CONTENTS
・一体型AVアンプ初の15chアンプの内蔵が話題に!
・なぜスピーカーをイクリプスにしたのか?
・音の印象は? 「5.1.2」から「9.4.6」まで比較試聴
・試聴を終えて。結論「イクリプスがベストマッチ」
今春、デノンから前人未到の15chアンプを内蔵したAVアンプ「AVC-A1H」が登場し、話題を集めています。はたして「9.4.6」構成で聴くDolby Atmosのサウンドとは? そんな疑問にお応えすべく、オーディオ・ビジュアル評論家の鴻池賢三氏と一緒に神戸にあるデンソーテンの開発スタジオにお伺いし、スピーカーの本数による音の変化を比較試聴しました。
一体型AVアンプ初の15chアンプの内蔵が話題に!
サラウンド収録フォーマットは、5.1chや7.1chといったチャンネルという概念に縛られないオブジェクトベースに進化。たとえば代表格ともいえるDolby Atmosは、家庭用規格の場合、再生側の環境に応じて最大34.1ch(24.1.10ch)でレンダリングできます。この流れに応じて、AVアンプはパワーアンプも含め多チャンネル化が進んできました。
そしてDolby Atmosが登場してから約10年が経過した今、革新的な飛躍が。デノンが一体型として初の15chアンプを内蔵し、「9.4.6」構成を実現したAVアンプ「AVC-A1H」をフラグシップモデルとしてリリース。この豪傑ぶりは100万円の価格設定もあわせて、ホームシアターファンの間でも一大ニュースです。
- 15.4chAVアンプ
Denon
「AVC-A1H」
¥990,000(税込)
一方、ユーザー体験を考えた場合、AVアンプ1台で最大「9.4.6」というスピーカー構成のメリットはあるのでしょうか? 果たして100万円の価値は得られるのでしょうか? 未体験ゾーンだけに、こうした疑問が湧くのも当然です。
そこで今回は、デンソーテンの協⼒を得て、マルチチャンネル再生で人気を誇るイクリプスのホームスピーカーを使用し、15.4chの真価を体験することにしました。「百聞は一聴に如かず」。考え得る最高峰の状態で、チャンネル数を段階的に増やし、体感の変化も考察します。
なぜスピーカーをイクリプスにしたのか?
イクリプスをレファレンスに採用したのは、マルチチャンネル再生に適するからです。まずイクリプスはドライバー構成がダイナミック型1基とシンプルで、チャンネルが増えても位相特性や音色を揃えやすいです。点音源ですので、左右だけでなく、上下、前後、さらに斜めとシームレスなつながりと定位が期待できます。また、イクリプスはインパルス応答性能の再現を重視した設計であり、これは音源に含まれている音を忠実に実際の空間に放つということ。広がり“感”をエンクロージャーの響きなどで“演出”するのではなく、収録されている音場そのものを再現するのにも適した性能を備えているというわけです。
- スピーカーシステム
ECLIPSE
「TD510MK2」
¥137,500(税込/1本)
VGPアワードで3年間(6季)連続で金賞を受賞したアイテムに授与される「殿堂入り」を獲得した定番スピーカー。
- サブウーファー
ECLIPSE
「TD725SWMK2」
¥550,000(税込)
本機もVGPアワードで「殿堂入り」を受賞したサブウーファーの名機。
今回はサブウーファーもインパルス応答性能にこだわったイクリプス「TD725SWMK2」を4台用意しました。「AVC-A1H」がLFEについても4chレンダリングが可能ということもありますが、サブウーファーの複数使いは、定在波の悪影響を低減するためのテクニックとしても定石。実施場所もデンソーテンの開発スタジオで、充分な室内容積があり、防音性能も万全です。
音の印象は? 「5.1.2」から「9.4.6」まで比較試聴
スタンダードモデルの7chAVアンプで実現でき、一般家庭でも採用しやすい「5.1.2」の構成で、「AVC-A1H」の情報量の多さや音質のよさをまずは実感しました。その上で「9.1.2」と床に置くスピーカーが5本から9本に増やしてみました。サラウンド効果として包囲感が増すのは想像できましたが、発見は情報量の増大。空気の介在や動きまでも感じ取れ、音が体に纏わりつくように生々しくなるのは不思議な感覚。音も鮮明に感じられるから不思議です。
「9.1.6」になると頭上を飛び交う効果音の定位や移動感が鮮明になるのは想像できましたが、それだけでなく足元の変化にも驚きました。頭上から降り注ぐ雨は、地面に落ちた「粒立ち感」がより印象的で、大地の存在を感じさせます。
- 「9.1.6」
1〜9 床置き設置:TD510ZMK2×9本
10〜11 トップミドル:TD508MK3×2本
12〜13 フロントハイト:TD510MK2×2本
14〜15 リアハイト:TD510MK2×2本
16 サブウーファー:TD725SWMK2×1本
そして「9.4.6」はさらに別次元に。爆風が通り抜けるような様子まで体験できるのは新しい領域。強力なサブウーファーが4基ということもありますが、方向感が加わることで、テーマパークのアトラクション的な効果が生まれます。『トップガン マーヴェリック』で谷間を縫うように飛行するタイムトライアルシーン。機体を90°回転、180°回転した際、「5.1.2」では翼の先端が風を切る音の移動感が印象的ですが、再生チャンネル数が増えると、翼全体が風を切り、風景が前から後ろへと流れ、螺旋の軌跡を描く様子まで感じ取れるかのよう。観ている者が回転し、高速で移動するかのような錯覚を覚えるほどリアルさが増すのです。仮想現実のようにリアルなサラウンドサウンド感は、再生チャンネルを増やすことによって、指数関数的に伸びるのは発見でした。
- 「9.4.6」
1〜9 床置き設置:TD510ZMK2×9本
10〜11 トップミドル:TD508MK3×2本
12〜13 フロントハイト:TD510MK2×2本
14〜15 リアハイト:TD510MK2×2本
16〜19 サブウーファー:TD725SWMK2×4本
試聴を終えて。結論「イクリプスがベストマッチ」
多チャンネル化はコスト増や設置の難易度が高いのは確かですが、今回の実験では、それ以上と思える成果を体感できました。一度設置すればしばらく楽しめるホームシアターならチャレンジしてみる価値はあると断言できます。
- AVアンプやプレーヤーなどの機器は、独自の制振技術を盛り込むラック、TAOC「CSR-4S-L/D」に設置。
特にイクリプスなら、設置性がよくハイトやトップスピーカーとしても最適。何より、点音源で位相特性の揃えやすさ、原音再生重視のインパルス応答性能の高さこそが、「AVC-A1H」の性能を引き出し、今回のような素晴らしい体感に繋がったのは間違いないです。同コンセプトで設計されたサブウーファーとあわせ、ホログラムのように立体的で臨場感あふれるサラウンド体験は、映像の世界により深く惹きこんでくれるはずです。