暴力装置の愚を描き続けたのです。公開時、ビデオグラム化の時点では「蝶々」が飛びましたが、今回はノーカットでぼかしもありません。HDR10、BT.2020の映像によって、アンディ・マクダウェルの瞳のアップの透き通るような無機質の青に慄然とさせられます。これが撮りたかったのだな、という説得力に富む映像です。音声はDTS-HDマスターオーディオ5.1chですが、ドルビーステレオ/サラウンド嫌いだったキューブリックを尊重してオリジナルモノラル音声も収録しています。

  • © 1971/Renewed © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
  • 『時計じかけのオレンジ』画質/音質傾向

『フィフス・エレメント』

  • 『フィフス・エレメント』
    ¥8,360(税込)
    TCエンタテインメント
    TCBD-1135
    ●制作:1997年/仏・英・米 ●本編映像:127分、スコープ、ドルビービジョン ●本編音声:英語ドルビーアトモス、日本語DTS-HD MA 5.1ch

レトロで遊び心溢れる色彩がHDRと相まって多彩が増す

映像の大半はCGに置き換わっていますが、アナログVFXやアニマトロニクス、特殊メイクアップも多く、新旧のカクテルが楽しい映画となっています。『グラン・ブルー』『ニキータ』『レオン』と重量級が続いた後に公開され、リュック・ベッソンの多彩さを楽しめます。彼が本作に盛り込んだ遊び心と、SFコミックのおもちゃ箱をぶちまけたようなレトロでキッチュな色彩が、BT.2020でようやく開花した感があり、4Kリマスターはそれを改めて見直すきっかけを与えてくれるでしょう。音声はドルビーアトモスで、イマーシブ化によってスケールが増しています。空中を自動車が行き交うトラフィックやフロストンパラダイスのオペラハウスのシーンは、音場表現の伸びしろが感じられます。

  • ©1997 GAUMONT.
  • 『フィフス・エレメント』画質/音質傾向

『マイ・フェア・レディ』

  • 『マイ・フェア・レディ』
    ¥6,589
    パラマウント
    PJXF-1472
    ●制作:1964年/米 ●本編映像:173分、スコープ、HDR10 ●本編音声:英語ドルビーTrueHD 7.1ch、日本語DD 2.0ch

ドルビービジョンによる色彩と階調が濃密で圧巻

アカデミー作品賞、監督賞の他美術、撮影、衣装デザイン等、8部門を受賞した作品です。4K UHD BD化にあたり65mmオリジナルネガを8Kデジタルスキャンで修復、ドルビービジョンで収録されています。音声はアトモスでなくドルビーTrueHD 7.1ch。ドルビービジョンによる映像は、色彩と階調の濃密さでフルHD/SDRから大きな変貌を遂げています。圧巻は舞踏会シーンのゲストたちのダイヤモンドの放つ七色の反射光で、画面から矢が解き放たれたように燦然ときらめきます。したたるように艶やかでシックな黒も悶絶ものです。一方HDR10は誇張感のない自然なバランスの階調、SDRは瑞々しく伸びやかな色彩、HDRとSDRの両方が捨てがたい、一本で多様な楽しみ方ができます。

  • My Fair Lady Original Motion Picture © 1964 Warner Bros. Pictures Inc. Renewed 1992 CBS. MY FAIR LADY is a trademark of the ViacomCBS companies.
  • 『マイ・フェア・レディ』画質/音質傾向

『遊星からの物体X』

  • 『遊星からの物体X』
    ¥6,589(税込)
    NBCユニバーサル
    GNXF2651
    ●制作:1982年/米 ●本編映像:109分、スコープ、HDR10 ●本編音声:英語DTS:X、日本語DTS 2.0ch

映画技術の記録としても4Kリマスターの意義が大きい

ハワード・ホークス製作のオリジナルは女性隊員が登場しますが、本作が男だけのドラマなのは、女性を主人公に世界的にヒットした「エイリアン」第一作の追従作に見られるのを避けたと思われます。1980年代アナログVFXのクリーチャー製作と特殊メイクの代表作です。奇抜でおぞましいクリーチャーの恐怖劇場が失笑を誘うどころか視線を釘付けにするのは、アイデアと具現化の果てしない積み重ねが生む禍々しいリアリズムによるものでしょう。映像HDR10、音声はDTS:X。4K高解像度とBT.2020の広色域で生々しい質感が画面から伝わり、醜怪の中の美が現れました。カルトSF映画のファンは必見です。映画技術の記録としても4Kアーカイブの意義は大きいように思えます。

  • © 1982 Universal Studios. All Rights Reserved.
  • 『遊星からの物体X』画質/音質傾向