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レビュー

  • いまこそテレビでホームシアターを!
    サウンドバー特集 2022 SPRING PART2
    8万円以上(プレミアムクラス)のモデルを徹底テスト

    取材・執筆 / 折原一也
    2022年5月6日更新

    • VGP審査員
      折原一也

ブランドごとに異なるサウンドバーとしての理想

プレミアム編として取り上げた5モデルは、すべての機種が5万円未満の入門クラスとは別次元のサラウンド体験を届けてくれました。そのうえで各社によって異なる理想「あるべきサラウンド体験」の思想の差まで、見えてきました。

  • 音元出版の試聴室でサウンドバーを一斉比較テストしました。プレミアム編では、8万円以上の5機種を徹底試聴。長く愛着が持てて、より大画面のテレビと組み合わせて本格シアターが組める臨場感に溢れる、ハイグレードなアイテムが揃いました。

サウンドバーとして映画作品として収録された音の空間表現を忠実に再現することに徹している、と感じさせてくれたのはパナソニックとソニーです。ドルビーアトモスらしい立体音響も含めて、音の包囲感や移動感の作り込みが巧く、サラウンド空間の完成度の高さが秀逸でした。

いっぽうデノンは立体音響の十分な再現性を発揮しつつも、スピーカーとして出てくる音のクオリティ、ピュアオーディオに近い思想があるように感じました。バング&オルフセンは、昨今彼らがリリースしているワイヤレススピーカーやイヤホン/ヘッドホンに近い、より現代的なサウンドキャラクター。

しかし、そんな思想の違いすら超える存在がゼンハイザーです。1本のバーで部屋全体を豊富な情報量で満たすサラウンドは別次元で、音に厚みがあります。2chの音質のみで語ってもピュアオーディオ級。飛び抜けて高額な製品ではありますが、リアル5.1chシステムと比較するべき水準です。

  • 映画との相性は『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』15分あたりからのカーチェイスのシーン、ライブとの相性は『ボヘミアン・ラプソディ』チャプター22のライブ・エイドのシーン、音楽との相性は宇多田ヒカル『あなた』など複数のジャンルのステレオ音源でそれぞれ確認しています。

PART1はこちら>>>いまこそテレビでホームシアターを! サウンドバー特集 2022 SPRING PART1

DENON「DENON HOME SOUND BAR 550」〜音楽も情熱的に鳴らす

  • DENON
    「DENON HOME SOUND BAR 550」
    ¥OPEN(実勢価格¥86,680/税込)

デノンらしさが際立つ、高音質サウンドバー。2021年4月に登場したユニークなプレミアムモデルがDenon Home Sound Bar 550です。本体幅は650mmというコンパクトなワンボディで、32インチの小型テレビとも合うサイズ感ですが、音のスケールはそれ以上。本体には2ウェイ・6スピーカー内蔵で徹底的な音質重視の設計がなされています。ドルビーアトモス、DTS:Xの立体音響、ネットワークオーディオ技術「HEOS」にも対応していて、ワイヤレススピーカーをリアに追加するなど、サラウンド拡張にも対応しています。

実際のサウンドは、解像感重視の素晴らしい完成度。映画を見ても台詞の音の質感、銃声や爆音も音情報と音像の存在感で勝負。本体サイズからは想像もつかないような、部屋に広がる映画の立体感も優秀。ライブは情熱的に歌声が立ち上がり、他製品とは一線を画します。音そのものを愉しめる、オーディオ的な魅力溢れる一台です。

  • 「DENON HOME SOUND BAR 550」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X ○
    アプリ ○

PANASONIC「SC-HTB900」〜テクニクスの知見を注入

  • PANASONIC
    「SC-HTB900」
    ¥OPEN(実勢価格¥91,080/税込)

ドルビーアトモスやDTS:Xにも対応した、パナソニックのサウンドバー最上位。スピーカー構造はセンターchを追加した、実用最大出力505Wのパワフル設計という贅沢さのみならず、ハイエンドオーディオブランド、テクニクス独自の「JENO Engine」搭載、「Tuned by Technics」とテクニクスの高音質技術・チューニングを取り入れています。ワイヤレスサブウーファーも付属することで重低音再生も充実。Bluetoothによるスマホ接続と共に、Chromecast built-inによる音楽のWi-Fi再生にも対応しています。

映画本来の持つ音場再現を志向する、スピーカーの存在が消えるようなナチュラル志向のサラウンド。ライブの歓声の再現性は優秀で、音楽系との相性がよさそうです。音質水準の高いピュアなサウンドで空間表現を追求した、ワンランク上のホームシアターシステムといえるでしょう。

  • 「SC-HTB900」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X ○
    アプリ ○

SONY「HT-A7000」〜卓越したサラウンド表現

  • SONY
    「HT-A7000」
    ¥154,000(直販サイト価格/税込)

ソニーのサウンドバーのなかでも、幅1300mmと60インチ以上の大画面テレビを想定した、フラグシップ級のサウンドバー。最大の特長はリアルな立体音響の再現で、ドルビーアトモスやDTS:Xに加えて、最先端の3Dオーディオ「360 Reality Audio」にも対応しています。スピーカー本体には本体上部に天井反射による「イネーブルドスピーカー」、サイドに壁反射を利用する「新開発ビームトゥイーター」、高さ再現技術「Vertical Surround Engine」搭載と、立体音響技術が全部入り。音質面では内蔵スピーカーも7.1.2chの500Wと強力で、ワイヤレスサブウーファー、リアスピーカー追加オプションも用意。

実際にサウンドを体験すると、まさに部屋全体に音を正確に配置して移動感も方位感も完全に作り出す理想的なサラウンド。ライブも何よりステージ上という状況再現が完璧でした。レファレンス的な立体音響の再現のお手本と呼ぶべきモデルです。

  • 「HT-A7000」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X ○
    アプリ ○

BANG & OLUFSEN「Beosound Stage」〜優美な外観ながら技術志向

  • BANG & OLUFSEN
    「Beosound Stage」
    ¥219,900(直販サイト価格/税込)

美しいデザインと意匠性で知られるバング&オルフセン。シンプルな外観ながら内蔵スピーカーユニットは実に11基。それぞれ専用の50Wアンプにより駆動するというパワフルな設計。ミッドレンジとドームトゥイーターを専用のバッフルで搭載し、45度の軸外角度の配置により立体的な音場表現を狙った設計です。デジタル面ではドルビーアトモスの立体音響はもちろん、Wi-FiによるAirPlay2やChromecast built-in、Bluetoothによるワイヤレス再生にも対応。やや大柄ながら、壁掛けや平置きにも対応しています。

実際にサウンドを体験してみると、天井方向まで高さ方向も再現でき、パワフルで躍動感ある、昨今のバング&オルフセンらしいシグネチャーサウンド。ライブ音源でも音の粒立ちがよく、音質面でのポテンシャルの高さが際立ちます。デザイン性だけでなくサウンドクオリティでも評価したい一台です。

  • 「Beosound Stage」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X –
    アプリ ○

SENNHEISER「AMBEO Soundbar」〜超弩級ならではの音世界

  • SENNHEISER
    「AMBEO Soundbar」
    ¥OPEN(実勢価格¥357,500前後/税込)

ゼンハイザー独自の立体音響技術「AMBEO」を搭載、自社開発の13基のドライバーユニットを500WのD級アンプで駆動する超弩級サウンドバーです。ドルビーアトモスやDTS:Xに加えて「360 Reality Audio」にも対応しています。一体型のワンボディではありますが、この特集で取り上げた全12機種のなかでも規格外のサイズ。高さ135mmもあるため、壁掛け設置や大型ラックのうえに置く想定でしょう。同梱するキャリブレーションマイクによって、正確な音響調整をおこなう技術志向のモデルでもあります。

実際に体験してみると、映画でも音の純度、パワー、空間再現性まで全てが別次元のサウンドクオリティ。映画では重低音の質の高さ、ライブではステージを眼前に再現するような臨場感に圧倒されました。約35万円と最高価格の製品ですが、間違いなく価格に見合った体験を届けてくれるモデルです。

  • 「AMBEO Soundbar」の音質傾向
  • Wi-Fi ○
    Bluetooth ○
    HDMI(ARC)○
    アトモス ○
    DTS:X ○
    アプリ ○

SPEC

DENON「DENON HOME SOUND BAR 550
●総合出力:非公開 ●スピーカー構成:2.0ch ●接続端子:HDMI出力×1、HDMI入力×1、光デジタル音声入力x1、ステレオミニ音声×1、LAN×1ほか ●外形寸法:650W×75H×120Dmm ●質量:3.5kg

PANASONIC「SC-HTB900
●総合出力:255W(サウンドバー)、250W(サブウーファー)●スピーカー構成:3.1ch ●接続端子:HDMI出力×1、HDMI入力×2、光デジタル音声入力x1、LAN×1、IR×1 ●外形寸法:1050 W×78H×129Dmm(サウンドバー)、180W×408H×306Dmm(サブウーファー) ●質量:6.0kg(サウンドバー)、5.4kg(サブウーファー)

SONY「HT-A7000
●総合出力:500W ●スピーカー構成:7.1.2ch ●接続端子:HDMI出力×1、HDMI入力×2、光デジタル音声入力×1、ステレオミニ音声入力×1ほか ●外形寸法:1300W×80H×142Dmm ●質量: 8.7kg

BANG & OLUFSEN「Beosound Stage
●総合出力:550W ●スピーカー構成:3.0ch ●接続端子:HDMI出力×1、HDMI入力×1、ステレオミニ音声入力×1、LAN×2 ●外形寸法:1100W×170H×77Dmm ●質量: 8.0kg

SENNHEISER「AMBEO Soundbar
●総合出力:500W ●スピーカー構成:5.1.4ch ●接続端子:HDMI出力×1、HDMI入力×3、光デジタル音声入力×1、RCAアナログ音声入力×1、サブウーファー出力×1ほか ●外形寸法:1265W×135H×171Dmm ●質量:18.5kg

※実勢価格はすべて2022年3月上旬時点、大手家電量販店の価格です。