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レビュー

  • BOSE/SONOS/BOWERS & WILKINS/SONY/BANG & OLUFSEN/SENNHEISER/DEVIALET いまこそテレビでホームシアターを!
    サウンドバー特集 2022 WINTER
    10万円超えサウンドバー7機種をプロが比較。音の評価は?

    取材・執筆 / 岩井喬
    2022年12月21日更新

    • VGP審査員
      岩井 喬

序文〜高級サウンドバーならではの発展性

サウンドバーの高価格帯への流れはここ数年、特に顕著です。10万円を超えるアイテムも決して少なくありません。AVアンプやスピーカーを複数購入して、ドルビーアトモス環境を構築する価格にも比肩するわけで、一体型のスタイルでそれだけの高品位のサウンドを求めるニーズが増えているということの証左でしょう。 

そんな10万円超えのプレミアムサウンドバーのトレンドは、まず、3Dサラウンドへの対応です。試聴した7機種はいずれもドルビーアトモスに対応、一部は360 Reality Audioにも対応しています。DTS:Xについては多くが非対応となり、明暗がわかれました。HDMI入力についても、テレビをハブとして複数機器間でのドルビーアトモスやリニアPCM・マルチch信号伝送も可能となるeARCに対応するモデルが主流となっています。

  • 取材は音元出版の試聴室で、7機種横並びでテストをおこないました。レファレンスとして、プレーヤーにはパナソニック「DMR-ZR1」を使用しました。

機能面では、アプリとの連携や、自動音場補正に注目したいところです。とくに音場補正は専用マイクを同梱するもの、サウンドバー本体に内蔵したマイクを使うもの、アプリ連携でスマホ内蔵マイクを使うものなど、各社各様です。そしてもうひとつ、高級モデルならではといえるのが「発展性」です。別売サブウーファーやリアスピーカーを追加し、サウンドバーを中心としたリアルサラウンド環境を構築できる製品がいくつもありました。たとえば今回の試聴では、ボーズやソノス、ソニーがそうで、住環境や予算に応じてシステムアップできます。しかし機材が増えることや設定が煩わしい、よりシンプルに設置したいというユーザーも少なくないはず。バング&オルフセンやデビアレなど、欧州ブランドはデザインも洗練されていてインテリアとのマッチングに優れています。 

スピーカーユニットの数や総合出力は、単純に多ければよいというわけではありません。低域の量感だけでなく、中高域の音離れのよさ、自然な音色を重視した音づくりという点で、違いが生まれています。実際の音のイメージをチャートにまとめたので、ぜひ参考にしてください。

  • 映画との相性は『エクスペンダブルズ 3』、ライブは『ボヘミアン・ラプソディ』、アニメは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のUltra HDブルーレイでテストしています。音楽はUSBに保存したさまざまなジャンルのハイレゾファイルを再生して確認しました。

Bose「Smart Soundbar 900」〜台詞にメリハリ、低域も力強い

  • BOSE
    「Smart Soundbar 900」
    ¥119,900(税込)

ビームのように多方向へサウンドを放射する独自のPhase Guideテクノロジーに加え、上向きに配置されたスピーカーによってドルビーアトモスに対応。前方にはトゥイーターと4基のフレンジを配置した、合計9基のスピーカーを内蔵。Bose Musicアプリ、ADAPTiQ自動音場補正、ワイヤレスサラウンドスピーカーやベースモジュールを追加する発展性も備えます。天板にガラスを用いた上質なデザインでインテリアにも馴染みます。

低域は重厚だが見通しは浅め。映画のセリフはメリハリがよく、とても明瞭度が高いです。いっぽうSEやBGMは抑え気味で、ダイナミックレンジの表現は控えめです。上方向の広がりは欲張らない自然なテイスト。ステレオの音楽再生では管弦楽器やピアノを細かくスッキリと表現してくれると同時に、ボーカルは肉付きよく張り感もあります。声の帯域を含め、分離感は幾分ソフトに感じるものの、ローエンドは豊かで力強いです。

  • 「Smart Soundbar 900」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(eARC/ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X –
    音場補正 ○
    アプリ ○

BOSE「Smart Soundbar 900」
●総合出力:非公開 ●構成:3.0ch ●スピーカー:9基(フルレンジ4基、トゥイーター1基、フェイズガイド2基、上向きスピーカー2基) ●接続端子:HDMI×1、光デジタル音声入力×1、LAN×1、USB×1、IR×1、サブウーファー出力×1、外部マイク入力
×1 ●外形寸法:1045W×58.2H×107Dmm ●質量:5.75kg

SONOS「Arc」〜シンプルな構成で、迫真の臨場感

  • SONOS
    「Arc」
    ¥129,800(税込)

アカデミー賞受賞歴のあるサウンドエンジニアもチューニングに参加したという意欲作。上方向や真横、正面左右・センターに楕円状のミッドウーファー8基、センターと角度をつけて配置されたトゥイーター3基を併せた11基のスピーカーからなっています。スマホのマイクで室内音響を測定するTrueplayチューニングを用いた音場補正、別売の同社製サブウーファーやリアスピーカーを追加したリアルサラウンドの構築も可能です。

落ち着きがあって、スッキリとしたセリフの描写は抑揚もあり、肉付きも感じられます。SEやBGMは重厚感があって迫力があります。低域は太くリッチで、奥行き方向の広がりも深い。銃撃などの金属音のリアルさや、ふわっと浮き上がる上下方向の自然な空間性も印象的。ステレオの音楽再生でもナチュラルで艶やかな楽器表現と、密度よくパワフルなリズム隊の押し出し感を両立。オーケストラの管弦楽器は爽やかです。

  • 「Arc」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(eARC/ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X –
    音場補正 ○
    アプリ ○

SONOS「Arc」
●総合出力:非公開 ●構成:5.0ch ●スピーカー:11基(楕円型ウーファー8基、トゥイーター3基) ●接続端子:HDMI×1、光デジタル音声×1 ※アダプターで対応、LAN×1 ●外形寸法:1142W×87H×116Dmm ●質量:6.25kg

BOWERS & WILKINS「Panorama 3」〜潔く、磨き上げられた高音質

  • BOWERS & WILKINS
    「Panorama 3」
    ¥159,500(税込)

ブランドとして初めて、ドルビーアトモスに対応したサウンドバー。オプションで繋がるリアスピーカーやサブウーファーはなく、自動音場補正も非搭載です。潔い仕様で、一体型としての完成度、音質を追求した設計が特長です。スピーカーユニットも歪みが増える楕円形を排除。チタントゥイーター3基、グラスファイバーユニット6基、上向きスピーカー2基、サブウーファー2基からなる合計13基のユニット構成を持っています。

サラウンドは、後方への回り込みや上方向の浮き上がりもエンハンス感を抑えた自然なタッチで、ローエンドも密度よく、伸びやかに表現します。セリフも音ヌケよく爽やか。ライブ映像では、ボーカルの息遣いもリアルに描写します。声や弦楽器などの質感は倍音の艶感もよく、とても上品です。細やかなSEの再現度も高く、解像度も十分。ステレオ再生では音像の密度も高く、管弦楽器も太くコシのある描写を見せます。

  • 「Panorama 3」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(eARC/ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X –
    音場補正 –
    アプリ ○

BOWERS & WILKINS「Panorama 3」
●総合出力:400W ●構成:3.1.2ch ●スピーカー:13基(バス/ミッド6基、トゥイーター3基、上向きスピーカー2基、サブウーファー2基) ●接続端子:HDMI×1、光デジタル音声入力×1、LAN×1、USB×1 ●外形寸法:1210W×65H×140Dmm ●質量:6.5kg

SONY「HT-A7000」〜スリリングな移動表現は見事

  • SONY
    HT-A7000
    ¥OPEN(直販サイト価格¥154,000/税込)

7.1.2ch構成のドルビーアトモス、360 Reality Audio対応モデル。高さを抑えた薄型スタイルで、シンプルな装いにまとめています。別売のワイヤレスリアスピーカーを加えることで独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」に対応。複数のファントムスピーカーを創出し、360度包まれるような空間を作り出せます。合計11基のユニットを搭載。サウンドバー本体に内蔵されたマイクによる自動音場補正機能も備えています。

今回試聴した7モデルの中では後ろ方向へ回り込むSEの再現性が最も優れており、広がりよく展開するBGMも含め、空間表現の豊かさ、サラウンド表現については全般的に満足感が高いです。セリフは軽やかでハリ感よく浮き上がります。口元のニュアンスも丁寧にトレース。銃声の描き分けも細やかで厚みも程よいです。ステレオ再生では凝縮感と厚みのある中低域が支えとなり、ボーカルもボディ感はしっかりとしています。

  • 「HT-A7000」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(eARC/ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X ○
    音場補正 ○
    アプリ ○

SONY「HT-A7000」
●総合出力:500W ●構成:7.1.2ch ●スピーカー:11基(フルレンジ5基、ウーファー2基、ビームトゥイーター2基、上向きスピーカー2基) ●接続端子:HDMI出力×1、HDMI入力×2、光デジタル音声入力×1、ステレオミニ音声入力×1、USB×1 ●外形寸法:1300W×80H×142Dmm ●質量:8.7kg

BANG & OLUFSEN「Beosound Stage」〜音楽表現も、美しく洗練されている

  • BANG & OLUFSEN
    「Beosound Stage」
    ¥259,900(税込)

オプションとして壁掛け時に映えるファブリックグリルや、アルミ/木目調フレームを用意するなど、北欧ならではのインテリアに馴染む美しいデザインも魅力的。ラックへの平置きにも対応します。ウーファー4基、ミッドレンジ4基、トゥイーター3基からなる11基のユニット構成で、それぞれ50Wアンプで駆動します。左右両端側のフルレンジ&トゥイーターはアングルを付けて配置されているようです。

ひとつひとつの音の表現が丁寧で伸びやか。ローエンドも過度な誇張が抑えられています。管弦楽器のニュアンスは落ち着いたクールなサウンド傾向を持ちます。サラウンドでは、SEの銃声はキレよくクリアに浮き立ち、上方向よりは横方向に広がりを感じます。セリフはハリ感を備えつつ聴き心地のよい軽やかな表現。ステレオの音楽再生ではピアノやシンバルの自然な響き、制動の効いた低域と艶やかなボーカルが印象的です。

  • 「Beosound Stage」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(eARC/ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X –
    音場補正 –
    アプリ ○

BANG & OLUFSEN「Beosound Stage」
●総合出力:550W ●構成:3.0ch ●スピーカー:11基(ウーファー4基、ミッドレンジ4基、トゥイーター3基) ●接続端子:HDMI出力×1、HDMI入力×1、ステレオミニ音声×1、LAN×2 ●外形寸法:1100W×170Hx77Dmm ●質量:8.0kg

SENNHEISER「AMBEO Soundbar」〜超弩級サイズはダテじゃない!

  • SENNHEISER
    「AMBEO Soundbar | Max」
    ¥OPEN(公式サイト価格 ¥357,500/税込)

収音から再生まで一貫して構築する、ゼンハイザー独自の立体音場技術「AMBEO」搭載、ドルビーアトモスや360Reality Audioにも対応するサウンドバー。堅牢なアルミ筐体製で、セルロースサンド振動板ウーファーを6基、アルミドームトゥイーターを5基、そして上向きユニットを2基備えた、スピーカー13基構成。同梱された専用マイクで自動音場補正もおこなえます。今回試聴したものの中では最も重く、高さもあります。

音質面では最もナチュラルで立体的、リアルなサラウンドを聴かせてくれました。解像度も高く、上方向の再現性も高いです。BGMのキメの細かさ、SEの鮮度の高い描写力にも驚かされます。セリフは太さもあり抑揚よく描きます。息継ぎのニュアンスも生々しいです。ステレオの音楽再生ではリズム隊のアタックが正確で、自然に浮き立つ管弦楽器や緻密な響きを巧みにまとめるシンバルやピアノ、ホーンセクションの再現度が見事。

  • 「AMBEO Soundbar | Max」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(eARC/ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X ○
    音場補正 ○
    アプリ ○

SENNHEISER「AMBEO Soundbar | MAX」
●総合出力:500W ●構成:5.0.2ch ●スピーカー:13基(ウーファー6基、トゥイーター5基、上向きスピーカー2基) ●接続端子:HDMI出力×1、HDMI入力×3、光デジタル音声入力×1、アナログ音声入力×1、USB×1、サブウーファー出力×1、外部マイク入力×1 ●外形寸法:1265W×135H×171Dmm ●質量:18.5kg

DEVIALET「Dione」〜デジタル技術による巧みな表現

  • DEVIALET
    「Dione」
    ¥389,000(税込)

総合950Wの大出力アンプを内蔵しつつ薄型にまとめられたサウンドバー。背面対向設置された楕円形サブウーファー8基と上向きを含む9基のアルミコーンフルレンジからなる合計17基のスピーカーを搭載。このうち独特な意匠のセンター用フルレンジは、壁掛け時でも正面を保つORB技術を用いています。自動音場補正や独自のアンプ技術ADHスピーカー特性とのマッチングを図るSAM技術を統合したSoCも内蔵しています。

落ち着きと余裕のあるサラウンド表現。重厚で逞しいローエンドによって、ヘリや銃撃音など迫力あるSEが展開。程よい広がりを感じられます。BGMもパワフルに響き渡ります。セリフはボディの厚みを持たせた穏やかなタッチで、口元の潤い感も丁寧に引き出します。ステレオの音楽再生では量感ある低域を制動よくまとめ、ホーンセクションや弦楽器も厚みよく滑らかに表現。低重心なボーカルもハリよくスムーズに描きます。

  • 「Dione」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(eARC/ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X –
    音場補正 ○
    アプリ ○

DEVIALET「Dione」
●総合出力:950W ●構成:非公開 ●スピーカー:17基(フルレンジ9基、サブウーファー8基) ●接続端子:HDMI×1、光デジタル音声入力×1、LAN×1 ●外形寸法:1200W×77H×165Dmm ●質量:12kg

まとめ〜サウンドバーの領域を超える音のクオリティ

筆者が音質面で感心したのは、B&W「Panorama 3」です。自動音場補正も廃し、オプションでサブウーファーやリアスピーカーを繋ぐこともできない、本当の意味での高級一体型モデルであり、音像の芯を捉えた自然なサウンドを含め、スピーカーブランドならではの矜持が込められた仕様です。サブウーファーはサウンドバー本体とのクロスオーバー周波数が100~200Hzに設定されているものが多く、低域に定位が生まれてしまいます。ステレオ創成期の楽曲によってはベースが左右どちらかに振られることもあり、サブウーファーのある位置が楽曲定位と逆の場合、位相も含めておかしくなってしまいます。サブウーファーを一体にするメリットはこのような問題を回避できることにもあります。

今回の試聴の中で特に理想的なサウンドであったのがゼンハイザー「AMBEO Soundbar | Max」です。筐体は大きく、設置面で工夫が必要ではあるものの、3Dサラウンドの再現性や基本的な音のバランスに優れ、分離よく自然に定位する音像のフォーカス感も、サウンドバーの領域を超えるクオリティでした。ゼンハイザーならではの強みが見える音場補正用の同梱マイクや、音場再生技術の高さも素晴らしいです。これに比肩するクオリティを持つのが前述した「Panorama 3」です。そして空間表現力という点で他を圧倒していたのがソニー「HT-A7000」。頭の後ろまで回り込んでくるBGMやSEの動きに驚かされました。

ぜひ、このテストの結果を、高級サウンドバー選びの参考にしてください。

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