映画館でも使う最先端のサウンド
「もっと深くホームシアターを楽しみたい」、「映像と音響の技術を知りたい」、そんな声に応える連載「基礎から学ぶ、1歩先のホームシアター」。今回は、映画館からホームシアターまで採用されている、立体音響方式のひとつである「ドルビーアトモス」を解説していきます。
- 映画作品などに「ドルビーアトモス」が採用されている場合、Ultra HDブルーレイなどのパッケージにロゴマークが記載されています。また、対応しているオーディオビジュアル機器などにも、ドルビーアトモスのロゴマークが付いています。
- ホームシアターだけでなく、映画館でもドルビーアトモスによる立体音響を楽しむことができます。『アベンジャーズ/エンドゲーム』が放映されたドルビーシネマでも、もちろん採用されており、映画への没入感をさらに高めてくれます。
第2回はこちら>>>シアターファンが知っておきたい!「Wi-Fi6」の基礎
作品に入り込んだようなリアリティ
従来のサラウンドと一味違うのが、平面的ではなく立体的な音場を体感できることです。作品への没入感を、映像からだけでなく音響の面でも高めてくれる音声フォーマットであり、近年では「イマーシブ(没入型)サウンド」などとも呼ばれることがあります。ドルビーアトモスは、イマーシブサウンドのひとつであり、代表的な音声フォーマットと言っても過言ではありません。
サラウンドでは、前後左右の音を中心とした音情報が作品に収録されていましたが、ドルビーアトモスはそこに頭上方向からの音情報が追加されています。そのため、ヘリコプターが頭上を飛び去るように移動する効果音や、雨が上から降ってくる音など、今まで以上にリアリティ高く体感できることが特長です。
- サラウンドは左右や前後から音が聴こえてくる環境でしたが、イマーシブサウンドと呼ばれるドルビーアトモスでは、頭上からも音が聴こえてくる立体的な音場空間を作ることができるため、まるで上から下まで音に包まれたサウンド体験が味わえます。
天井のスピーカーがカギ!
ホームシアターでドルビーアトモスを楽しむ場合、天井にスピーカーを2本、または4本など、設置する必要があります。またスピーカーの本数の数え方も従来と異なり、サラウンドの場合「7.1ch」と記されてる場合は「7」がスピーカーの本数で、「.1」がサブウーファーの本数を示していましたが、ドルビーアトモスなどのイマーシブサウンドを数字で記す場合は、先ほどのサラウンドの表記にさらに数字を加えた「7.1.4ch」などと表記されます。付け加えた「.4」の数字が天井スピーカーなど、頭上方向のサウンドに使われるスピーカー数を意味しています。
- 左の図は、前後左右のスピーカーを7本、サブウーファーを1本、そして天井スピーカーを4本組み合わせたシステムの図であり、これを数字で表すと前後左右/サブウーファー/天井の順に並べた、「7.1.4ch」となります。この数値を知っておくと、AVアンプなどの操作を行う際にも役立ちます。
- 天井スピーカーは、「トップスピーカー」や「オーバーヘッドスピーカー」などと呼ばれています。フロントスピーカー側/リスナーの真上/リアスピーカー側(サラウンドバック)など、設置場所に種類があり、また適切な設置位置などもあります。天井スピーカーの最適な設置位置は、ドルビーラボラトリーズのHPで紹介されているガイドラインを参考にしてください。
手軽に楽しめるスピーカーもある!
ドルビーアトモスをホームシアターで楽しむためには、対応したAVアンプと天井スピーカーを使用することが好ましいです。しかし、天井にスピーカーをユーザー個人で設置することはハードルが高いです。
そこで、より手軽にドルビーアトモスを楽しめる方法があります。それが「ドルビーイネーブルドスピーカー」です。フロントスピーカーやリアスピーカーの上に置くだけで設置はOK。ドルビーイネーブルドスピーカーから出た音を、天井から反射させることで、天井スピーカーの代わりをしてくれます。
- 写真は、英国のスピーカーブランド「KEF」の「Rシリーズ」にラインアップされているドルビーイネーブルドスピーカー「R8a」。サラウンドを組めるスピーカーシリーズをラインアップされているブランドには、ドルビーイネーブルドスピーカーも揃えられていることが多いです。ほかにも、ELACやELIPSON、DENONやONKYOなども用意しています。
- ドルビーイネーブルドスピーカーを採用したホームシアターシステムの図。前後左右に7本、サブウーファーを1本、ドルビーイネーブルドスピーカーを4本設置した「7.1.4ch」システムです。ドルビーイネーブルドスピーカーは天井スピーカーの本数表記と同じように、最後の数字が本数を意味します。
サウンドバーだって楽しめる!
ドルビーアトモスをさらに手軽に楽しめるオーディオ機器も登場しており、その代表的なものがサウンドバーです。テレビに繋ぐだけで、簡単にドルビーアトモスを体感することができます。また、テレビのスピーカーで再生できるモデルも登場しています。Ultra HDブルーレイなどのディスクメディアだけでなく、動画配信でも採用されている音声フォーマットであり、どんどん身近になっているドルビーアトモス。ぜひ一度、イマーシブサウンドならではの、没入感の豊かさを体感してみてください。
- ソニーから登場している「HT-Z9」や「HT-X8500」、パナソニックの「SC-HTB01」などは、サウンドバーでドルビーアトモスに対応しているモデル。テレビとサウンドバーで、最先端の立体音響が楽しめます。