VGP phileweb

レビュー

  • MARANTZ「NR1711」 三期連続で金賞に輝くスリムAVアンプ
    バイアンプ接続のクオリティもチェック!
    B&W「704S2」と組み合わせて音質レビュー!

    VGP 取材・執筆 / 大橋伸太郎
    2021年12月2日更新

    • VGP審査委員長
      大橋 伸太郎

スリムAVアンプのジャンルを牽引

ホームシアターの音の屋台骨ともいえるアイテムのAVアンプ。その中でもリビングシアターやテレビシアターといった、カジュアルなホームシアターに最適なのがスリムデザインのモデルであり、薄型のためテレビラックなどに置けて導入しやすいアイテムです。

  • AVアンプ
    MARANTZ
    「NR1711」
    ¥103,400(税込)

スリムデザインのAVアンプというジャンルを牽引し続けてきたブランドであるマランツは、数多くのヒットモデルを開発しており、2020年に登場した「NR1711」は発売当初から現在までヒットし続け、大型を含めたAVアンプジャンルのトップを直走ります。オーディオビジュアルのアワード「VGP」でも高く評価され、VGP2021ではアワードのなかでも屈指の優秀賞である総合金賞に認められたモデルのひとつに、そして「AVアンプ スリム/コンパクト」のジャンルでは、VGP2021/VGP2021 SUMMER/VGP2022の三期連続で金賞に獲得する快挙を成し得ています。本稿では、NR1711がヒットモデルであり続けられる秘密とクオリティに迫ります。

  • NR1711は、VGP2011で同社のAVアンプ「SR8015」と「SR6015」と共に、「新世代の3Dオーディオに加え、新4K/8K衛星放送の音声フォーマットにも対応したAVアンプシリーズに対して。」の受賞理由で総合金賞を獲得。「AVアンプ スリム/コンパクト」のジャンルでは、VGP2021/VGP2021 SUMMER/VGP2022三期連続で部門金賞に輝きました。
  • テレビラックにも設置しやすいスリムデザインのAVアンプであるNR1711は、テレビ周りにスピーカー導入する際の中心アイテムとして人気が高く、テレビシアターを構築したいユーザーが必ずといっていいほど選択肢のひとつに選ぶモデルです。

テレビシアターに最適な機能性を網羅

NR1711はスリムモデルでありながら、イマーシブサウンドのドルビーアトモスやDTS:X、新4K/8K衛星放送に採用されている音声フォーマットのMPEG-4 AAC、8K/60Hz・4K/120Hzの映像信号のパススルー、HDR10+やドルビービジョン、HLGといった幅広いHDRフォーマットなど、映像と音声の両方で最新世代の機能性を誇るため、進化が早い4Kテレビと組み合わせても寄り添うことができるのも魅力です。

  • トップ/ハイトスピーカー、イネーブルドスピーカーを使用したシステムが構築できる本モデルは、ドルビーアトモスやDTS:Xといった最新世代の立体音響フォーマットの再生に対応しています。

また、Wi-FiやAirPlay 2、Bluetoothなどワイヤレス機能も豊富な点、ネットワークオーディオ機能のHEOSテクノロジーでのAmazon Music HD、AWA、Spotify、SoundCloudなどの音楽ストリーミングサービスへの対応、最大PCM 192kHz/24bit・DSD 5.6MHz/1bitのハイレゾ音源再生、そして音声操作のAmazon Alexaの機能も導入しているため、音楽の楽しみ方から操作性まで、リビングの中心で活躍するテレビシアターに求められる機能性を網羅していることも見逃せません。

  • ワイヤレス・オーディオシステムであるHEOSテクノロジーを活用すれば、Amazon Music HD、AWA、Spotify、SoundCloudといった音楽ストリーミングサービス、またインターネットラジオのTuneInも楽しむことができます。

Hi-Fiモデルに匹敵する高音質技術を投入

しかし、NR1711の最大の魅力は、スリムデザインながらマランツのサウンドフィロソフィを継承した音質を持ち合わせていることです。搭載された実用最大出力100Wの7chフルディスクリート・パワーアンプは、全チャンネルを同一構成・クオリティを実現しており、アンプの根幹であるブロックコンデンサーはNR1711専用に設計されたパーツを使用、そして25Aの大電流容量に対応した整流ダイオードを採用するなど、同社のHi-Fiモデルを彷彿とさせる高音質技術や高品位パーツを投入しています。

  • マランツが誇るHi-Fiグレードの高音質技術が搭載されていることも特長のNR1711には、高さ105cmのスリムボディに実用最大出力100Wの7chフルディスクリート・パワーアンプを搭載しています。同一クオリティのサウンドを構築できるだけなく、回路設計やパーツ選定においてもメリットがあるため、マランツの思想を継承したサウンドチューニングが施せます。
  • アンプ性能を支える根幹パーツといえるブロックコンデンサーは、NR1711のために専用設計された新開発のカスタムコンデンサー(6,800μF×2基)を投入。さらに25Aの大電流容量に対応する整流ダイオードの採用、パワーアンプ部周辺の回路も細部まで設計するなど、徹底的に音質を追求しています。

NR1711は、アンプ単体でサラウンドとサラウンドバックスピーカーが含まれる7.1chシステムから、トップ/ハイトスピーカーやイネーブルドスピーカーを含む5.1.2chなどのシステムを組めるモデルですが、ステレオ2chでも確かなクオリティを持ち合わせており、フロントスピーカーのバイアンプ接続にも対応するなど、さらにクオリティアップを図ることも可能です。スピーカーを2chで接続しているユーザーも多いことも特長なのです。今回のクオリティチェックでは、B&Wのフロア型スピーカー「704S2」を接続し、2ch再生、そしてバイアンプ接続による再生も検証しました。

  • ■NR1711と組み合わせたスピーカー
    B&W
    「704S2」
    ¥195,800(税込/1本/ピアノ・ブラック)

バイアンプ接続で鮮鋭感と生々しさが格段アップ

まず通常の2ch再生でチェック。4K UHD BD『ゴジラvsコング 』は、NR1711と704S2によるサウンドとの相性が良好で、打てば響くレスポンスであり、4K映像の精細感に音質が遅れを取っていません。BD『ノマドランド』は、効果音やピアノの劇伴が浮遊して漂い美しく、海岸のシーンの波音の量感と劇伴のオーバーラップも解れてしなやか。BD『スパイの妻』では、描写が細やかでセリフのエコー成分も自然に出ており、2ch再生で作品のサウンドデザインをしっかり伝えており、静寂が映画のサスペンスを損ないません。

次にバイアンプ接続を試してみます。『ゴジラvsコング 』は、中高域にからりとした鮮鋭感とスピーディーな響きが生まれます。アクション描写とセリフが重なるシーンで音場の見通しが向上し、セリフが歯切れよく音場に浮かび上がり、アクションの移動表現の鮮鋭感が格段に増します。『ノマドランド』は、夜のシーンのバルコニーで語り合うセリフに量感が増し、肉声の響きが生々しく温かい。感動的な父子連弾のピアノの響きも芯が生まれます。『スパイの妻』は、序盤の鳥の囀りの聴こえる山中の描写に、広々とした空間性が生まれます。また、静寂という空気感の描写、鮮明ながら柔らかく、自然な分離感でセリフを表現します。

2ch音楽も聴いてみると、通常の再生ではNR1711と704S2の組み合わせならではの奥行きある音場に光沢ある声が響き、さらにワイドレンジでずっしり重心の低い音場でしたが、バイアンプ接続にすると、ボーカルの質感がベールを剥がしたよう生々しくなり、一気にグレードアップしたことがわかりました。

マルチチャンネル再生やイマーシブサウンドのクオリティはもちろん、バイアンプ接続によってとことん2ch再生の音質を追求したクオリティも充分な実力を持ち合わせているNR1711。本モデルを使いこなすほど、多くのユーザーに愛されるヒットモデルである理由が随所に見えてきます。

  • 今回、NR1711のバイアンプ接続の取材では、まずAVアンプのセットアップから「スピーカー/マニュアルセットアップ」の「スピーカー/アンプの割り当て」を変更。アサインモードを「Bi-Amp」に設定してから、スピーカーへのバイアンプ接続を行いました。
  • 「スピーカー/スピーカー構成」で、スピーカーの有り/無しとサイズを設定。フロント以外のスピーカーを「無し」に設定し、フロア型スピーカーの704S2に合わせてフロントスピーカーの大きさを「大」にしています。
  • バイアンプ接続を行う場合、通常のフロントLRのチャンネル、サラウンドバックLRをバイアンプ接続のチャンネルとしてスピーカーに繋げます。今回の取材では、フロントLRをトゥイーター用端子、サラウンドバックLRをウーファー用端子に接続しました。これにより、ウーファーからの逆気電力による悪影響を回避できます。
  • スピーカー側は、トゥイーター部とウーファー部でターミナルが分かれているバイアンプ構成になっているモデルで再生することができます。スピーカーケーブルを接続する際は、トゥイーター部とウーファー部の端子を繋げているジャンパーケーブル/プレートを外してから接続します。
  • NR1711の映画・音楽再生の音質をチェック。通常の2ch再生とバイアンプ接続による再生を比較しました。スピーカーの本領発揮の音を、バイアンプ接続だからこそ体感できます。

SPEC

MARANTZ「NR1711」
●パワーアンプch数:7ch ●定格出力:50W+50W(8Ω、20-20,000Hz、2ch駆動時) ●実用最大出力:100W(6Ω、1kHz、1ch駆動) ●周波数特性:10~100,000Hz ●S/N比:98dB(IHF-A、ダイレクトモード時) ●入力端子:HDMI×6(8K対応×1)、光デジタル音声×1、同軸デジタル音声×1、アナログ音声×3、PHONO(MM)×1色差コンポーネント×2、コンポジット×3、LAN×1、USB×1 他 ●出力端子:HDMI×1、2.2chプリアウト×1、ヘッドホン×1、色差コンポーネント×1、コンポジット×1 他 ●ワイヤレス機能:Bluetooth Ver4.2、Wi-Fi(5GHz、2.4GHz)、AirPlay 2 ●対応サンプリング周波数/量子化bit数:PCM→最大192kHz/24bit、DSD→最大5.6MHz/1bit ●消費電力(待機時):250W(0.2W) ●外形寸法:440W×105H×378Dmm(アンテナを寝かせた場合) ●質量:8.3kg