VGP2022 特別インタビュー[ビジュアル編]批評家大賞に輝いた理由を徹底解剖!|ホームシアターCHANNEL
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レビュー

  • VICTOR「DLA-V90R」 VGP2022 特別インタビュー[ビジュアル編]
    批評家大賞に輝いた理由を徹底解剖!
    プロジェクターの新時代を切り拓く先駆的モデル

    VGP 取材・執筆 / 大橋伸太郎
    2022年7月6日更新

    • VGP審査委員長
      大橋 伸太郎

「8K. LASER. HDR」で、プロジェクターによる究極の高画質を追求した、最上位モデル「DLA-V90R」。新たに“Victorブランド”として開発された本モデルは、ホームプロジェクターを牽引してきた同社が、さらにプロジェクターの新時代を作り上げていくことを表明した証ともいえます。DLA-V90Rは、VGP2022で高く評価され、栄えある「批評家大賞」に輝きました。そのDLA-V90Rの魅力を、特別インタビューを通して解き明かしていきます。

  • VICTOR」
    「DLA-V90R」
    ¥2,882,000円(税込)

ハイエンドユーザーの心を掴んだ最上位機

大橋氏 この度は、VGP2022においての批評家大賞の受賞、おめでとうございます。本日はオンラインにて、改めて「DLA-V90R」が批評家大賞を獲得するに至った技術力の高さなどについて、開発者の方々と意見を交えていきたいと思います。

こういった時世により販促イベントなどは、なかなかできない現状だと推測されますが、現時点でのユーザーの手応えはいかがでしょうか? 御社のハイエンドプロジェクター群を愛用してきた多くのファンがいらっしゃいますが、待望のモデルが登場したという方も多いのではないでしょうか。

那須氏 お陰様で、やはり買い替えのお客様を中心に非常に好評で、DLA-V90RとDLA-V80Rにおいては想像以上のレベルです。国内だけでいうと、同時に発表した、DLA-V90R/V80R/V70R、3機種合わせたバックオーダーを数百台レベルで抱えている状態です。販売店などで実際に試聴されてから購入いただくのが難しい状況ですが、ご覧いただいたお客様からは高い評価を受けています。

大橋氏 今回、VGP2022で批評家大賞を受賞したモデルはDLA-V90Rですが、V80RとV70Rの2機種も非常に性能が高く、各モデルで価格差は大きいですが、スペック的要素だけでいえば共通する部分も多く、ビクターファンに喜ばれそうですね。3モデルの価格差は画質の差に直結する、クオリティに関わるパーツの違いにあるという印象です。

那須氏 ハード面の一番の違いはレンズですが、これは画質に直結し、値段に比例するもとになります。DLA-V90RとV80Rの値段差は100万以上ありますが、しかし販売台数はほぼ同等で、我々が思っていた以上に、DLA-V90Rを選ばれるお客様が多い印象です。

大橋氏 それはとても凄いことですよね。ハイエンドユーザーの心を掴んだ証ですね。DLA-V90Rを含め、3モデルの視聴が行えるユーザーイベントなどで、ユーザーのどのような反応が印象的でしたか?

岡本氏 ユーザーイベントでは、HDR10+と「Frame Adapt HDR」の両モードの見比べを行いましたが、どちらも良いもので共通する部分も多いにあるため、HDR10+への対応も喜ばれましたし、Frame Adapt HDRの傾向も気に入っていただいていた印象でした。

Frame Adapt HDRは、我々のアルゴリズムでコンテンツを解析する、当社の論理で開発してきたものですが、今回HDR10+に対応したことで、HDRのレファレンスを持つことができたイメージです。そこからFrame Adapt HDRのチューニングの方向をどう持っていくか、開発側のアプローチに変化が表れた部分だと感じています。前モデル「DLA-V9R」と比較して、HDR10+の画を観ながら、より良くする方向に追い込んでいけました。

  • VGP2022で批評家大賞を受賞した、VICTORの8Kプロジェクター「DLA-V90R」。今回、VGPアワードの審査委員長を務める大橋伸太郎氏が、DLA-V90Rの魅力に迫るべく、開発陣にオンライン・インタビューを実施しました。

レーザー光源の採用によってHDR表現が飛躍的にアップ

大橋氏 開発時期では、HDR10+というHDRのお手本を知ることでそこからさらに学び、Frame Adapt HDRのブラッシュアップに繋げたのですね。レーザー光源の採用は、DLA-V90R、そしてV80R、V70Rにおいても大きな進化だったといえますが、レーザー光源ならではの画作りといったものは、どのような部分に反映されているでしょうか。

岡本氏 レーザー光源になったことによって明るさのルーメン値が上がったことや明度の見え方の差、そういった部分も加味して「Frame Adapt HDR」のチューニングも追い込んでいき、最上位モデルとしてふさわしいパフォーマンスを引き出せるようにしています。

那須氏 従来までの機械式アパーチャーや絞りだとどうしてもタイムラグがあるなか、レーザー光源は瞬時に光量を落とすことができる、ダイナミック制御の点においてもメリットがありました。開発陣も非常に苦労した部分なのですが、そういった追い込みもあって、よりダイナミックレンジ感のあるHDR映像を実現できたと思います。

岡本氏 レーザー光源のダイナミック制御についてですが、映像フレーム毎に、映像の情報に従って、光源をまさにダイナミックに変えられることによるメリットが大きく2つありました。

ひとつは、暗いシーンで黒を沈められることです。本当の黒を表現できるようになりました。これによってダイナミックレンジがいっそう広がりました。もうひとつが、暗部の階調性です。今までの固定の光源で暗部を表現する際、パネル側で表示できる狭い範囲の領域で画を再現しなければいけなかったのですが、光源側で黒レベル自体を下げられるようになったことで、パネル側で表示できる範囲を広げられ、沈むだけの黒から階調のある暗部表現を実現しました。

明るいシーンでは、光源の出力が上がったことで無理なくピーク感を明るく表現できるので、素直で伸びやかなレンジの広がりを実感してもらえると思います。もう一点加えるとしたら、HDR10+の対応を実現するために、暗部と明部の性能を非常に高い水準で求められるため、ダイナミックレンジにおいてはかつてないほどの性能を発揮できています。

  • DLA-V90Rには、業務用として採用実績がある、高輝度と耐久性に優れたレーザー光源「BLU-Escent」が新たに搭載されており、最大3000ルーメンの高輝度と、20000時間の長寿命を実現しました。輝度をダイナミックにコントロールすることで、より人間の感覚に近く、かつ迫力のある映像表現を可能としています。
  • 「Frame Adapt HDR」は、コンテンツに含まれるフレームごとの最大輝度を独自のアルゴリズムによって解析し、ダイナミックレンジをリアルタイムで最適化して映像投写する機能。これによって、HDRのダイナミックメタデータがない映像信号においても、プロジェクターのHDR表現に合わせた投写が可能です。

パンデミックの影響を乗り越え最高画質を追い求めた

大橋氏 圧倒的なHDR表現は、レーザー光源を徹底的に使いこなした結果ということですね。今回、DLA-V90R/V80R/V70Rは、非常に長い開発期間を費やしたとうかがしましたが、開発スタートはいつからだったのでしょうか? また、コロナ禍も重なってしまう状況でしたが、開発には大変苦労されたのではないでしょうか?

浅賀氏 企画的な部分は、2019年からスタートしています。「東京オリンピックまでに8Kモデルを」という課題がありましたが、当時は8K入力が可能なHDMI基板もなく、困難を極めました。さらに2020年度に発売するという動きも、新型コロナウイルスの影響によって、需要の部分も含めて読み切れない部分がありました。

新型コロナウイルス、そして半導体不足の影響で、試作サンプルが十分に作れない状況があり、開発陣にはコロナ禍における開発の流れの見直し、コミュニケーションの方法など、いろいろと相談することが多い中で開発を進めていきました。また、半導体の供給というのもかなり影響しております。開発時もそうですが、発売後もその影響は大きいですね。

また、半導体だけでなく、光学レンズや各種パーツ、それぞれの部品で影響を受けました。どの国で、どのタイミングでパンデミックが起きているのか、それを把握しながら開発を進めていくのも至難でした。何回も障害にあって断念していた開発が、ようやくここで日の目を見られたという喜びもあり、今回VGPアワードで高く評価してもらえたことは本当に嬉しかったです。

大橋氏 パンデミックによる影響は、やはり多大だったのですね。ここ数年、映像作品の流れというのも変化してきました。映像ソースというものが、パッケージメディアから動画配信サービスへと急速にシフトしていきました。映像を観る行為の性質の変化が同時に起きたといえます。

しかし、ビクターのプロジェクターというのは、ブルーレイであったり、4K Ultra HDブルーレイであったり、時代の最高品位のパッケージメディアを楽しむユーザーと密接に結びついている印象があります。そういったファンが多いなかで、映像視聴のスタイルに変化をどのように受け止めたのでしょうか? ハイエンドプロジェクターを開発するにあたり、例えば迷いや方向の修正、またチャンスと捉えるか、どのような心境だったのでしょうか?

那須氏 仰るとおりで、本当にここ数年で「テレビを観なくなった」「Netflixを観ている」、そういった声が増えました。しかし、我社のプロジェクターは、その当時にある一番クオリティの高い映像作品を綺麗に見せようというのが基本的なコンセプトにあるため、我々の開発時のレファレンスとなるのは、やはり4K Ultra HDブルーレイになります。

ただ、今回は8K対応という部分で、8K作品でクオリティを確認するためには、インターネット上にある映像、8K映像のファイル再生などを視聴する必要がありました。PCと繋がったことで、YouTubeにある8Kコンテンツを実際に評価で使用してみたり、また4K版だとどのように見えるのか、ネットワークの回線速度によって階調の段差がどう表れるのかなど、確認することがこれまで以上に増えました。

こういった検証が、例えば「Multiple Pixel Control」のモード設定も3種類になるなど、調整項目の改善にも繋がっています。さまざまな映像作品、そして映像ソースに対して、最適なクオリティを出せるようにする、そのアプローチの幅が今まで以上に広がったと感じています。

8K高解像度の魅力を引き出す独自技術が満載

大橋氏 ハイエンドプロジェクターの開発コンセプトはブレることなく、むしろ突き詰めていくことで、動画配信サービスによる映像に対してもクオリティを追求できたのですね。新開発の「8K/e-shiftX」についてですが、従来の手法から各段に緻密なものになりましたが、どのような開発経緯があったのでしょうか?

佐藤氏 まず、今回のモデルに搭載した0.69型の4K D-ILAデバイスには、映像表示の速度を240Hz相当にする課題があり、そこをクリアしたうえで8K映像が出力できるという目途が立ち、8K/e-shiftXの開発に進みました。

また、従来モデルでは若干ノイズが出ているという指摘もいただいていたので、240Hz相当への対応と同時に社内開発を進めていた色階調性を高めるシネマフィルターの技術も導入し、そこから8K映像の検証を行っていきました。240Hzにするとひとつのフレームの階調数が減ってしまう可能性もありましたが、HDR10+対応にも関わってくることなので、ノイズ低減と階調精度を同時に高めていくことも必要でした。

前モデルが2方向だったのに対して、8Kの情報をまるっきり入れて4方向シフトにすることで、解像感をしっかりと出しつつ、階調性も損なわないようにしています。LCOSのD-ILA素子の階調の精度を高めることで、段差の出ないスムーズな階調表現ができるよう、重点的にブラッシュアップしています。

大橋氏 なるほど。また、DLA-V90Rでは、さらに光学性能の向上に努めたと聞きました。主にプリズム偏光方式を見直し、光の出力を高めたと伺っていますが、具体的にどのようなこと行っているのでしょうか?

菊間氏 明るさを3000ルーメンにアップさせるために前モデルから改善した内容としては、レーザー光源「BLU-Escent」のレーザーと蛍光体という組み合わせを採用することで励起光の効率をアップ、蛍光体による効率化、RGB色域の設計、これらによって明るさの向上を図りました。

オールガラスレンズは、視聴していただいたとおり、全画面にわたって高解像度が確保されています。「8K/e-shiftX」で、8K表示するにあたっても、ボケた映像にならない、はっきりくっきりとした8K映像を表示できていると思います。

那須氏 開発陣に画作りについて話を聞いたとき、DLA-V90Rの画作りは、エンハンスを大幅に調整したり、解像感を演出する必要がなく、ほとんど何も足すことなく、そのまま出力することで綺麗に映し出すことができる、それはオールガラスレンズの特長に結びつくと言えます。

大橋氏 よいレンズを使えば、素直な手法でよい画になっていく、8Kのよさが自然と出ますし、それは4Kや2Kでも同じ結果となって表れるということですね。

  • 独自デバイス「0.69型4K D-ILA」は、パネル駆動性能の改良により、従来モデルの2倍となる240Hz相当の高速で映像を表示させることが可能になりました。またDLA-V90Rに新たに搭載された光学エンジン「Ultra-High Contrast Optics」では、プリズムの偏光方式と光学系内部の構造を改良することで、光出力の向上と不要な反射光の抑止を実現しています。
  • 画素を0.5画素シフトすることで解像度を倍増化する高解像度表示技術であるe-shiftテクノロジーを、DLA-V90Rではさらにブラッシュアップ。「8K/e-shiftX」では、従来の2方向のシフトから、上下左右の4方向にシフトすることで、8K映像の再現能力を高めています。8K/60p、4K/120pの入力に対応した点もポイントです。
  • DLA-V90Rには、16群18枚オールガラス・オールアルミ鏡筒レンズを搭載。100mmの大口径で、R/G/Bの屈折率の違いに合わせて調整された5枚の特殊低分散レンズを採用しているため、上下100%・左右43%のシフト範囲を確保しながらも、シフト時の色収差や色にじみを低減させています。

“映画画質の追求”を徹底した新時代プロジェクター

大橋氏 DLA-V90Rを何度か視聴させていただき、4K Ultra HDブルーレイタイトル、そしてBDによるフルHDの映像も拝見しましたが、どのコンテンツにおいても、その画質のよさに感銘を受けました。4K、8Kといった高精細な映像だけでなく、全ての映像ソフトを受け止め、最高画質で映し出すことできるプロジェクターだと感じました。

御社は、DLAホームプロジェクターが誕生してから23年、映画のフィルムに込められた階調や色彩情報、ニュアンスの追求を一貫してきましたが、今回のモデルも根底に“映画画質の追求”があることが顕著に表れていました。

岡本氏 HDR10+対応のホームプロジェクターは世界初であり、HDR10+の米国のwebサイトでも、当社のプロジェクターが最初に掲載され、そういった点も自信を持ってお薦めできます。

菊間氏 DLA-V90Rは、約300万の高価なプロジェクターですが、それだけの価値を必ず体感してもらえると思いますし、最高の映像を楽しんでもらえるはずです。

佐藤氏 私はマーベルの映画が好きで、ドルビーシネマで『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』も観たのですが、そのときの映像に負けないくらい、いやそれ以上のプライベートなシネマ体験を、暗部の表現や色合い、ネイティブコントラストやノイズ感なども含め、DLA-V90Rは叶えてくれると思っています。

大橋氏 最新作品から旧作まで、膨大な映像資産があるなか、DLA-V90Rであれば、それを安定した最高の画質で体感することができる、最高の映画館が手に入るということですね。新時代のプロジェクターの誕生を心待ちにしていた、多くユーザーの方々に体感してもらいたいですね。本日はありがとうございました。

  • <取材協力>
    写真左から
    株式会社JVCケンウッド
    MS分野 メディア事業部 第一技術部 電気G
    浅賀 稔樹 氏
    MS分野 メディア事業部 第一技術部 ソフトG
    岡本 直也 氏
    MS分野 メディア事業部 第一技術部 光学G
    菊間 慎二 氏
    MS分野 メディア事業部 第一技術部 システムG
    佐藤 昭浩 氏

SPEC

DLA-V90R
●投写形式:反射型液晶 ●投写デバイス:0.69型 4K D-ILA×3 ●表示解像度:8192×4320 ●レンズ:100mm・2倍電動ズームフォーカスレンズ ●光源:レーザーダイオード ●投写サイズ:60~300型 ●明るさ:3,000lm ●騒音:24dB ●消費電力(待機時):440W(0.3W) ●主な入力端子:HDMI×2、LAN×1、USB-A×1 他 ●外形寸法:500.0W×234.0H×528.0Dmm ●質量:25.3kg