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レビュー

  • 「生形三郎のSPEAKER JOURNEY」 世界のスピーカーブランド 連載第4回
    Bluesound(ブルーサウンド)
    PULSE MINI 2i

    VGP 取材・執筆 / 生形三郎
    2020年7月8日更新

    • VGP審査員
      生形三郎

カナダの多様性が昇華されたブランド

昨今、国内でもハイレゾやロスレスでのストリーミングサービスが開始されるとともに、対応機器も続々と登場し、いよいよ高音質で楽しめるサブスクリプションサービスの下地が整ってきました。そんな状況に呼応するかのように、ネットワークストリーム機能を核としたオーディオ機器が増えつつあります。たとえコンパクトな一体型スピーカーであっても、従来のゼネラルオーディオの域を超えた、快適な操作性と良質な音質を両立したものも数多く存在します。
今回は、その代表例ともいえる、2018年に日本初上陸したカナダの新進ブランド「Bluesound(ブルーサウンド)」のスピーカーをご紹介します。

  • 新世代の音楽リスナーに向け、“真に高音質なワイヤレス・オーディオシステム”を提供することを目的に、2012年にカナダで創業されたブランド「Bluesound」。ワイヤレス・ストリーミングコンポーネントの「NODE 2i」「POWERNODE 2i 」「 VAULT 2i」、ワイヤレス・ストリーミングスピーカーの「PULSE FLEX 2i」「PULSE MINI 2i」「 PULSE 2i」などをラインアップしています。

カナダのオーディオブランドというと、日本では馴染みが薄いかも知れませんが、実は良質なブランドが数多く存在します。その魅力は、フランス系移民とイギリス系移民による双方の文化が深く入り交じる、カナダならではの文化的土壌の懐の広さに起因するところも大きいでしょう。

サウンドで言えば、英国的な規範性やバランスのよさ、フランス的なエスプリの効いた美しさ、そして隣国アメリカのハイエンドブランドが持つ先進的な精緻さが、絶妙なバランスで融合したような音の魅力を持ったブランドが多いと筆者は認識しています。Bluesoundも、まさにそんな同国の多様性が昇華されたブランドです。

第5回「musikelectronic geithain(ムジークエレクトロニク・ガイザイン)」

第3回「VIENNA ACOUSTICS(ウィーンアコースティクス)」

高音質技術とデザインが高次元に融合

Bluesoundは、新進ブランドでありながらも、その内実は、アンプ及びエレクトロニクスのエキスパートである英国ブランド「NAD Electronics」と、スピーカー開発のエキスパートであるカナダの「PSB Speakers」が手がけるブランドです。加えて、外観の意匠は、アメリカはニューヨークのデザインチームが手がけています。

また、特に注目したいのが、完全な独自OSによって動かされていること。設定から再生操作まで、実に安定した動作が実現されるとともに、アプリのGUIは見た目もシンプルで無駄が無く洗練されているのです。

  • ワイヤレススピーカーの「PULSE 2iシリーズ」省スペースにも手軽に設置することができます。
  • 専用アプリ「BluOS Controller」を使えば、本体の基本操作をはじめ、ストリーミングサー ビスの選択やマルチルーム再生などのあらゆる操作が可能です。ハイレゾ&ロスレス音楽配信サービスの「Amazon Music HD」にも対応します。

今回ご紹介する「PULSE MINI 2i」は、ネットワークストリーマーとアクティブスピーカーが一体となった製品です。トータルで100Wのアンプを搭載し、102mm径ウーファーと19mm径トゥイーターをそれぞれ2基ずつ搭載したステレオスピーカーとなっています。筐体デザインは、ミニマルなデザインとマットな手触りが心地よく、置き場所を選ばない程よいサイズ感と、移動も楽に行なえる軽さを兼ね備えています。

  • ワイヤレス・ストリーミングスピーカー
    PULSE MINI 2i
    ¥OPEN(実勢価格¥75,000前後)
  • スイートスポットを拡張する新設計の19mmトゥイーター、そして 102mmウーファーをそれぞれ2基ずつ搭載。2台の「PULSE MINI 2i」を使用して、ダイナミックなサウンドでステレオ再生を楽しむこともできます。

ミニマムに質のよい音楽環境が手に入る

PULSE MINI 2iのサウンドは、温かみに満ちた、聴き疲れのない心地のよいもの。スピーカーユニットサイズとの相性や、製品自体へのニーズに応えての音作りか、特にヴォーカル再生が饒舌で、歌声がしっかりと前に迫り出てきます。また、小型スピーカーながら、恐らくはDSPによって、自然かつ量感豊かな低音が実現されているので、ベースやバスドラムなどからも充実した低音を聴くことができ、音楽リスニングが楽しく感じられます。

そして何よりも重要なのは、それらに品位ある音質がもたらされていることです。無論、いわゆるピュアオーディオ的なハイファイ性を指向した音作りではないものの、音楽を楽しませるツボを押さえた、絶妙なチューニングが実現されているのです。この辺りのさじ加減は、まさに老舗のスピーカーブランドとアンプブランドの設計だからこその妙なのでしょう。総じて、音楽がリスナーへフレンドリーに語りかけてくるのです。なお、より広範囲で迫力豊かな音を楽しみたい場合は、本機を2台同時に連携してのステレオ再生も可能です。

PULSE MINI 2iを使えば、実にミニマムかつシンプルに、質のよい音楽再生環境を手に入れることが出来ます。とりわけ、各種ヴォーカルが主体となるソースや、ロックやポップスなどの音楽ジャンルを、軽妙かつ快適なサウンドで楽しみたい方にお薦めです。電源さえ取れればどこにでも気軽に置けるので、リビングテーブルや寝室など、場所を選ばずに快適な音楽生活をサポートしてくれる優れものです。

  • PULSE MINI 2iの音質傾向

推薦ソフト3選で聴く

  • <ロック>
    『My Songs』
    Sting
    2019年作品
    A&M Records
    ¥2,500(税抜)

スティングがセルフカバーした音源集。旧音源の音楽的クオリティや雰囲気をそのままに、音質が格段に向上しています。44.1kHzというフォーマットの器をうまく利用して密度の高い音が作り上げられていますが、PULSE MINI 2iでは、それらをジューシーに歌い上げます。スティングの味わい豊かな歌声は勿論、量感豊かなキックドラムも充実したサウンド。後半に収録されているライヴ音源も、なかなかの臨場感で描き出します。

  • <ジャズ>
    『Begin Again』
    Norah Jones
    2019年作品
    Blue Note Records
    ¥2,100(税抜)

ブルーノート・レーベル80周年となる2019年にリリースされた、ノラ・ジョーンズの2年半ぶりとなる新作アルバム。気心の知れた仲間との、ほぼ即興でのセッションによって演奏されたという楽曲が、良質な録音で収録されています。ボーカルを始め、ピアノやギター、オルガン、ドラム、そしてエレクトリックなキックドラムまで、実にメリハリよく録られたそれぞれ楽器の旨味を、PULSE MINI 2iは、持ち前の快活さでもって心地よく描き出してくれます。

  • <ポップ>
    『Highlights from Aoi Works II』
    手嶌 葵
    2019年作品
    Victor Entertainment
    ¥3,300

美しいウィスパーボイスが魅力な手嶌葵のシングルやタイアップ曲が集められた配信用アルバム。44.1kHz/16bitのデータをK2HDプロセッシングしてハイレゾ化された作品ですが、潤い溢れる濡れた質感の歌声が実に美しい。このような、マイクに極めて近い位置で録音されたヴォーカルも、PULSE MINI 2iは魅力豊かに聴かせてくれます。心地よくも親密な再生音は、まさに本機のような小型スピーカーならではのものでしょう。

LINEUP

PULSE MINI 2i
Black/White
¥OPEN(実勢価格¥75,000前後)

SPEC

[PULSE MINI 2i]
●形式:2ウェイ・密閉型 ●使用ユニット:19mmトゥイーター×2、102mmウーファー×2 ●周波数帯域:45〜20,000Hz ●定格出力:100W ●外形寸法:335W×172H×155Dmm ●質量:3.6kg