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レビュー

  • テレビ周りで使いたい!
    厳選スピーカーシステム PART4
    「アクティブスピーカー」

    VGP 取材・執筆 / 岩井喬
    2020年9月23日更新

    • VGP審査員
      岩井 喬

ライフスタイルに寄り添う”アクティブスピーカー”

「テレビ周りで使いたい! 厳選スピーカーシステム」、PART4は「アクティブスピーカー編」です。アクティブスピーカーとは、筐体にアンプを内蔵したモデルのこと。ここでご紹介するアイテムは、いずれもデジタル接続に対応していることがポイント。テレビとケーブル1本で接続ができるため親和性が高い、HDMI端子もしくは光デジタル音声入力端子を持つ製品群を集めました。ちなみにBluetooth接続やネットワークプレーヤー機能を内蔵した製品もあります。シンプルな構成で高音質を楽しめる提案として、ライフスタイルに寄り添う使い勝手のよいスピーカーです。ここでは10万円を切るモデルから100万円の高級機まで、幅広い価格帯のアイテムをご紹介していきます。

  • クオリティチェックでは、音楽ソフトと映像ソフトの両方を用意。プレーヤーはパナソニック「DP-UB9000」、アンプはアキュフェーズ「E-480」をレファレンス機器として使用し、各スピーカーが持っているポテンシャルを最大限に引き出した状態でチェックしました。

AIRPULSE「A80」

  • AIRPULSE
    「A80」
    ¥OPEN(実勢価格¥84,800)

高感度リボントゥイーターと落ち着いた意匠が特徴

オーディオ業界の重鎮、フィル・ジョーンズ氏が設計した小型アクティブスピーカーが「AIRPULSE A80」です。リビングに最適な落ち着いたウォルナット仕上げが特徴的。ホーンローデッド・アルミリボントゥイーターと11.4cm アルミコーン・ウーファーを用いた2ウェイ構成で、TI社製DクラスアンプモジュールTAS5754を2基搭載しています。これをブリッジ接続して、高/低域をバイアンプで駆動しています。筐体は18mm 厚MDFを用いて、風切り音を抑える楕円形バスレフポートやトランスペアレント製内部配線材を採用しています。

  • 高域再生を担うのはリボントゥイーター。ワイドレンジで高感度、優れた過渡応答と解像度を持っています。綿密に計算されたホーン形状は最適な高周波情報を生成し、反射による影響も最小に抑えています。ハイスピードで透明感豊かな再現性は、リボントゥイーターでしか味わえない独特のサウンド・フィーリングが存在します。
  • ウーファーには硬質アルマイト処理アルミニウム合金コーン振動板を採用。軽量化されたアルミ製ボイスコイルとの組み合わせによる可動部は、強力なネオジウム磁気回路によって直線性と過渡応答に優れたドライブ・モーションを生み出しています。大型のボイスコイルとなっており、放熱に効果的で、コイルの電力損失を防いでいます。

ベースは芯があり高域は精細に表現

試聴は光デジタル接続で実施。ローエンドが豊かで迫力があります。高域の繊細さ、音ヌケのよさもポイントで、ボーカルはハリがあって鮮明です。管弦楽器には潤いがあり、とても滑らかに描かれます。低域もどっしりとした表現です。ライブBDはギターが太く、ドラムの密度感も高く、ベースラインには芯があり、骨太なリズムを刻みます。ボーカルは伸びがあって鮮やかに浮かびあがります。Fateのセリフはくっきりとしてウェットな輪郭を描き、BGMはクリアで抑揚良いです。SEは爆風の量感や破裂音のエッジを鮮明に描きます。

  • 「A80」の音質傾向表

KEF「LSX」

  • KEF
    「LSX」
    ¥164,978(税込/ペア)

KEFの象徴であるUni-Qドライバーを搭載

英国ブランドKEFによる、コンパクトかつカジュアルなアクティブスピーカーです。ファブリックを活用した意匠(ホワイトのみグロスホワイト仕上げ)は、著名なデザイナーMichael Youngの監修によるものです。19mm アルミドームトゥイーターと、アルミマグネシウムコーンウーファーによる11.4cmのUni-Q同軸ドライバーを搭載。独自のMusic Integrity Engineにより正確な位相制御を実現しました。Wi-Fiと有線LANどちらでもネットワークに接続でき、96kHz/24bit対応UPnP再生やストリーミング、Bluetooth接続はaptXコーデックまで対応。サブウーファー出力を備えるほか、使いこなしに便利なデスクトップ用スタンドなどのオプションも充実しています。

  • スピーカーユニットには、点音源再生を実現するKEFの独自ドライバー「Uni-Q」を搭載。Uni-Qドライバーは115mm マグネシアム/アルミ合金ウーファーと、19mm ベンテッド・アルミドーム・トゥイーターで構成されています。また、LSXが搭載したUni-Qは本機専用に設計されているといいます。
  • 小型エンクロージャーの中には、低域70W、高域30WのクラスDアンプが搭載されており、バイアンプ駆動を行う設計。また高域/低域にそれぞれD/Aコンバーターを1基ずつ搭載し、DSPで帯域分割や位相制御を行うなど、LS50 Wirelessの開発で培われたデジタル処理技術が投入されています。

安定した低音と滑らかな音調

光デジタル接続で試聴しました。耳当たりのよい滑らかな音調で、低域はどっしりと響き、高域も落ち着きがあって穏やかです。ボーカルも肉付きがよくナチュラルな傾向。オーケストラは厚みがあり、ウォームな響きで旋律の粒立ちはマイルドです。ライブBDはバランスのいい表現で、リズム隊は弾力があってドライな押し出し感。Fateのセリフは重心が低く落ち着きがあり、微かな発音も聴き取りやすいです。BGMはまろやかなタッチ。SEは爆風に重みがあって、閃撃のエッジは丸みを持たせながら明瞭に描きます。

  • 「LSX」の音質傾向表

KRIPTON「KS-9Multi+」

  • KRIPTON
    「KS-9Multi+」
    ¥280,000(税抜/ペア)

プレーヤーとの接続でMQA-CDのダイレクト再生が可能

同社のデスクトップ用アクティブ機の最上位モデル。強靭なアルミ製キャビネットに3cm リングダイアフラムトゥイーターとTymphany製8.4cmウーファー、フルデジタルプロセスのバイアンプを搭載します。192kHz/24bit・PCM&2.8MHz・DSD対応のUSB入力端子やHDMI端子、光デジタル入力端子も備え、MQAも再生可能です。アクセサリーブランドならではのネオフェードカーボンマトリクス3層材インシュレーター+スピーカーベースも付属します。

  • ハイレゾ用に開発した3cm リングダイアフラム・ツィーターは超高域60kHzが再生可能で繊細なハイレゾサウンドを再現。ラウンドフォルムのデザインとオールアルミ製仕上げのエンクロージャーが迫力のある高音質を再生し、チューンドバスレフ方式の採用で小型サイズとは思えない豊かな低域再生を実現します。
  • ウーファーはTymphany社製の8.4cm コーン型のものを採用。また、フォールデッドダクトによるチューンドバスレフ方式の採用で小型サイズとは思えない豊かな低域再生を実現します。

澄んだサウンドをしっかり定位する

HDMI接続で試聴しました。S/Nがよく澄み切ったサウンドで、オーケストラも臨場感があります。ライブBDのリズム隊は引き締めよくまとめ、ホーンやボーカルはくっきりとリアルに描写します。その定位もソリッドです。拍手も生々しく鮮やかで、細部も丁寧にトレース。FateのSEは爆発音の低域には弾力があって、剣戟や攻撃音の高域はキレよく鮮やかです。BGMの粒立ちも細かく、広がりがあります。セリフはクールなテイストで、ボトム表現はナチュラルです。小声のささやき表現は最もわかりやすかったです。

  • 「KS-9Multi+」の音質傾向表

DEVIALET「GOLD PHANTOM」

  • DEVIALET
    「GOLD PHANTOM」
    ¥399,000(税抜)

独創的なフォルムに先進の音響技術

チタントゥイーターを備える同軸ドライバーと、左右にウーファーを配置したワイヤレス対応3ウェイモデル。2台連携でステレオ再生も可能です。Wi-FiやBluetoothを備え、192kHz/24bitまでのUPnP再生やAirPlay、Spotifyにも対応。コンパクトな筐体ながら4500Wという大出力を生むハイブリッドアンプ技術ADHや、14Hzの超低音再生を実現するHBI、ユニットそのものの特性を把握し正確なスピーカー駆動を行うSAMなど、個性的なデザインを纏いながら、高水準な独自技術を凝縮しています。

  • ボディの正面にトゥイーターとミッドレンジを同軸配置で搭載、PHANTOMシリーズの中でもトップエンドモデルとなるこの機種のチタニウム振動板となっています。
  • 両側面に1基ずつのウーファーを搭載。シリーズ共通でアルミニウム振動板が採用されており、合計4基のドライバーユニットを備えいています。基本は1台のみで再生を行えますが、本機を2台用いてのステレオ再生も可能です。

高解像度でリッチな音質

電源ケーブル挿入口カバー内にある端子から光デジタル接続、2台連携させたステレオ環境で試聴を行いました。サイズを超えるパワフルで力強いサウンドが楽しめ、高解像度で、音場もクリアに展開。オーケストラの低域も制動よく堂々と響かせ、旋律は鮮やかに浮かびます。奥行きは浅めですが、ボーカルなど、声の厚みは自然で、分離もいいです。ライブBDのバンドサウンドも緻密で口元はウェットで輪郭はシャープ。FateのSEは迫力があって雄大。セリフにも豊かな抑揚があり、丁寧に描きます。BGMは高域の輪郭も鮮明で、低域はリッチに響きます。

  • GOLD PHANTOM」の音質傾向表

LINN「Series3」

  • LINN
    「Series3」
    ¥1,000,000(税抜/ペア)

EXAKTやDSなど、LINN独自が満載

「LINN Series 3」はデジタル信号を帯域分割し、位相歪みを除去するクロスオーバー技術EXAKTやネットワークプレーヤーDSといったリンならではの技術が、コンパクトな筐体に凝縮されています。Spotifyなどのストリーミングにも対応するDSM内蔵2ウェイ機「301」と、Exakt Linkを備えるパートナースピーカー「302」によるステレオ再生も可能です。筐体は天然の鉱物を粉砕し固めた構造となっています。SELEKTと同型のClass Dパワーアンプを搭載しており、試聴はHDMI接続(ARC対応)で実施しました。

  • トゥイーターには19mm シルクドームトゥイーターを採用しています。エンクロージャーの素材には天然由来の鉱石を採用し、パウダー状にして成形。これによって理想的な密度を実現するといいます。
  • 160mm ロングスローウーファーを搭載。またネットワークプレーヤー「DSMシリーズ」の機能を踏襲し、Spotify connectやTIDAL、NASに保存されたハイレゾ音源などのネットワーク再生に対応します。

サラウンド再生でさらに空間をリアルに表現

301単体再生でも奥行きを自然に表現でき、ステレオ再生ではスッキリとした上品なサウンドが展開されます。オーケストラは低域をぐっと沈み込ませ、管弦楽器の旋律を丁寧に描き出します。ライブBDは中域成分が厚く、ボーカルは音伸び良く爽やかに定位されています。リズム隊は引き締めがよく密度の高さが際立ちます。Fateのセリフも明瞭で潤いがあって、ボディ感も適度にあります。SEは控えめで、爆発音は高域のエッジ感が中心。BGMの爽やかさが印象的です。余韻や残響成分の表現力も高く感じられました。

  • 「Series3」の音質傾向表

HDMI端子やワイヤレス接続があると、さらに快適!

アクティブスピーカーについては、価格レンジも広く、機能性やスタイルにも大きな違いがあったので、横並びでの評価が難しいというのが正直なところ。しかし、テレビサイドで活躍させるためには、シンプルな接続でテレビのリモコンでも快適に操作できるHDMI端子を備えたモデルの存在は大きく、省スペースを望むリスナーにとってこれほど頼もしい存在はないはずです。

また、一般的なスピーカーとは違って、相性のいいプリメインアンプを探す手間が省けるのもメリットです。スマホからのBluetooth接続ができる製品も多く、現代的なライフスタイルへの親和性も高いです。「A80」や「LSX」は初心者にも最適なコストパフォーマンスの高いアイテム。「KS-9 Multi+」であれば、全方位対応で間違いないでしょう。

PART1〜PART4の試聴を通し、ステレオ環境でも十分映像作品をリッチに楽しめることを実感できました。いずれもテレビを軸にしたシステム提案ではありますが、加えて音楽ソフトへの対応能力も高まり、まさに一石二鳥です。サラウンドを前提としたホームシアターとは違う満足度が得られる2chテレビシアター。その実現に向け、本特集が参考となれば幸いです。

SPEC

AIRPULSE「A80
●型式:2ウェイ・バスレフ型 ●使用ユニット:トゥイーター ホーンロード・リボン×1、ウーファー 11.5cm アルミニウム・コーン ●定格出力:40W×2+10W×2 ●対応サンプリング周波数/量子化ビット数: ●入力:USB、Bluetooth、Optical、RCA ●フォーマット:aptX ●外形寸法:140W×255H×240Dmm ●質量:4.8kg

KEF「LSX
●型式:2ウェイ・バスレフ型 ●使用ユニット:トゥイーター 19mmUni-Qドライバーアレイ×1、ミッドレンジ ・ウーファー 115mmベンテッド・アルミドーム ●定格出力:70W+30W ●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:24bit/192kHz ●入力:Wi-Fi、Bluetooth4.0、光デジタル、3.5mmAUX、イーサネット ●フォーマット:aptX ●外形寸法:155W×249H×180Dmm ●質量:3.6kg

KRIPTON「KS-9Multi+
●型式:2ウェイ・バスレフ型 ●使用ユニット:トゥイーター 30mmリングダイアフラム型×1、ウーファー 840mmウーファー×1 ●定格出力:40W×4 ●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:LPCM 24bit、192kHz、MQA-CD 24bit、192kHz、DSD 2.8MHz ●入力:USB2.0、HDMI、ステレオ3.5mm、光デジタル ●外形寸法:130W×200H×170Dmm ●質量:3.0kg

DEVIALET「GOLD PHANTOM
●型式:3ウェイ・密閉 ●使用ユニット:トゥイーター ×1、ミッドレンジ、ウーファー ●対応サンプリング周波数/量子化ビット数: 24bit/192kHz ●入力:Wi-Fi、LAN、Bluetooth、光デジタル ●フォーマット:AAC、SBC ●外形寸法:253W×255H×343Dmm ●質量:11.4kg

LINN「Series3 301
●型式:2ウェイ・密閉型 ●使用ユニット:トゥイーター 19mmシルクドーム×1、ミッドレンジ・ウーファー 160mmロングスロー×1 ●定格出力:100W×2 ●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:24bit/192kHz ●入力:Bluetooth、Wi-Fi、Ethernet、HDMI ARC、Exakt Link ●フォーマット:FLAC、ALAC、WAV、MP3、WMA(exceot lossless)、AIFF、AAC、OGG ●外形寸法:250W×296H×206Dmm ●質量:6.9kg

LINN「Series3 Partner 302」
●型式:2ウェイ・密閉型 ●使用ユニット:トゥイーター 19mmシルクドーム×1、ミッドレンジ・ウーファー 160mmロングスロー×1 ●入力:Exakt Link×2 ●外形寸法:250W×296H×206Dmm ●質量:6.9kg

REFERENCE

[主な音楽ソフト]
『holst the planets』 chicago symphony orchestra/levine
『We Get Requests』 The Oscar Peterson Trio
『MENIKETTI』 Dave Meniketti

[主な映像ソフト]
『Fate/stay night〔Heaven’s Feel〕Ⅱ.lost butterfly』
『Chicago Live in Concert』

[試聴ポイント]
映像ソフトについて、試聴ポイントをご紹介します。ライブBDのシカゴは2008年のTVプログラムにおけるライブ映像で、ビル・チャップリンやジェイソン・シェフがまだ在籍していた時代のもの。楽曲はホーンセクションの演奏も映える「長い夜」を選びました。映画作品では張った声の演技や派手なSE、印象的なBGMの存在感が融合したアニメ作品から『Fate/stay night〔Heaven’s Feel〕Ⅱ.lost butterfly』(以下、Fate)を選択。確認したのはch8からの雨のシーンと、ch11のセイバーオルタとバーサーカーとの戦闘シーン。ch8では、“静”のポイントとして、セリフの質感に注目。雨音が包み込むSEのバランスとともに、セリフの口元の動きの鮮やかさと息遣い、声の潤い感も確認しています。ch11では“動”をポイントとして、剣戟や殴打音、爆発などのSEの迫力とそれに負けないセリフの明瞭さ、そしてBGMのストリングスの旋律の鮮やかさを確認しています。特に戦闘の最中、イリヤがバーサーカーに向け僅かに発する小声がSEとの対比でどの程度はっきりと聞こえるかも注視しました。

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