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レビュー

  • HISENSE/LG ELECTRONICS/SHARP/SONY/TCL/TVS REGZA 4Kテレビ・クオリティレビュー2022
    新世代のハイエンド・4K液晶テレビをテスト
    mini LED&量子ドット技術を採用したモデルを徹底チェック

    VGP 取材・執筆 / 大橋伸太郎
    2022年10月12日更新

    • VGP審査委員長
      大橋 伸太郎

2022年、4K液晶テレビが新たな時代に突入しました。従来よりも格段に緻密になったバックライト「mini LED」、広色域技術の「量子ドットテクノロジー」など、次世代の高画質技術が4K液晶テレビの実力を急激に高めています。本稿では、新時代を代表するハイエンド・4K液晶テレビのクオリティを横並びでチェック。

  • ハイエンドの4K液晶テレビの一斉レビューでは、全6モデルのクオリティチェックを行いました。視聴のレファレンスには、4K UHD BD『8K空撮夜景 SKY WALK』、『THE BAT MAN-ザ・バットマン-』、ネット動画にはNETFLIX『グレイマン』、そして地デジのニュース・バラエティー番組を放送番組として用いています。

変革期を牽引するハイエンドモデルを検証

液晶方式が薄型テレビの主流の方式となって久しいですが、光源がCCFLからLEDへと替わって以来の大きな変化の只中にあります。それは紛れもなく、新たなバックライト「mini LED」、広色域技術の「量子ドットテクノロジー」の誕生が変革の根幹にあるのです。それら新時代の技術を搭載したハイエンドモデルが、軒並み各メーカーから登場しています。

直下型LEDを用いた部分駆動の進化形がmini LEDであり、直下型で長く培ってきた技術の応用やノウハウがバックライトコントロールには欠かせません。mini LEDのバックライトの個数などは開示されていませんが、たとえばシャープは、同社比で従来機よりも倍の高密度、約3倍の高輝度を実現したとアピールしています。

そして従来の物理フィルターに替えて、光の波長変換を行えるナノマイクロサイズの半導体微粒子を用いる量子ドットテクノロジーによって、RGBの各色の純度を高め、広色域化を実現しました。

  • 新たなバックライトとして登場した「mini LED」は、従来のLEDバックライトよりも圧倒的に高密度にLEDライトを敷き詰めており、今まで以上に輝度がアップした映像表現を実現しています。
  • 従来はカラーフィルターを用いて光から色を取り出していましたが、「量子ドットテクノロジー」は光の波長変換を行うことで色を再現します。色のロスがなく、純度を高めることで広色域化を可能にしました。

これらの新たなソリューションが、4K液晶テレビの画質向上に寄与するでしょう。しかし、ただ搭載するだけでは、格段の画質向上は叶いません。バックライトコントロールの制御、変換する波長の設定と光源の最適化、そういったものに各社のアプローチが見られるからです。そうした制御を司るものが映像エンジンであり、いわば各社の回路技術の凝集した頭脳であるため、メーカー間、製品間の画質の違いとなって歴然と現れるのです。

その各社の“画質の違い”というものが、高次元で表れるのがハイエンドモデルといえます。従来の直下型・フラグシップモデルを凌駕する画質、メーカーの特性を顕著に継承した最高峰モデルだからこそ堪能できる映像美を、本特集でチェックしていきましょう。

  • 近年のハイエンド・4K液晶テレビは、Google TVやAndroid TVの搭載、各種動画配信サービスへの対応など、機能面も飛躍的に向上しており、テレビ単体で楽しめるコンテンツが着実に増えています。
  • 4K UHD BDや動画配信サービスでは、立体音響の代表的なフォーマットであるドルビーアトモスを採用している作品が増えており、それに伴って4K液晶テレビでもドルビーアトモス対応モデルが増加しています。

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HISENSE「U9Hシリーズ」

  • HISENSE
    「U9Hシリーズ」
    65U9H ¥OPEN(実勢価格¥250,000前後)
    75U9H ¥OPEN(実勢価格¥350,000前後)

AI高画質技術も磨いたトップ機

ハイセンスの4液晶テレビの最上位機「U9Hシリーズ」は、同社の最新の映像エンジン「NEOエンジンPro」を搭載しており、ネット動画に最適な映像処理を行う「AIネット映像高画質処理」をはじめ、放送番組向けの映像処理である「AI放送映像高画質処理」、人肌も美しい色彩で表現する「美肌リアリティーPro」など、多くの高画質機能を実現させています。

また、直下型mini LEDバックライトをエリアごとにコントロールする技術「ローカルデミングPro」も搭載。輝度に関連する高画質技術として「輝き復元Pro」を新たに投入し、夜景のきらめき感や照明の反射などの表現も向上させています。HDRフォーマットは、Dolby Vision、さらにHDR10+まで、最新規格にも豊富に対応しています。

  • U9Hシリーズは、ハイセンスの最新の映像エンジン「NEOエンジンPro」を搭載。ネット配信のコンテンツの最適化を図る「AIネット映像高画質処理」をはじめ、「AI放送映像高画質処理」や「AIシーン別超解像処理」など、高画質技術の要となっています。
  • バックライトに直下型mini LEDを採用しているU9Hシリーズは、バックライトコントロール技術「ローカルデミングPro」が採用されています。従来以上にバックライトエリアを細かく分割して制御することで、映像の奥行き感をアップさせています。
  • 左右にメインスピーカーを設置、さらに背面部にサブウーファー、テレビ上部にイネーブルドスピーカーを追加したことで、立体サウンドを実現。また、実用最大出力70Wによる、迫力も増したサウンドで音場感を高めています。

輝度のピークが高くバランスは自然

ネット動画は「Dolby Vision Dark」のモードで視聴。明るくやや派手な色彩で、黒表現はもう少しですが、HDRのピークは眩しいほどの表現力。4K UHD BDのビデオコンテンツを「スタンダード」で視聴すると、暗部のノイズが少なく、遠景の低層ビル群の高低が闇に埋没せず立体的に描写されます。ビルの外壁にノイジーが乗る粗さも少々ありますが、過度に調整せず自然体の画を出す印象。

放送番組のニュースとバラエティーを「AI自動」で視聴してみると、映像処理のベースはスタンダードモードに近く、バランスも自然。コメンテーターのアップは、従来よりもピンク色で解像感に富み、肌のニュアンスも出ています。標準で美麗な画質設定ですが、積極的に調整し素性のよさを出したくなりました。コストパフォーマンスも高く、潜在能力が豊かなモデルです。

  • U9Hシリーズの映像メニューは、番組の種類と部屋の明るさに合わせて映像を最適化する「AI自動」をはじめ、「スタンダード」「スポーツ」「映画」「ゲーム」などの映像モードを用意。また、ドルビービジョンが入力された場合は、「Dolby Vision IQ/Dark」も選択が可能になります。
  • 音声メニューの調整も豊富で、「自動」「ダイナミック」「映画」など音声モードを選ぶことができるだけでなく、音の広がりに効果を発揮する「立体音響」、「サウンドリマスター」や「重低音」の調整といった調整孤項目を揃えています。
  • 電源ケーブルは着脱が可能。HDMI入力端子は4基揃えており、そのうちeARC/ARC対応のHDMI入力端子を1基搭載しています。接続端子の搭載位置は、背面と背面側面の2箇所に分かれています。
  • 「65U9H」の画質/音質傾向、映像コンテンツの相性

LG ELECTRONICS「QNED85シリーズ」

  • LG ELECTRONICS
    「QNED85シリーズ」
    55QNED85JQA ¥OPEN(実勢価格¥280,000前後)
    65QNED85JQA ¥OPEN(実勢価格¥350,000前後)
    75QNED85JQA ¥OPEN(実勢価格¥440,000前後)
    86QNED85JQA ¥OPEN(実勢価格¥660,000前後)

ナノセルカラーテクノロジーを導入

量子ドットにナノセルカラーテクノロジーも組み合わせることで、鮮やかな色表現を飛躍的に高めた、同社のハイエンドモデル。55/65/75/86とインチサイズも豊富に揃えています。直下型mini LEDは、エリアごとの部分制御に対応。LGエレクトロニクスが誇る映像エンジンも第5世代へと突入し、「QNED85シリーズ」にはリアルタイムAIプロセッサー「α7 Gen5 AI Processor 4K」が搭載されました。

ネット動画や放送番組の多種多様の映像をAIが自動認識し、色のトーンや精細感などを最適化、またトーンカーブに対して最適処理を施す「ダイナミックトーンマップ」なども搭載し、高画質技術の精度を高めています。さらに「AIサウンドプロ」では、映像コンテンツのジャンルに合わせて音も自動調整してくれる強みも持っています。

  • 第5世代目となる独自開発のリアルタイムAIプロセッサー「α7 Gen5 AI Processor 4K」によって、放送番組からネット動画まで、あらゆるコンテンツに合わせて、映像と音声の両方に最適な高画質・高音質処理を施すことが可能。
  • QNED85シリーズは、バックライトにmini LED、量子ドットテクノロジーを搭載するだけでなく、そこにナノオーガニックフィルムを追加で組み合わせることで、より高い明部と暗部の表現、鮮やかな色表現を実現させています。
  • ナノオーガニックフィルムをパネルに組み込むことで可能となった同社独創のナノセルカラーテクノロジー。緑色の純度を高めながら赤色の色域を広げる技術で、RGB発光時に色の滲みから発生する余分な光波長を吸収し、RGBの純度を高めています。

ダークシーンは透明感と深みを両立

放送番組は、映像モードを「標準」から「isfエキスパート」に切り替えて視聴してみると、放送番組特有の平板さが改善されます。ネット動画はノイズシェープされたクリアな映像で、ダークシーンも透明感があり観やすいです。黒帯はやや明るく感じますが、色付きがなく落ち着いています。ネット動画の高画質化に対する研究の跡が細部に感じられ、パッケージの再現に迫る表現力。

4K UHD BDのビデオコンテンツは「FILMMAKER」モードにすると、標準では明るすぎてエッジがきつく感じられた分が抑えられ、落ち着いたコントラスト感となりました。色温度も調整すると、穏やかで落ち着いたバランスに。4K UHD BDの映画作品は「Dolby Vision Dark」で視聴すると、滑らかで深みのある黒のダークな映像美で、闇と光の対比効果は有機ELモデルに迫るほどです。

  • QNED85シリーズの映像モードは、入力信号のHDR/ドルビービジョンとSDRによっても異なり、HDRの信号が入力された場合は、「あざやか」「標準」「シネマブライト」「シネマダーク」などの映像モードから選べます。またUHDシネマアライアンスが認定したシネマ画質のモード「FILMMAKER MDE」も用意。
  • 「AIサービス」では、映像から音声に関連する機能まで、自動調整機能を揃えています。同社のディープラーニング技術で学習したAIによって映像コンテンツに最適な映像調整が施せる「AI映像プロ」をはじめ、「AI輝度設定」「AI映像ジャンル設定」、さらに音質で効果を発揮する「AIサウンド/AIサウンドプロ」の機能も搭載します。
  • 電源ケーブルの着脱は非対応。HDMI入力端子は4基搭載し、2基ずつ入力位置が分かれています。eARC/ARC接続に対応したHDMI端子は1基、4K/120Hzに対応した端子は2基搭載しています。
  • 「65QNED85JQA」の画質/音質傾向、映像コンテンツの相性

SHARP「DP1ライン」

  • SHARP
    「DP1ライン」
    4T-C55DP1 ¥OPEN(実勢価格¥440,000前後)
    4T-C65DP1 ¥OPEN(実勢価格¥660,000前後)

国内ブランドで先陣を切った最上位機

mini LEDと量子ドットテクノロジーを採用した4K液晶テレビを、国内ブランドで先駆けて市場に投入したのがシャープ。「DP1ライン」は、4K液晶テレビのトップエンドとして登場しました。新開発の「アクティブmini LED駆動」でピーク輝度を向上させ、超多分割ローカルディミングで明暗表現の精度を高めています。さらに独自開発のブライトネス解析回路を導入したことで、映像の輝度解析、液晶とLEDの最適駆動を両立し、局所的な部分のコントラスト表現も高めています。

DP1ラインは、新開発の4K画像処理エンジン「Medalist S2X」を搭載。「AQUOS XLED」に最適化されており、放送番組からネット動画まで「超解像アップコンバート」技術を用いて原画本来の画質を復元できます。高音質技術「ARSS+」の進境も見逃せません。

  • 画像処理エンジン「Medalist」を「AQUOS XLED」に合わせて進化させた「Medalist S2X」を搭載。同社が8Kテレビの開発で培ってきた超解像アップコンバート技術のノウハウを継承しており、解像度や映像フォーマットを分析、緻密に表現します。
  • 画面に高密度に配置されたmini LEDバックライトを、エリアごとにきめ細かく明暗を制御する、新たな高画質技術として「アクティブmini LED駆動」を採用。高いコントラストと、従来機比で約3倍のピーク輝度を実現しています。
  • テレビ画面の下部にスピーカーを設置するだけでなく、サイド、さらに上部にもスピーカーを新たに導入した、新開発の音響システム「ARSS+」によって、映像と音声の一体感がさらに増した、没入感の高いサウンドが楽しめるのも魅力。

肌色は明るく美麗で明暗も力強い

映像モードを「標準」で放送番組を視聴すると、女性キャスターは明るく美麗な肌色、瞳も煌めいています。ジャパンスタンダードらしく、放送番組における“映え”への研究が感じられました。明るさセンサーをオンにすると、映像が落ち着き、黒髪と瞳の黒さが引き立ちます。

ネット動画は「Dolby Vision Dark」で、往年のコテコテさがなく自然でクリアな映画画質。音声モードを「イマーシブサウンド」に変更すると、暗騒音の描写が自然でサスペンスを盛り上げてくれます。セリフが画面にまとわりつかず、ややハイ上がりのバランスですが聴き取りやすいです。4K UHD BDのビデオコンテンツは「標準」で視聴。高層ビルは精細感と立体感が豊かで、新回路の搭載の甲斐あってか、明暗のレンジが力強い。あまり明るくし過ぎると四隅が明るむため、少し調整してみてもよいでしょう。

  • DP1ラインの映像モードは、「AVポジション」からモードの選択が可能です。主に「標準」「スポーツ」「映画」「ゲーム」「ダイナミック」など、映像コンテンツの種類に合わせた映像モードが揃っています。ドルビービジョンを入力した際は、「Dolby Vision(ダーク/ブライト/ダイナミック)」のモードから選べます。
  • 音声調整では、「標準」「ダイナミック」の他に、立体感と臨場感が増したサウンドを出力する「イマーシブサウンド」や音楽ライブに最適化された「音楽ライブ」の音声モードを揃えています。またハイトスピーカーの調整も行えることも特長です。
  • 電源ケーブルの着脱には非対応。HDMI入力端子は全部で4基搭載、ARC対応の入力端子は1基、4K/120Hz対応の端子を1基搭載しています。USB-A入力端子は、録画HDD用とデータ用で分けて投入されています。
  • 「4T-C65DP1」の画質/音質傾向、映像コンテンツの相性

SONY「X95Kシリーズ」

  • SONY「X95Kシリーズ」
    XRJ-65X95K ¥OPEN(実勢価格¥528,000前後)
    XRJ-75X95K ¥OPEN(実勢価格¥792,000前後)
    XRJ-85X95K ¥OPEN(実勢価格¥935,000前後)

「XR」でmini LED駆動を極める

4K液晶テレビのフラグシップ「X95Kシリーズ」は、「XRバックライトマスタードライブ」を新規搭載。同社独自の認知特性プロセッサー「XR」の映像分析でmini LEDバックライトをきめ細かく部分駆動させ、フレアを抑制して光の輝き表現と黒の再現性を高めています。

「XR」は、自然で色鮮やかな映像表現に寄与する「XRトリルミナスプロ」をはじめ、コントラストを高める「XRコントラストブースター」など、多数の映像機能を可能にします。高コントラストと広視野角を両立させる「エックスワイドアングル」も搭載し、反射を抑える「エックスアンチリフレクション」によって、液晶テレビの弱点も解消。独自の音響技術「アコースティックマルチオーディオ」に、Google TVも搭載、「ブラビアカム」による機能など、トピックが満載のモデルです。

  • ソニーが誇る認知特性プロセッサー「XR」は、人が目で感じることができる自然な美しさと、サラウンドと定位感が向上させた音によって体感できる臨場感を持ち合わせた、究極の没入感を体感させてくれます。
  • 従来から定評のある同社のバックライトコントロール技術。X95Kシリーズでは従来の液晶テレビよりも高密度に配置されたmini LEDに、さらに進化したLED制御技術「XR バックライト マスタードライブ」を組み合わせることで、コントラストを高めています。
  • 背面上部にトゥイーター、下部に前向きスリットを施したミッドレンジスピーカー、そしてサブウーファーを組み合わせた全6機のスピーカーを搭載。映像と音の一体感を高め、画面から音が出ているような独自音響技術「アコースティック マルチ オーディオ」も兼備しています。

ピーク輝度は自然で色彩はリッチ

画質モードを「標準」で放送番組を視聴すると、コントラストは抑え目です。女性キャスターは過度な補正を避け穏やかな肌色で自然なバランス。ネット動画は「Dolby Vision Dark」で、ピークの明るさにバックライトの伸びしろを実感できます。色彩も豊かでリッチで切れがありました。動きも自然で、動画ボヤケや残像感がなく快適に描き切ります。

4K UHD BDのビデオコンテンツは、ハイコントラストが全開。歩行者等の微小な被写体まで克明で、画面四隅から中央まで精細感を失いません。エックスワイドアングルの効験あらたかで水平視野角が広く感じられます。映画作品はダークな美学が画面に横溢、闇と光の対比が鮮烈で映像S/Nが高く、黒の純度に優れています。音声はバランスと聴きとりやすさに優れ、セリフの音離れがよく、俳優の声質の違いが鮮明なのも特長です。

  • X95Kシリーズの映像モードは、「画質モード」から選択でき、「スタンダード」「ダイナミック」「シネマ」「ゲーム」などのモードを用意しています。また、別途「オート画質モード」も装備しており、オンにすることでHDMI接続の機器からくるコンテンツの内容に沿って画質モードを自動で切り替えが可能です。
  • 液晶モデルに採用されている映像機能のひとつ「バックライト分割制御」では、表示する映像コンテンツの明るさをリアルタイムで解析し、区分されているバックライトの明るさを調整することでコントラストを高めます。
  • 電源ケーブルの着脱に対応しています。HDMI入力端子は全部で4基搭載しており、そのうちeARC/ARC対応が1基、4K/120Hz入力に対応している端子が2基装備されています。
  • 「XRJ-75X95K」の画質/音質傾向、映像コンテンツの相性

TCL「C835シリーズ」

  • TCL
    「C835シリーズ」
    55C835 ¥OPEN(実勢価格¥200,000前後)
    65C835 ¥OPEN(実勢価格¥250,000前後)

初の映像エンジンで画質処理が飛躍

4K液晶テレビにmini LEDと量子ドット技術をいち早く投入したのが、グローバルブランドのTCL。今期のモデルには新たな映像エンジンを採用しており、ハイエンドモデルの「C835シリーズ」には、同社最高クラスの映像エンジン「AlgoエンジンMax」を搭載しています。精細感の復元をはじめ、バックライトのローカルディミング、明部から暗部まで色階調を高めた3次元カラーマネージメント回路、BFI機能による残像感の低減など、多数の高画質技術の搭載を実現しました。

またHDRに対応する広色域、HDRフォーマットはドルビービジョンもフォロー。倍速駆動は120Hz、イマーシブサウンドのドルビーアトモス対応も果たしています。Google TVを搭載している点もトピックで、視聴可能な動画配信サービスも豊富です。

  • 今期から導入された映像エンジン「Algoエンジン」。液晶テレビのC835シリーズには、同社の最上位グレードの「AlgoエンジンMax」が投入されています。映像の精細感復元、コントラストの向上、カラーマネジメントの効果などを高めます。
  • AlgoエンジンMaxを採用によって可能となった、映像処理技術のひとつである3次元のカラーマネジメント回路は、色を認識し変換する際の色域ロスを低減させることで、明るいシーンから暗いシーンにおいても、確かな色再現性を確保できます。
  • 没入感の高い立体音響を楽しむことができる、イマーシブサウンドフォーマットのドルビーアトモスに対応。最新映画などで着実に採用が増えている3Dサウンドを、テレビ単体で手軽に再生できる機能性の高さも特長。

暗部ノイズが少なく滑らかに表現

まずは映像モードを「標準」にして放送番組を視聴。非常に明るいため、輝度とコントラストを調整してみると、だいぶ落ち着きを見せました。人肌はおだやかなピンク系の色です。少々、顔のニュアンスが甘いため、濃淡や色合いをベストバランスに追い込むのが吉。

4K UHD BDのビデオコンテンツは暗部のノイズも少なく、渋谷の空撮も路上の細かい被写体が克明に描かれています。ノイズや偽信号などの妨害要素がなく透明感があり、大画面に心地よく浸ることができます。映画作品は「Dolby Vision Dark」で視聴しました。HDRのピーク輝度は控え目に表現されており、闇と光の対比はやや大人しい印象。黒の表現は、こちらもノイズが抑えられていて滑らかで好印象です。TCLは小~中型サイズの印象がよかったのですが、今期は65インチの大画面でも長足の進歩を遂げています。

  • C835シリーズの映像モードは、「画質設定」からもモードの切り替えが可能で、「ダイナミック」「標準」「スポーツ」「映画」などからモードを選択できます。また、「輝度設定」内にある「動的トーンマッピング」では、入力されたHDR信号に応じて、自動的にトーンマッピングを行う機能のオン/オフも可能です。
  • 「音声設定」では、「映画」や「音楽」などの音質モードを選べるほか、C835シリーズは立体音響フォーマットのドルビーアトモスに対応しているため、「詳細設定」において「ドルビーアトモス」のオン/オフを選べるようになっています。
  • 電源ケーブルの着脱が可能。HDMI入力端子を3基搭載しており、そのうちの1基がeARC/ARC対応になっています。端子は全て背面側面に設置されています。
  • 「55C835」の画質/音質傾向、映像コンテンツの相性

TVS REGZA「Z875Lシリーズ」

  • TVS REGZA
    「Z875Lシリーズ」
    65Z875L ¥OPEN(実勢価格¥418,000前後)
    75Z875L ¥OPEN(実勢価格¥550,000前後)

屈指の映像エンジンが光る最上位機

TVS REGZAは通常のLEDバックライトのモデルにも量子ドット技術を採用したモデルをラインアップしていますが、「Z875Lシリーズ」はmini LEDバックライトと量子ドット技術、さらに新開発の4K倍速パネルを組み合わせた、正真正銘のフラグシップモデルです。

レグザの真骨頂である映像処理エンジンは「レグザエンジンZRα」を搭載し、映像の絵柄に適したLED点灯を実現しました。豊かな階調、高コントラスト表現を可能にした「Mini LEDエリアコントロールZRα」をはじめ、映像内の顔領域を検出して肌色のトーンを補正する「美肌AIフェイストーンZRα」、立体感を高める超解像技術「AIナチュラルフォーカステクノロジー」など、多数の高画質技術に寄与しています。高音質技術の「重低音立体音響システムZP」、タイムシフトマシンにも対応しました。

  • ディープニューラルネットワークを駆使して、高ビットの信号処理と最新の超解像技術を可能とする「レグザエンジンZRα」を搭載。「AIナチュラルフォーカステクノロジー」や「美肌AIフェイストーンZRα」などの高画質技術を実現しています。
  • 「Mini LED広色域量子ドット液晶パネル」は、同社の従来モデル比で約2倍の高輝度を実現。高精度なバックライトコントロール技術の「Mini LEDエリアコントロールZRα」、新開発の4K倍速パネルを併せて導入されています。
  • 2ウェイ・バスレフボックス・メインスピーカーをはじめ、トップトゥイーター、重低音バズーカーなど、全7基のスピーカーを搭載したサウンドシステム「重低音立体音響システムZP」を採用。また、ドルビーアトモスにも対応しています。

精細感に優れコントラストも忠実

放送番組は「放送プロ」で視聴しました。精細感があり、女性キャスターの黒髪も落ち着いて穏やか。自然で疲れないバランスで、強調感がなくすっきりと整った解像感が生まれています。ネット動画は「Dolby Vision Dark」で視聴しました。HDRの効果が最大限発揮され、映像ノイズが少なく、ダークシーンでも奥行き感があります。

映像モード「標準」でのビデオコンテンツは、クロマ濃度、コントラストとも落ち着いたバランス。コントラスト、精細感、フォーカス感とも総合的にレベルが高く、細密描写に長けています。新国立競技場の客席の市松模様が遠目にも分離して観えるほどです。ベールを一枚剥いだように、夜空が澄んでいます。映画作品は「映画プロ」で視聴すると、強靭なコントラストで黒帯も締まり、ユニフォーミティが高い印象。レグザらしい、映画のルックの忠実さを持っています。

  • Z875Lシリーズの「映像メニュー」では、「オートAI」をはじめ、「映画プロ」「放送プロ」「ゲーム」などの映像モードを備えています。また、ドルビービジョンが入力された場合は「Dolby Vision IQ/Dark」、Netflixの視聴時は「リビング」「シアター」なども選択できるようになっています。
  • 映像コンテンツに含まれる人肌を検知して、色や質感を自動で自然にしてくれる機能の「ナチュラル美肌トーン」のオン/オフも、「映像設定」から変更することができます。
  • 電源ケーブルは着脱に対応しています。HDMI入力端子は全部で4基備えており、そのうちeARC/ARC対応が1基、4K/120Hz対応の端子を2基搭載しています。USBには、タイムシフトマシン録画用USB端子も装備。
  • 「65Z875L」の画質/音質傾向、映像コンテンツの相性

全体でネット動画の画質が着実に向上

VODが映画視聴で急速に存在感を増している現状を映して、全製品にVODの画質の研究の跡がうかがえました。もちろん送り出しの質がよくなっていますが、かつての動きのがたつきや黒浮きがなくなり、パッケージソフトに迫る安定した映画視聴が楽しめました。

一方、日常もっとも視聴機会の多い地上デジタル放送に画質差を感じました。大多数のユーザーがテレビ任せで調整しない現実を考慮するならば、「映え」より送り出しに忠実で強調感がなく、長時間疲れない自然な映像を標準とすべきです。総じて国内メーカーの製品から、地上デジタルはじめ、日本の放送の研究の跡がうかがわれます。

各製品の画質・音質の傾向とキャラクターについてはそれぞれの評価で紹介しましたが、総合的な完成度と忠実度でTVS REGZA、液晶方式らしいハイコントラストと映画への密着度でソニー、美麗さと音との調和でシャープ、潜在能力が高くエンターテインメント性を感じさせるLGエレクトロニクス、コストパフォーマンスが高く使いこなす楽しさがあるハイセンス、進境著しいTCL、といった性格が付けられる印象でした。

  • 視聴時の様子。オーディオビジュアルの総合アワード「VGP」で審査委委員長を務める大橋伸太郎氏が、各ブランドのハイエンド4K液晶テレビのチェックを行いました。

SPEC

HISENSE「65U9H
●デジタルチューナー数:地上デジタル×3、BS/110度CSデジタル×3、BS4K/110度CS4K×2 ●パネル方式:液晶 ●パネルサイズ:65型(1428W×804H/対角1639mm)●画素数:3840×2160 ●対応HDR規格:HDR10、HLG、HDR10+、Dolby Vision ●スピーカー:フルレンジ×2、トゥイーター×2、イネーブルドスピーカー×2、ウーファー×1 ●音声出力:10W+10W+10W+10W+20W+5W+5W ●主な入出力端子:HDMI入力×4、光デジタル音声出力×1、アナログ音声入力×1、USB入力×2 他 ●ネットワーク接続:LAN×1、Wi-Fi(2.4GHz、5GHz)●消費電力:350W(待機時約0.5W)●外形寸法:1452W×914H×300Dmm(スタンド含む)●質量:約31.5kg(スタンド含む)

LG ELECTRONICS「65QNED85JQA
●デジタルチューナー数:地上デジタル×2、BS/110度CSデジタル×2、BS4K/110度CS4K×1 ●パネル方式:液晶 ●パネルサイズ:65型(1428 W×804H/対角1639mm)●画素数:3840×2160 ●対応HDR規格:HDR10、HLG、Dolby Vision ●スピーカー:ミッドレンジ+トゥイーター×2、ウーファー×2 ●音声出力:10W+10W+10W+10W ●主な入出力端子:HDMI入力×4、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、 USB入力×2 他 ●ネットワーク接続:LAN×1、Wi-Fi(2.4 GHz、5GHz)●消費電力:250W(待機時約0.5W)●外形寸法:1452W×904H×295Dmm(スタンド含む)●質量:約30.6kg(スタンド含む)

SHARP「4T-C65DP1
●デジタルチューナー数:地上デジタル×3、BS/110度CSデジタル×3、BS4K/110度CS4K×2 ●パネル方式:液晶 ●パネルサイズ:65型(1428W× 804H/対角1639mm)●画素数:3840×2160 ●対応HDR規格:HDR10、HLG、Dolby Vision ●スピーカー:ミッドレンジ×4、ハイトミッドレンジ×2、トゥイーター×2、ハイトトゥイーター×2、ウーファー×1 ●音声出力:7.5W+7.5W+10W+10W+15W+15W+15W ●主な入出力端子:HDMI入力×4、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB入力×3 他 ●ネットワーク接続:LAN×1、Wi-Fi(2.4GHz、5GHz)●消費電力:357W(待機時約1.0W)●外形寸法:1442W×896H×290Dmm(スタンド含む)●質量:約39.0kg(スタンド含む)

SONY「XRJ-65X95K
●デジタルチューナー数:地上デジタル×3、BS/110度CSデジタル×3、BS4K/110度CS4K×3 ●パネル方式:液晶 ●パネルサイズ:65型(1428W ×804H/対角1639mm)●画素数:3840×2160 ●対応HDR規格:HDR10、HLG、Dolby Vision ●スピーカー:ミッドレンジ×2、トゥイーター×2、サブウーファー×2 ● 音声出力:10W+10W+10W+10W+10W+10W ●主な入出力端子:HDMI入力×4、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB入力×2 他 ●ネットワーク接続:LAN×1、Wi-Fi(2.4GHz、5GHz)●消費電力:364W(待機時約0.5W)●外形寸法:1443W×846H×343D(スタンド外側時)●質量:約33kg(スタンド含む)

TCL「65C835
●デジタルチューナー数:地上デジタル×2、BS/110度CSデジタル×2、BS4K/110度CS4K×2 ●パネル方式:液晶 ●パネルサイズ:65型(1428W× 804H/対角1639mm)●画素数:3840×2160 ●対応HDR規格:HDR10、HLG、Dolby Vision ●スピーカー:フルレンジ×4、サブウーファー×1 ●音声出力:10W+10W+10W+10W+20W ●主な入出力端子:HDMI入力×3、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB入力×2 他 ●ネットワーク接続:LAN×1、Wi-Fi(2.4GHz、5GHz)●消費電力:330W(待機時約0.3W)●外形寸法:1446W×903H×319Dmm(スタンド含む)●質量:約26.0kg(スタンド含む)

TVS REGZA「65Z875L
●デジタルチューナー数:地上デジタル×9、BS/110度CSデジタル×3、BS4K/110度CS4K×2 ●パネル方式:液晶 ●パネルサイズ:65型(1428W× 804H/対角1639mm) ●画素数:3840×2160 ●対応HDR規格:HDR10、HLG、HDR10+、Dolby Vision ●スピーカー:フルレンジ×2、トゥイーター×2、トップトゥイーター×2、ウーファー×1 ●音声出力:10W+10W+10W+10W+5W+5W+20W ●主な入出力端子:HDMI入力×4、光デジタル音声出力×1、アナログ音声出力×1、USB入力×4 他 ●ネットワーク接続:LAN×1、Wi-Fi(2.4GHz、5GHz)●消費電力:320W(待機時約0.5W)●外形寸法:1452W×868H×329Dmm(スタンド含む)●質量:約29.5kg(スタンド含む)