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レビュー

  • 「生形三郎のSPEAKER JOURNEY」 世界のスピーカーブランド 連載第5回
    musikelectronic geithain(ムジークエレクトロニク・ガイザイン)
    ME25

    VGP 取材・執筆 / 生形三郎
    2020年12月2日更新

    • VGP審査員
      生形三郎

素朴で美しい景観で誕生したムジーク

ドイツは、言わずもがな、自動車工業を始めとした幅広い産業分野の先鋭メーカーがひしめく技術大国です。オーディオ分野も例外ではなく、ノイマンやゼンハイザーといったマイクロフォンブランドはあまりにも有名で、レコード再生に欠かせないMM型カートリッジの技術は、元々はドイツのELACが欧州での特許を保有していました。

スピーカーメーカーも数多く、日本での知名度こそ低いですが様々なブランドが存在し、熱心なオーディオファンにも愛好されています。それらのスピーカーブランドは、旧西側と旧東側とでサウンドの毛色も微妙に異なり、一口にドイツと言っても幅が広いのです。

今回ご紹介する「ムジークエレクトロニク・ガイザイン」(以下、ムジーク)は、旧東側のブランド。ガイザイン村という、ベルリンから南に約200㎞、ドレスデンとライプツィヒという2つの大きな街の中間に位置する村で産声を上げました。ガイザインは、人口7000人ほどの小さな村で、広い空と三角屋根の家々、石造りの古い城壁など中世のような街並みも残す、素朴で美しい景観を持った場所です。そんな風土も相まってか、ムジークのスピーカーが奏でるサウンドは、モニタースピーカーたる精度の高い客観性を持ち合わせながらも、どこか親しみやすく、音楽を心地よく聴かせてくれることが魅力的なのです。

  • ライプツィヒ郊外にあるガイザイン村で誕生したムジーク。 1960年、弱冠18歳で会社を創業したヨアヒム・キースラー氏は、プリアンプや電子オルガンを制作、後にモニタースピーカーの開発に着手しました。

正確な定位描写が実現できる

ムジークのスピーカーは、ドイツ国営放送の標準統一モニターへの採用を始め、日本でもNHKやその他の大手スタジオが導入するなど、その性能は折り紙付き。もっとも特徴的なのは、スピーカーの顔ともいえるフロントバッフルに取り付けられた、完全自社生産のスピーカーユニットです。

  • 創業以来変わらず100%自社開発・生産体制を貫き、熟練したエンジニアが最後の音決めまですべてを行っています。無駄な色付けをしない「原音忠実再生」にこだわり“究極のモニタースピーカー”を目指しているのです。

同軸型と呼ばれる、同心円状にスピーカーユニットを配置する方式が採用されており、今回おすすめする「ME25」も、125mm径ウーファーの前に25mm径トゥイーターが搭載されています。同軸型のユニット構成は、発音源を一点に集約させることで点音源を形成し、正確な定位描写が実現できるという利点を持ちます。同軸型自体は、多くのスピーカーメーカーが採用していますが、ムジークが凄いのは、指向特性と呼ばれる、音が発せられる方向性までもが正確に整えられているという事です。とりわけ、最上位モデルでは、波長の長い極めて低い音域の指向特性までが、高い精度で整えられている事に驚かされます。

  • 2ウェイ・バスレフ型スピーカー
    ME25
    ¥370,000(税抜/ペア)

指向特性が整っているということは、スピーカーに対してのリスニングポジションで音が変化しにくい、つまりスウィートスポットが広いという事です。特に、狭い部屋では壁や天井からの反射が自ずと多くなるため、音域ごとに指向特性が大きく異なると、どうしてもサウンドのバランスが崩れ易くなってしまいます。スペック上での正確性だけでなく、そういった実用上での正確性までもが担保されていることこそが、プロフェッショナルの現場で支持される大きな理由のひとつであると推察します。そして、指向特性をはじめとして、周波数特性、スピーカーの性能を示す重要な値である歪み特性のグラフまでもが同社のカタログ等で公開されていますが、これは、確固たる技術と自信がなければ決してできないことでしょう。

  • スピーカーユニットには、アルミニウムに特殊樹脂コーティングを施した25mmのドーム型トゥイーターと 125mmのコーン型ウーファーを採用。高域部と低域部をそれぞれ独立したフェライト磁気回路によってドライブしています。

聴き疲れのない豊饒なサウンド

ME25は、モニター的なバランスのよさや忠実な音色の再現性などがしっかりと確保されていながらも、楽器同士の音像が良く溶け合った、音楽を長時間聴いていても聴き疲れない豊饒なサウンドが持ち味だ。とりわけ、明瞭な定位でスピーカー間に浮かぶ、厚みあるヴォーカル再現が快い。横幅205mm、高さ320mmという、一般家庭で使うにもハンドリングのよいサイズ感に加え、低域も過不足を感じさせないサウンドバランスで、充足度が高いのです。

音楽ジャンルも、モニタースピーカーらしく得手不得手なく、全てのジャンルを質感良く再現してくれます。まさに、音楽の制作者が意図した通りのサウンドバランスで、幅広い音楽ジャンルを楽しみたい人に打ってつけのスピーカーと言えるでしょう。外観は、バーズアイメイプルの突板仕上げが美しい。スピーカーを左右から支える独自構造の専用スタンドは、シンブルなボックスデザインのME25を、機能美溢れる存在感で美しく演出してくれます。

  • キャビネットには、経年変化の少ないMDF木材を採用。同社の設計理念である、原音忠実再生の技術をシリーズ最小ボディに凝縮しています。仕上げは「バードアイ・メープル」「マホガニー」「アッシュ・ブラック」から選択可能です。
  • ME25の音質傾向

推薦ソフト3選で聴く

  • <ジャズ>
    『A Moment of Now』
    Viktoria Tolstoy & Jacob Karlzon
    20013年作品
    King Record
    輸入盤

ドイツのジャズレーベルACTの看板ヴォーカリストであるヴィクトリア・トルストイとピアノのデュオ。繊細なタッチで響き合うピアノ弦の美しい共鳴や、仄かに湿り気を帯びたヴォーカルの微妙なニュアンスが充実度高く再現されています。特に注目したいのは、ダイナミクス表現。ムジークの再生では、ダイナミクスをうまくコントロールしたACTレーベルの音作りがよく伝わり、逆に、無理にマキシマイズされた音源では、それがありありと暴かれてしまいます。

  • <クラシック>
    『バッハ:ヴァイオリン協奏曲集』
    カール・ズスケ
    20013年作品
    King Record
    輸入盤

ガイザイン近郊のライプツィヒは、J.S.バッハとも極めてゆかりの深い土地。そして、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は、ロマン派の名曲の数々を初演してきました。ゲヴァントハウス弦楽四重奏団のカール・ズスケによるバッハ・ヴァイオリン協奏曲の再生では、楽器の音色が旨味たっぷりに伝わります。着実なテンポから生まれるアンサンブルの間合い、編成のスケール感、そして楽曲構造を、高い客観性で俯瞰させながらも、音楽本来が持つ優美さも漏らさず伝えます。

  • <ピアノ・インストゥルメンタル>
    『Piano Works “For Mr. Lawrence”』
    Jeroen van Veen2019年作品
    Brilliant Classics
    輸入盤

ムジークスピーカーの愛用者として知られる坂本龍一。ミニマル・ミュージックのピアノ作品を中心にレパートリーとするピアニスト、イェローン・ファン・フェーンによる坂本龍一作品のピアノソロ・アレンジ集です。全編通して、豊かなリバーブを纏った遠景のピアノ像が収められていますが、ムジークでの再生では、ピアノの音域を問わず、しっかりと距離感のある音像を描き上げています。静けさや儚さなど、演奏の細かい機微が伝わります。

LINEUP

ME25
Bird Eye Maple Nature/Mahogany/Ash Black
¥370,000(税抜/ペア)

SPEC

[ME25]
●形式:2ウェイ・バスレフ型 ●使用ユニット:25mmトゥイーター×1、125mmウーファー×1 ●周波数帯域:50〜20,000Hz ●クロスオーバー周波数:2,500Hz ●能率:85dB ●外形寸法:205W×320H×220Dm ●質量:5.5kg

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