後悔しないスクリーン選びのために
初めてスクリーンを購入する際、何を基準に選んだらいいのかわからない方も少なくないはず。ホームシアターづくりで後悔しないための、スクリーンについての基礎知識をお届けします。まずチェックしたいのは、スクリーンの生地、すなわち幕面の種類です。これによって画質が変わってきます。それからスクリーンの機構です。さまざまな設置方法が用意されていて、それぞれに異なるメリットがあります。では、どんなところに気をつけて選んだらよいか、ご紹介していきましょう。
チェックポイント①〜「幕面」
スクリーンの幕面は、映像の質を大きく左右します。プロジェクターの設置状況や視聴環境、お好みの画質に合わせて最適な幕面を選べば、ホームシアターの感動はぐっと高まります。「マット(拡散型)」、「ビーズ(回帰型)」、そのほかに「パール(反射型)」、「サウンドスクリーン」などがあります。
●マット(拡散型)
もっとも一般的なのは、マットです。これはスクリーンに入射した光を均一に反射する特性を持っていて、どのエリアから見ても均一な映像を見られることが特長です。いわば、万能型の幕面といえます。そのため、ほとんどのスクリーンメーカーがそれぞれに製品をラインアップしています。より高精細かつ高輝度な映像を映し出すために、メーカーそれぞれの工夫があり、さまざまなグレードがあることも特長です。
- プロジェクターが投影した光を全方向に均一に反射するのが特徴。
◯光を偏りなく反射するため、視野角が広く、上下左右どの方向から観ても、明るさやコントラスト、色再現の変化が少ない。
◯視野角が広いので、家族での視聴にぴったり。
◯しっとりとした落ち着いた画質。
×照明などの光も同様に拡散するため、設置環境によって画質が影響を受けやすい。
※写真下は幕面の顕微鏡拡大写真
●ビーズ(回帰型)
これに対してビーズは「回帰型」と呼ばれるように、スクリーンに入射した光を、光の来た方向へそのまま反射させる特性があります。つまりビーズは、マットに比べて拡散性が低い代わりに、より明るい映像が得やすい幕面といえます。たとえば映像が暗くなりがちなリビングでの利用や、プロジェクターの輝度を補うアイテムとして、注目を集めています。
- 幕面に微細なガラス球を散りばめたのがビーズタイプ。プロジェクターが投影した光を入射した方向に反射します。
◯映像光以外の光に影響を受けにくい。
◯明るさの残るリビングや、3D映像を投写する際などのプロジェクターの輝度を補う用途に向いている。
◯煌めきのある画質。
×視野角はやや狭い。
×一般的なビーズは取り扱っているうちに剥離しやすいデメリットも。ただし昨今では、メーカーの努力によって、剥離しにくいモデルも登場しています。
※写真下は幕面の顕微鏡拡大写真
●パール(反射型)
鏡のような反射特性を持つパール。輝度がそれほど高くない3管式プロジェクターの時代など、その明るさが重宝されていた時代もありましたが、最近ではプロジェクターの性能がアップしたため、使われることが少なくなりました。
- プロジェクターからの投影光を入射角に等しい角度で反射します。そのため天吊りにすれば、視聴位置付近で明るい映像が得られます。
◯3Dでの視聴に向いている。
◯艶やかな画質。
×幕面がデリケートなため、シワなどが発生しやすい。
●サウンドスクリーン
映画館で使われているのは、「サウンドスクリーン」です。スピーカーを背後に置くことを想定したもので、音を通すことができるのが特長です。映像と音が一体化するのは、他では得られないメリット。さらにスクリーンの横幅を部屋いっぱいにとれるため、スピーカーの設置スペースを確保したいケースにも重宝します。ただし、音を通す穴を設けているために、画質面では若干の影響があります。
- 音響透過型の幕面を使用。スクリーンの裏側にスピーカーを置いても、音が透過するという特徴を持っています。
◯映像と音とのマッチングが向上します。
◯スピーカーをスクリーンの裏に置けて省スペース。
×幕面に微細な穴やすき間が空いているので、一部の光も同時に透過します。
×モアレがおきる可能性はあります。
チェックポイント②〜「機構」
次に、機構についても重要です。もっとも一般的なのは電動式です。手軽に扱うことができ、生地に負担がかかりにくく、巻き上げておけば汚れも防げます。専用室などでどっぷりと映像の世界に浸りたい画質重視派は、平面性がとりやすい張り込み式がお薦めです。
●立ち上げ式
- ◯ネジなどが使えない賃貸でも気軽に使えます。
◯移動しやすいメリットも。
×普段、置き場所が必要。使うときだけ出すのは手間かも…。
●掛図式
- ◯コストを抑えられるため、導入しやすいです。
×毎回巻き取るためシワやたるみ、ヨゴレが発生しやすいです。
●張り込み式
- ◯上下左右から引っ張ってテンションをかけるため、平面性に優れています。
◯経年劣化に強い。
×幕面を保護しにくい。
×常に壁の面積が占有されるほか、設置に専門知識が必要です。
●天吊り固定電動式
- ◯巻き上げておけば省スペース。
◯スクリーンを降ろす位置を固定できる→初心者にお薦め。
×設置に専門知識が必要。
●天吊り固定手動式
- ◯巻き上げておけば省スペース。
×スクリーンを上げ下げする際に生地に負担をかけやすく、V字たわみがややおきやすいです。
プロジェクターとの相性を考える
プロジェクターの特性をチェックしたうえで、スクリーンを決める視点も重要です。スクリーンを大きくしたいなら、その大きさに見あった明るさを確保したいところ。プロジェクターの明るさとのバランスを考えて、適切な幕面とインチサイズを選びましょう。
- スクリーンが大きくなればなるほど、より明るいプロジェクターが必要になります。プロジェクターの輝度を確認してからスクリーンを選びましょう。
- スクリーンサイズ表
また、昨今では、超短焦点プロジェクターがトレンドになっています。とても短い投写距離で大画面を得られるため、壁に映像を投写できます。しかし急角度で投写するために、通常のプロジェクターで壁に投写する場合よりも、壁紙のデコボコが目立ちやすいなど、画質面でデメリットがあります。それを補い、さらにメリットに変えるために、テレビのように明るい大画面が得られる特殊加工を施した「超短焦点プロジェクター専用タイプ」のスクリーンもあります。天井からの明るさはカットして、下からのプロジェクターの映像は反射する特殊な幕面になっています。
VGP金賞、エリートスクリーンの超短焦点プロジェクター専用タイプ
あなたが理想とするホームシアターにあわせて、スクリーンの幕面や構造を選んでみてはいかがでしょうか?