HDMIのARC/eARCの特長をおさらい
テレビの音を、簡単にもっといい音で楽しみたい。そんな方にとってHDMI(ARC/eARC)は頼もしい存在です。HDMIのARC/eARCの特長は利便性の高さ。テレビ本体やテレビに接続した機器の音声を、オーディオ機器に伝送することができるのはもちろん、電源のオン・オフや音量操作なども連携が可能。この点が、音声信号しか伝送できない旧来の「光デジタル」との大きな違いです。
具体例を挙げてみましょう。リビングにテレビとサウンドバーを組み合わせて設置すると想像してみてください。HDMIで接続すれば、操作面ではサウンドバーを意識することなくテレビの一部となったかのように使えるので、お子さまからお年寄りまでユニバーサルに使いこなせます。リビングに設置するシステムとして、もはやHDMI(ARC/eARC)は欠かせない存在といえます。
- ARC(Audio Return Channel)とはHDMIにおけるオーディオ伝送機能。送信機側と受信機および経由機側で、音声信号を相互にやりとりできます。HDMIはこの機能に対応したことで、1本のケーブルのみでテレビとオーディオ機器を接続できるようになりました。
2chアンプのセッティングの注意点
AVアンプよりもシンプルで高音質に、サウンドバーよりも自由なカスタムを楽しみたい。そんなニーズに応えてくれるのがHDMI(ARC)対応の2chアンプです。最近は人気が急上昇し、製品数も増加傾向にあります。
- ステレオプリメインアンプ
TEAC
「AI-303」
- ステレオプリメインアンプ
MARANTZ
「MODEL 40n」
しかしここで落とし穴が! 2chアンプのHDMI端子は、上位モデルほどARCにしか対応していないケースが多々あります。この場合、プレーヤーなどのソース機器を直接接続しても、オーディオ機器から音声を出すことが出来ないので注意が必要です。端的には、ARCのみに対応する2chアンプをシステムに採用する際は、ARC対応のテレビが“必須”になります。
ご参考までに技術的な理由も解説しましょう。同じHDMIでもこうした違いが存在するのは、HDMIの伝送方式によるものです。一般的にソース機器からの映像・音声は、映像と音声が混在したTMDS方式で送出されます。よって受け手の機器は符号化された映像信号と音声信号を元の形式に戻す前の段階で、TMDSデコード機能を備えている必要があります。
一方でARCは別経路(HEAC)で、S/PDIFに近い状態で伝送されるので、受信するオーディオ機器はTMDSデコード機能を必要としません。HDMIの機能のなかでもARCにのみ対応するなら回路をシンプルにすることができ、コストと音質の両面で有利と考えられます。同じHDMIでも違いがあることを知り、製品選びのご参考にしていただければ幸いです。
またARCのみに対応する2chアンプは、原則2chのPCM音声のみに対応し、Dolby Digitalなどのマルチチャンネルフォーマット(ビットストリーム)を受けたり、デコードする機能を備えないケースが多いことにもご留意を。テレビ側の出力設定を「PCM 2ch」にしておくと、テレビ側で2chのPCM信号に変換して出力されます。
もちろん2chアンプではなくAVアンプやサウンドバーを選べばこういったデコードに関する心配は少なく済みますが、「リビングのオーディオ環境をよりピュアで高品位にしたい」という考えであれば、HDMI搭載の2chアンプは有力な選択肢といえるでしょう。
- テクニクスのHDMI搭載ステレオプリメインアンプ「SU-GX70」によるテレビシアター事例
HDMIで接続した際の音質は?
最後に、ARC/eARC経由の音声信号は、音質の面で有利なのか? 実は、映像の隙間に音声信号を乗せて高度な圧縮を行うTMDS方式に比べ、ARC経由はS/PDIFベースとシンプルな方式です。テレビ側の信号処理内容が音質に影響を与えることが知られていますが、音質面では有利になる可能性があります。
より高音質が期待でき、リビングでの設置性もクリアした、ARC対応の2chアンプにも注目してみてはいかがでしょうか?
- TECHNICSのステレオプリメインアンプ「SU-GX70」などでは、リビングでテレビとの組み合わせを想定した音質技術も搭載しています。PANASONICがレコーダー/プレーヤー開発で培った独自技術をHDMI ARCに適用することで、送受信時のノイズ発生や劣化を抑制、高音質化を実現しました。
- MARANTZの2chアンプ「MODEL 40n」の背面。HDMI端子はARCおよびCECに対応しています。HDMIケーブルを通して伝送されるオーディオ信号に、音声信号ショートシグナルパスを独自に採用することで高音質化を図っています。