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レビュー

  • MARANTZ 北欧シアタースタイル[後編]
    薄型AVアンプでスッキリ&スマートに
    薄型AVアンプのススメ
    マランツ「NR1710」

    VGP 取材・執筆 / 鴻池賢三
    2019年7月3日更新

    • VGP審査副委員長
      鴻池賢三

後編はシンプルかつ機能的な使いこなしを解説

前編では、北欧インテリアとマッチするスピーカー、DALI「OBERON」シリーズを紹介しました。後編では、この北欧スタイルに最適なスピーカーを、北欧デザインらしく「シンプルかつ機能的に」使いこなすためのプロダクト選びをガイドします。(編集部)

高画質化に合わせ音もグレードアップ

ホームシアター体験を向上するには、映像と音のバランスが重要です。近年は4K/HDRによる高画質化もあり、音もテレビに内蔵のスピーカーよりもクオリティアップを狙いたく、少なくとも外付けのオーディオを加えたいもの。その時、様々な選択肢がありますが、サウンドバーはシンプルで扱いやすい一方、音質には限界があります。また黒く横長の筐体をテレビの前に置くよりもスピーカーを使いたい方もいるでしょう。また、ミニコンポやステレオオーディオシステムも一案ですが、使い勝手が煩雑になりがちです。

  • 50インチを越えるテレビの多くは4K/HDR対応しており、その高画質にあわせて音響面もグレードアップさせます。写真のような洗練された北欧スタイルの空間にマッチするスピーカーを使いこなすためには、組み合わせるアンプにもこだわる必要があります。

テレビシアターなら「薄型AVアンプ」

そこで強くお薦めしたいのが、薄型のAVアンプを活用するスタイルです。テレビとHDMI接続するとCEC連携機能が利用でき、例えばテレビリモコンの音量操作で、AVアンプの音量を調整できるなど、テレビとオーディオが一体であるかのように操作できます。また、設定によって電源操作の連動も可能になるなど、子供からシニアまで家族の全員がスマートに使いこなせるのはとても魅力的です。

  • 近年はNetflixなどでもドルビーアトモスに対応した作品が配信されています。そうしたサラウンド音声をテレビで受信しても、AVアンプで再生できるのが「eARC」です。

また、新たに注目したいHDMIの機能「eARC」は、一方通行ではなく、テレビで受信した4K放送の音声や各種動画配信のサラウンド音声を、HDMIケーブルを通じてAVアンプ側に戻すように伝送することができます。つまり、テレビ放送のスポーツやドラマ、ネット配信の映画など、幅広いコンテンツを、AVアンプを通じて高品位に楽しむことができるのです。

薄型AVアンプの代表格、マランツ「NR1710」

このようにリビングのテレビ回りでAVアンプを設置するなら、マランツの「NR1710」がお薦めです。理由はラックにも収納しやすい高さ105㎜のスリム設計で、マランツの上位モデルと共通するラグジュアリーなフロントデザインであること。まずこれが大きいでしょう。

  • マランツ「NR1710」。カラーはシルバーゴールドとブラックの2色展開。
  • 一般的なAVアンプですと、高さが150mm以上あり、排熱などを考慮するとスリムなテレビボードには入らないことも。マランツはその点にメスを入れた薄型AVアンプのオリジンであり代表格です。
  • 実際にスリムなテレビボードに収納した様子。

薄型と侮れないガチな仕様が「ウリ」

もちろん外観だけでなく、サウンドも機能性も、専業老舗メーカーならではの充実ぶりで、スリムな筐体ながらも7chの音質に優れた最大出力100Wもの本格的なディスクリートアンプを搭載。映画館でも話題の、天井から音が降り注ぐ「ドルビーアトモス」や「DTS:X」といった最新イマーシブサウンドに対応しています。

  • 全国でも限られた映画館しか導入されていない、ワンランク上の映画体験を与えてくれる「ドルビーアトモス」。パッケージソフトへの採用が進む「DTS:X」。これらのイマーシブ(没入感のある)サウンドの再生にNR1710は対応しています。

もちろん、シンプルに2chステレオや2.1chで利用することもできます。また、アンプの使い方は環境に合わせて柔軟に変更でき、マニア好みのバイアンプ接続も可能と多才。機能面では、近年は大型アンプでも省略されがちなアナログコンポーネント映像入出力端子まで搭載する接続性の高さは驚きです。

  • 少し古めのプレーヤーやプロジェクターとも接続できる、アナログの色差コンポーネントの入出力端子を備えます。
  • 最大出力100Wのパワーアンプはディスクリート(分離された)構成の7ch。各チャンネル間の温度差に起因する特性のばらつきを抑制しようと、パワーアンプをヒートシンクに一列にマウントする「インライン配置」を採用するなど、音質を重視した設計を採用します。

家じゅうを音楽で満たせる音楽配信機能も

デジタル機能も大型モデルと一切遜色がなく、最新のハイレゾ対応ネットワーク再生機能を満載。Wi-Fi接続が可能で、Spotifyなどの音楽配信サービスに加入すれば、スマホ操作で本機から高音質再生することができます。また、「HEOS」テクノロジーを搭載し、同機能を搭載したオーディオに家庭内配信をすることも可能で、家じゅうを好きな音楽で満たすこともできます。

  • 年々加入者が増えてきている「定額制音楽配信サービス」。NR1710では、代表的なAmazon Music(Prime Music含む)や、Spotify、AWAの再生に対応します。NR1710があれば、テレビシアターをジュークボックスのように使えます。
  • 背面のHDMI端子にメディアストリーミング端末を差し込めば、DAZNなど動画配信サービスも簡単に楽しめます。しかもスポーツも映画もライブもNR1710のサラウンド拡張機能でドルビーアトモスにすれば、臨場感たっぷりで味わえます。

完成度の高さはプロ達も高く評価

総じて、薄型ながらも音質や機能面で妥協のない本格派。VGP2019 SUMMERでも、こうしたコンセプトとコストパフォーマンスの高さが評価されて「特別大賞」を受賞しています。

  • NR1710は、VGP2019 SUMMERの映像音響部門、AVアンプ スリム/コンパクト(8万円以上)において部門金賞を受賞しています。さらに、全ジャンルを横断して評価される特別賞にあたる「特別大賞」も授与されました。

実際に触れてもそのパフォーマンスの高さは驚くべきもの。話題の映画『ボヘミアン・ラプソディ』からライヴエイドのシーン。音の分離がよいので歓声はひと塊にならず、すべてが集合してハーモニーとなり、会場のスケール感を再現してくれます。フレディと観客が一体になった瞬間は鳥肌もので、それはまさにライブ体験。音楽ソフト『Tony Bennett An American Classic』では、k.d.ラングが歌い上げるシーンも丁寧かつ伸びやかに再現。本体サイズや価格を忘れてしまうくらいの豊かな表現力は圧巻です。

まずは2chでもOK。ステップアップもお薦め

テレビ回りのコンパクトなアンプとして2chで利用するのもよし、また、ホームシアターに興味が湧けばスピーカーを追加して5.1chや7.1chとステップアップするのもよいでしょう。これだけの機能と音質性能が凝縮されていれば可能なことで、本物を求めるリビングシアター派に大変お薦めです。

  • マランツは創業者がインダストリアルデザイナーという出自をもつ、デザインオリエンテッドなブランドです。比較的コスパを重視したモデルでも、高級Hi-Fi機器然とした佇まいがあり、上質さをもつのも魅力。リビングに置いても様になります。

SPEC

[NR1710]
SPEC ●定格出力:50W×7ch(8Ω) ●実用最大出力:100W(6Ω/1ch駆動) ●入力端子:HDMI×8、色差コンポーネント×2、コンポジット×3、デジタル音声(光×1/同軸×1)、アナログ音声(LR)×3、Phono×1 ●出力端子:HDMI×1、色差コンポーネント×1、コンポジット×1、2.2chプリアウト、ゾーンプリアウト×1、ヘッドホン×1●接続端子:LAN×1、USB(フロント)×1 ほか ●ワイヤレス機能:無線LAN(5GHz/2.4GHz)、Bluetooth標準規格Ver3.0+EDR(対応コーデック/SBC) ●消費電力(待機時):250W(0.5W/CECスタンバイ時) ●外形寸法:440W×105H(アンテナ含む場合175H)×378Dmm ●質量:8.4kg